2024/01/23
コラム
繰り返した観察から導かれる確かな再現性を知る。秋の都市型河川で力武智史がビッグベイトでランカーシーバスを攻略する。
都市型河川ならではの特徴に注目。ランカーシーバスのために狙いを橋脚に絞る。
舞台となるのは、福岡県の御笠川。博多湾に面する河川でシーバスの実績も高く、年間を通して多くのアングラーが訪れる釣り場だ。この河川の中でも力武さんが狙うのは都心部を流れる中流域のエリア。その理由は、橋が多く短い移動距離で多くの橋脚を狙えるからであるという。「基本的には橋脚に着いているシーバスに狙いを定めます。その次は潮や流れの様子を細かく確かめながら、ここぞというときにキャストするのが大切です」とのことで、必要以上にプレッシャーをかけないことが大切だと教えてくれた。
さらに力武さんが言うには「橋脚ごとにもそれぞれ違いがあって、シーバスが着きやすい橋脚とそうでない橋脚があります」とのことだ。その違いを見分ける際に注目しているのが、橋脚の幅やそれが作る影の大きさ、水中に橋脚の土台となる基礎があるか、また対象となる橋脚の周辺に川がカーブしているなどの地形変化があるか、といったポイントに注目するのこと。「同じように見えますが、少し移動するだけでガラッと状況が変わるので観察していて面白いです」と力武さんが教えてくれた。
繰り返し川を観察したからわかること。魚たちの動きから何をどう予測するか。
こうしてポイントを橋脚に絞ると、今度はそのポイントにシーバスが潜んでいるかも重要となる。そのため力武さんは、橋の上からシーバスの姿を確かめることも多い。これは多くのアングラーが同じように確かめたことがあるはずだ。この時、力武さんが注目しているのは、シーバスの有無はもちろんであるが、その他の魚たちの動向だ。例えば、秋の御笠川では、ベイトとしてコノシロが入ってきていることが多いが、その魚たちが上流に向かって泳いでいるのか下流に向かって泳いでいるのか、もしくは一定の場所に定位しているのか、といった動きに注目して観察しているという。この他にもボラの群れを見て、一緒にシーバスも混ざって泳いでいることも多いので、存在の有無を確認したり、さらにはナマズやコイなどを見つけた際は淡水魚たちの動きにも注目したりするそうだ。
このような観察は、力武さんがシーバス釣りにのめり込んだときから頻繁に続けてきた習慣のようなことであるとのこと。さらに「この実釣のタイミングに合わせて、ほぼ毎日この川を観察していました」とのことで、どんな状況でシーバスがどのような動きを見せるかも予想がつきやすくなったと教えてくれた。
忘れてはいけない塩水くさびというキーワード。海水と淡水の境目を見分けるコツ。
こうしてポイントを橋脚に絞り、実際に魚たちの動きを見てさらにポイントを絞り込んでいくわけだが、さらに重要な要素がある。それが「塩水くさび」だ。この「塩水くさび」とは、河川で比重の異なる海水と淡水が混ざり合わずに境目ができる現象のこと。河川のシーバスは、この境目を意識して動いていることが多く、釣り場を見極める際にとても重要となる。
また「塩水くさび」は潮の満ち引きや河川の流れで刻々と場所が変化するため、見極めるのが難しく感じる方も多いだろう。その見極め方の1つとして、流れてくる落ち葉などに注目するとよい。例えば表層の落ち葉が素早く流れるのに対して、中層に沈んでいる落ち葉がほとんど動いてないということがある。この場合だとその動いていない落ち葉のある部分が「塩水くさび」の境目に当たることが多いと力武さんが教えてくれた。そしてこの「塩水くさび」のある水深が表層に近づいてくるほど今回使用する「エクスセンス アーマジョイント280F フラッシュブースト」にとってはチャンス。「塩水くさび」のあるレンジにルアーをアジャストさせることでヒットの確率を高められると力武さんが解説してくれた。
自分の考えをより確実なものにするために。ビッグベイトならではの特徴を活かす。
ここまでポイントが絞り込めてくると、残るは最後の詰めとなるヒットまでの過程だ。さらに力武さんはビッグベイトでランカーサイズのシーバスに狙いを絞るとのことだが、どのように使いこなすのだろうか。まず力武さんが橋脚を狙う際に注目するのが、上流側と下流側の切れ端となる部分。ちょうど流れが当たってヨレができている所を狙ってビッグベイトを流し込んでいく。この時、河川では潮の満ち引きの影響で上下の流れが入れ替わるので、橋脚の上下どちらから狙うかも、その時々で判断することが多い。
さらにビッグベイトにこだわるのは、自身がルアーの位置を把握しやすくするためというのが大きな理由だ。ルアーの位置をはっきりと把握して、狙った場所に思い描いたコースで流し込むことに重点を置いているという。「できれば1投で勝負を決めたいです」と力武さんが言うように、ここまで絞り込めていて、狙いが当たっていれば勝負も早いとのこと。その他に狙い所となるのは橋脚から少し離れた、流芯があって深くなっている部分もポイントで、最初に橋脚部分を狙って、次に流芯部分を狙うことも多いと教えてくれた。
淡水の影響を考慮して板オモリでチューニング。貼り方でこだわった部分とは。
こうして力武さんが選んだのは、中流域の中でも上流に近くなるエリア。当日は雨が降っており、河川は淡水の影響が色濃く出ているような状況だった。そんな状況で川を観察しながらシーバスを探していた力武さんは、上流域に向かってポイントをチェックしていた所、橋の上から大型のシーバスを発見。釣れそうな橋脚に狙いを絞って「エクスセンス アーマジョイント 280F フラッシュブースト」でアプローチしていく。
またこの時の力武さんは、淡水の濃度が高くルアーが浮きやすくなっている影響を考慮して、ヘッド部分に6gの板オモリを貼った。板オモリをヘッド部分に張ったのは、下側に波動を出すためで、このルアーのアクションの特徴から、後方に波動を出す影響が強いことから、少しロールが加わるようなアクションになるようこだわったと教えてくれた。
理論を積み重ねることで答えは出る。それでもあっさりと覆されるから夢中になる。
やがて雨も強まったところで、この日の釣行は終了となったが、力武さんが言うにはメータークラスを橋の上から見られることも少なくないという。そのような個体はやはり賢く一筋縄ではいかないことも多いが、狙いを絞ることで釣果につなげる可能性は高められるとのことだ。また今回ご紹介したシーバスの釣り方は、確率を高められる一例であるが、自然が相手となる以上、簡単に裏切られることもあるとのこと。「このバランスがシーバスフィッシングの面白いところです」と考えを巡らせて追い込めば答えは出るが、ちょっとしたことをきっかけに予想外の展開になる。そんな所に魅力を感じますと力武さんは語る。
今回、紹介したのは力武さんが通い慣れた福岡県の御笠川で磨き上げた釣り方だ。県外にも似たような釣り場がたくさんあるが、まだ力武さん自身も本格的に試したことがないとのことなので、この釣り方がどこまで通用するのか見てみたいものである。そんな次の機会を楽しみに待ちたい。
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