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2024/08/01

コラム

過去の放流の末裔を求めて― 都会を離れて、ひとり山奥へ足を踏み入れてみた。

こ過去の放流の末裔を求めて― 都会を離れて、ひとり山奥へ足を踏み入れてみた。

いつもTROUT MEETINGへお立ち寄り下さりありがとうございます。
カーディフ宣伝担当のいしどじょうです。

2023年の8月13日。夏季休暇中の所要を済ませ、1日だけ自由な時間ができた。
世間では毎日のように数十年に一度の猛暑が話題となるほどの酷暑が続き、釣りをするには標高の高いエリアに的を絞ってイワナに遊んでもらうしか選択肢がなかった。
そんなとある夏の日、2024年にリリースされるトラウトワンNS S48UL-G/4の最終プロト品を手に南アルプスの麓にもぐり込んだ。

早速出鼻を挫かれる。
ノープランの一人旅ゆえそれも含めて愉しむ。

朝6時。
やや寝坊気味に前日入りしていた山梨県内の旅館を出発し、友人にヤマトイワナがいるらしいと聞いていた早川水系のポイントへ向かった。
私が渓流釣りで重視しているのは、『釣果よりもどんな魚をどんな道具立てで釣るか』。
「たくさん釣ろうとか、大きい魚を釣ろう」ではなく、どの水系のどんな魚を、どうこだわりの道具立てで釣るか、を愉しむのが私の渓流釣りスタイルだ。
だから朝早くポイントに着いて誰よりも先に釣ってやる!といった野望は無い(笑)。

さて今日も平地では最高気温が35℃を超える猛暑日。まだまだ盛夏さながらの空模様を脇目に一路、早川水系のポイントへ車を走らせる。専らセブンイレブン派の私は、いつものように道中でセブンイレブンに立ち寄り、夏と言えばのアイスコーヒーRサイズと昼食用におにぎり3つを購入し、まるで遠足に向かう小学生のように鼻歌でも歌いながら車に乗り込んだ。

そしてポイントまであと少しとなったその時、進路上に佇む通行止めの看板が視界に飛び込んできた。工事現場の方に通行止めなのでと迂回を促されるが、1日しか時間が無いためとうてい迂回もできるわけもなく途方に暮れながら踵を返す。
何も下調べをしていない一人旅にこういったトラブルはつきもの…。これも含めて楽しむしかないと自分に言い聞かせ、Googleマップを開いて改めて早川水系を眺めてみる。
やや渇水気味、足止めをくらった場所は標高が600mほどと高くない、そして外気温が既に30℃に迫ろうとしていることを考慮して、ある程度水量がありそうな某支流を選択。

とある河川の源流域。数十年前に放流されたアマゴの末裔が未だに細々と生き永らえているとか…

とある河川の源流域。数十年前に放流されたアマゴの末裔が未だに細々と生き永らえているとか…

ヤマトイワナから上流域のアマゴ狙いへ。
ひとり気まぐれな釣行が続く。

ヤマトイワナを狙うには標高が600mほどと低く水温も高そうなので、急遽アマゴ狙いで某支流へ。
この支流近くのエリアは過去に放流されてからもう数十年近くは放流がされていないとのこと。いまこの支流に息づくのは過去の放流魚の末裔たち。そんな話を聞くとこの支流のアマゴに興味が湧いてきた。

岩盤混じりで急勾配な渓相。水は透明度が高く魚たちの警戒心も高い

岩盤混じりで急勾配な渓相。水は透明度が高く魚たちの警戒心も高い

気付けば時刻は11時を回りレンタカーの外気温計は32℃を示していた。車から降りると上流域と思えない、もわっとした外気に包まれ一気に汗ばむ。今シーズンから新調したシマノスタンダードゲーターとウェーディングシューズ(羊毛フェルト)に足を通し、トラウトワンNS S48UL-G/4をバックパックにくくり付けていざ出発。標高は602mだった。
トラウトワンNS S48UL-G/4は仕舞寸法が39.8cmなのでバックパックの側面に括り付けても全く邪魔にならない。上流、源流域を遡行する際は安全のために両手を空けておきたい。あとはシマノトラウトロッド初のグラスコンポジット調子が気になるところ。

今回使用したトラウトワンNS S48UL-G/4の最終プロト。雨樋から手作りしたロッドケースに収納すれば遡行中の万が一の転倒も怖くない。

今回使用したトラウトワンNS S48UL-G/4の最終プロト。雨樋から手作りしたロッドケースに収納すれば遡行中の万が一の転倒も怖くない。

いざ入水。
人気のない未知なる渓を突き進む。

いくつかの大きな堰堤を越えて、ひたすら川の横を走る砂利道を歩いて上流へ向かう。川は足元から10m以上も下を流れ、過去の大水によってV字に削られた谷はかなり遡行しにくそうだ。とりあえず時間も無いためアプローチしやすくなるまで砂利道をひたすら歩いた。

駐車場から歩き進めて約1時間。気付けば標高は667mになっていた。ようやく更なる細い支流が現れ安全にアプローチできそうな場所までやって来た。焦る気持ちを抑えながら河原に降り立つ。
恒例の水温チェックをしてみてビックリ、なんと18℃。10℃前半くらいかと思っていたがさすがに猛暑と渇水で水温も高くなっているのだろう。

ポイントに着いてからの水温チェックがルーティーン。18℃はアマゴやヤマメにとっての適温だが標高からするとやや高い。

ポイントに着いてからの水温チェックがルーティーン。18℃はアマゴやヤマメにとっての適温だが標高からするとやや高い。

あえて本流から外れた支流を選びアマゴが付きそうな小場所を探していく。数年前の大水の爪痕がまだまだ色濃く残り、川は大きくV字にえぐられ土砂が脇に異様に積もっている。
こうなると川底に棲む底生動物の環境が悪く豊かな川とは言い難い。この早川水系は過去に何度も豪雨によって環境が大きく変えられてきたそう。
そんな厳しい環境で数十年に渡って命を繋いできたアマゴとはいったいどんな姿なのだろうか…。

異様に砂利が堆積する渓相が続く。こんな厳しい環境に数十年前の放流魚の末裔が生きる。

異様に砂利が堆積する渓相が続く。こんな厳しい環境に数十年前の放流魚の末裔が生きる。

かつての登山道だろうか。至る所に荒廃した人工物が散見された。

かつての登山道だろうか。至る所に荒廃した人工物が散見された。

細々と命を繋ぐ魚たち。
その小さな生命力に思いを馳せる。

開いた場所の小さな流れ込みに今シーズン大活躍のリフレイン50HS(STパールアマゴ)をキャストした。アマゴを釣るならアマゴカラーでと道中に妄想していたのでどうにかしてこのルアーでアマゴに出逢いたい。こんなちょっとしたこだわりが自分の中では大切。
すると小さな魚影がスッと現れたと思ったら流れ込みの白泡の中に消えていった。水の透明度が高く魚たちの警戒心は非常に高い。しかも小場所でルアーをトレースできるのはわずか60cmほどときた。もう一度、流れ込み付近にリフレイン50HSをキャストしボトムでシェイクして移動距離を短くしながら誘ってみると先ほどの魚がルアーを咥えた。

初場所の最初の一尾というものは何とも感慨深いものだ。15cm弱の小さなアマゴだったが、この釣行で狙っていた過去の放流魚の末裔と思われる魚だ。この魚が本当にそうなのかどうかはもちろん専門家でもないため判断はできない。でも、そうであろうと思い込むことで自分の知的好奇心は満たされる。手早く写真撮影を済ませ元いた流れにそっとリリースした。

最初の一尾は15cm弱の幼魚。このサイズがいるということは確実にこの環境で命が繋がれている。

最初の一尾は15cm弱の幼魚。このサイズがいるということは確実にこの環境で命が繋がれている。

いかにもな大場所が現れそうにもないので、ちょっとした流れ込みを丁寧に攻めていくことにした。そうしていく内に気付くと巨岩混じりの渓相に変わり頭上を瑞々しい木々が覆っていた。釣りに夢中になっていると時間を忘れ、とんでもない距離を山奥に進んできたことにふと気づき、一抹の不安に襲われる瞬間がある…。釣りとは恐ろしい趣味である。

気付くと頭上を木々が覆い、先ほどまでの砂利交じりの渓相から雰囲気が変わっていく。

気付くと頭上を木々が覆い、先ほどまでの砂利交じりの渓相から雰囲気が変わっていく。

こうした渓相になってくるとポイントが絞りやすく、いかにもな流れ込みの白泡へリフレイン50HS(STパールアマゴ)を投げ入れる。先ほど同様に着底させてからボトム付近をふわふわと浮遊させるイメージで手前まで引いてくる。ここでも一尾チェイスしてくる魚影が見えた。しかもなかなかの良型と思われる。
心を落ち着かせるために天を仰ぎ、清涼な山の空気を目いっぱい吸い込み呼吸を整える。立ち位置をややズラしてから先ほど同様にアプローチすると、トラウトワンNS S48UL-G/4が綺麗な弧を描いた。グラスのクッション性の高さのおかげで暴れる魚をしっかりといなしながらネットイン。
想定外の27cmほどの良型アマゴ。初場所で、しかもこんなお盆の最中にここまでの魚に出逢えるなど正直でき過ぎだ。山奥でひとり思わず笑みがこぼれる。愛機のSONY α6400を手に、ファインダー越しに魚の細部まで観察する。魚の呼吸が落ち着くまで待っている間、幸福感に満たされながら真夏の渓を感じる。これぞ至高。
そして魚は身体を元気よくくねらせながら流れに戻って行った。

想定外の27cmほどの良型アマゴ。パーマーク、朱点、黒点のバランスが何とも言えない美しい個体だった。

想定外の27cmほどの良型アマゴ。パーマーク、朱点、黒点のバランスが何とも言えない美しい個体だった。

渓魚は写真を撮ったら全てキャッチ&リリース。末永くこの釣りを愉しみたい。

渓魚は写真を撮ったら全てキャッチ&リリース。末永くこの釣りを愉しみたい。

突然訪れる魚止めの小滝。
そこで見た魚たちの営みとは。

この支流から入渓したとき、Geographicaのマップでこれ以上、堰堤が存在しないことを確認していた。そしてこの支流の目的地を魚止めの場所、と決めていた。
入渓してから直線距離にして300mほど進んだところで突然、アマゴが遡上できそうにない小さな流れ込みにぶつかった。落差が1mほどあり岩肌をつたっているわけでも無いのでおそらくここが魚止めだろうと判断。
だいたい魚止めには行き場を失った魚が溜まっているもの。最後のチャンスと思いやや距離を取って手前から慎重に探っていった。もちろんルアーはリフレイン50HS(STパールアマゴ)。

するとこれまた良型のアマゴらしき魚影がリフレインの後ろを猛チェイス。しかも一尾だけではないようだ。すかさず同じコースにキャストするもルアーまでの距離を詰め切れない。少し時間を置こうと魚たちの動きを観察していると、尺近い良型のアマゴが数匹、ペアリングし、その周りを小さなアマゴが取り囲んでいた。そう、繁殖行動を行おうとしているのだ。
そうなると話は変わってくる。そんな個体を狙うわけにもいかないのでじっと観察してみた。最後の堰堤から直線距離にして数百m。そんな短い区間で数十年にも渡ってアマゴたちが細々と命を繋いでいる、まさにその光景を目の当たりにしてひとり感動を覚えた。

魚止めのすぐ下にあったちょっとした開き。ここでも尺はありそうなアマゴがペアリングしていた。

魚止めのすぐ下にあったちょっとした開き。ここでも尺はありそうなアマゴがペアリングしていた。

その魚止めポイントを越えて時間の許す限り、上を目指してみたがそこからはパッタリとアマゴの魚影が無くなってしまった。時折見える魚影はおそらくタカハヤだろう。
過去の放流個体は魚止めよりは上には残っていない、もしくはこれより上流にはそもそも放流していないのか、はたまた過去の洪水で下流に流されてしまったのか、色々な妄想を膨らませながらまだ明るいうちに帰路に着いた。

魚止めより上流は巨岩地帯。大場所が連続するがアマゴの魚影は見えなかった。

魚止めより上流は巨岩地帯。大場所が連続するがアマゴの魚影は見えなかった。

タックル&装備

ロッド:トラウトワンNS S48UL-G/4(プロトモデル)
リール:18ステラ C2000SHG
メインライン:ピットブル8 0.6号
ショックリーダー:フロロカーボン 6lb
ルアー:リフレイン50HS(STパールアマゴ)

ウェーダー : DS4+ストレッチウェーダー ソックス
シューズ:ウェーディングシューズ 羊毛フェルト
ベスト : ストリームメッシュベスト(グレー)
その他 : シマノスタンダードゲーター

カメラ:α6400(SONY)
レンズ:19mm F2.8 DN (SIGMA)

※記事内で紹介されている製品は、旧モデルの可能性がございます。

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この記事で使用している製品

トラウトワンNS S48UL-G/4(プロトモデル)
ロッド

トラウトワンNS S48UL-G/4(プロトモデル)

ピットブル8 0.6号 +フロロカーボンリーダー 6lb

メインライン

ピットブル8 0.6号 +フロロカーボンリーダー 6lb

リフレイン50HS(STパールアマゴ)

ルアー

リフレイン50HS(STパールアマゴ)

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