2023/08/03
コラム
このサイズでしか喰わないシーバスがいる。「アーマジョイント280F フラッシュブースト」のテスト釣行に密着。
飛ばせるビッグベイトとして一躍名を馳せた「エクスセンス アーマジョイント190F/S フラッシュブースト」。そのさらなるサイズアップ版として280mmサイズが登場することになった。そこで今回は、あまり表に出ることのない開発段階の様子を紹介したい。実釣テストとなる開発の裏側では、いったいどのような検証が行われているのだろうか。
プロトモデルの実釣に迫る。ジャイアントベイトのみの強気の釣りがスタート。
アングラーは、インストラクターの嶋田仁正さん。舞台となるのは秋の東京湾で、このタイミングはシーバスの最盛期とも言えるシーズンだ。メインとなるベイトフィッシュがコノシロで大型となるため、ランカーサイズのシーバスが狙いやすい時期といえる。まさにジャイアントベイトの実力を試すには打ってつけのシチュエーションで「エクスセンス アーマジョイント280F フラッシュブースト」のテスト釣行を行った。「男の釣りって感じがしますね。楽しみです」と嶋田さんも、はやる気持ちを抑えながら、夜明け前に準備を終えて、いよいよ出船の時。その先に待っていたのは、朝日に照らされた海面を慌ただしく飛び回る鳥たちの群れだった。
鳥は多いが活性は低い様子。少ないボイルの中でいかに狙うか。
海面の様子からフィッシュイーターがベイトフィッシュを表層に追い込んでいる様子がうかがえる。それに合わせて鳥たちも海面へ突っ込み、小魚を食べている様子だった。しかし、肝心なボイルがほとんどなく、どこか散発的な状況。開始直後の期待高まる展開とは裏腹に、嶋田さんも「いまひとつ喰い気がないですね」とこの状況を感じ取っていた。毎日のように船を出していた船長も「今日はいつもより激しさがないです。本当はもっといろんな所でボイルするはずなんですよね」と苦笑いを浮かべる。明らかに釣れそうなシチュエーションではあるが、すぐにルアーへの反応が得られるような、期待通りの展開とはならなかった。
期待とは裏腹な展開。それでも投げ続けるからわかること。
次第に日も高まり、同時にコノシロが密集するレンジも表層から深場へと変わっていく。そうなるとルアーとベイトフィッシュのレンジが合わないので違うルアーで狙うのがセオリーと言えるが、なんといっても今回は実釣テスト。このまま投げ続けて、魚からの反応が得られないかひたすら検証していく。こうしてポイントを移動しながら反応のありそうなポイントをひたすらラン&ガンして、気づけば時間帯も夕方が迫ってきていた。このようにテスト釣行では、ルアーのコンセプトに合わせてある程度の時期や場所など釣れやすい条件に合わせて行うことが多いのだが、自然が相手では思い通りに行かないことがほとんどだ。だからこそ試す価値があると言うべきか、実際にこうして釣り場で使わなければわからないことばかり。どうすればもっと使いやすくなるのか、どうすればもっと魚の反応が得られるのか、細部に至るまで仮説を立て、その検証を繰り返しながら、ルアーの性能は磨かれていく。
これまでの経験を基に試行錯誤。丸一日投げ続けてわかったこと。
これだけ投げ続けていれば、ルアーのいろいろな違和感に気づくものだ。そのひとつがウェイトのバランスで「細かいですが1gの変化でルアーは大きく変わるんですよ」と嶋田さんが教えてくれた。サンプル段階のルアーの泳ぐ姿勢や、アクション、そして潜行レンジがどこかイメージと違うようで、その違いをこれまで積み重ねてきた経験と照らし合わせている様子だった。その中で小さな違和感に気づけるかどうかは、やはり長年の経験と積み重ねてきた実績が成せることだろう。こうして1日目の釣行は終了となったが、肝心な釣果は終了間際にヒットした60cmクラスが1匹のみ。翌日の釣行に備えることになった。
板オモリで使い心地を微調整。1g単位の細かな作業で違いを検証する。
こうして迎えた翌日。朝一に嶋田さんが取り出したのは板オモリだ。それを頭部に貼り付けてウェイトのバランスを微調整し、翌日との反応の違いを確かめていく。釣り場の条件的にはほとんど変わらない状況だが、この違いがどう影響してくるのか、それはすぐに結果として現れた。一見するとフラットなエリアだが、船の下にはキラキラとコノシロが泳いでいる姿が見られる。そこでキャストを繰り返していたときだった。ドスンッと竿先が激しく絞り込まれた。「よし!喰った」その直後に目線の先で激しいエラ洗い。「いいサイズだ!」と、緊張のやり取りの末にネットインしたのは、70cmオーバーのナイスサイズのシーバスだった。「やっぱり板オモリの微調整がよかったですね」と、この1匹を釣り上げた余韻もほどほどに、すぐさま次のヒットを狙う。こうしてヒットを連発してルアーの性能を十分に確かめられた所で、このテスト釣行は終了となった。
小さな違いは大きな差を生む。そしてそこに気づくことの難しさ。
今回の釣行で、嶋田さんの鋭い観察力から、シーバスにより良い反応が得られるウェイトバランスを導き出すことができた。また使い心地の面でも「最初の状態だと潜りにくく、巻いていると浮き上がりやすいように感じていました」と嶋田さん。「板オモリで調整した情報はしっかりと開発担当者にフィードバックしておきます」とプロならではの視点によって、またひとつルアーの性能に磨きがかかって行く様子を垣間見ることができた。あまり語られることのない実釣テストの裏側だが、ひとつの製品が完成するまでには、想像以上の時間をかけて細かい部分にこだわりながら検証を繰り返していることを感じていただけると嬉しい。そしてこのルアーが手元に届く頃には、今以上に性能が洗練された状態となっているはずだ。完成品は長い時間をかけてたどり着いた、エクスセンスとしてのジャイアントベイトというひとつの答え。そんなルアーがお店に並ぶ日を楽しみにお待ちいただきたい。
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