2021/01/08
コラム
吉田康雄vs清遊湖の大型旧べら 「普天元 獅子吼」、超攻撃型底釣りで躍動。
「清遊湖の北桟橋の底釣りで、今になって大型の旧べらが荒喰いしているんですよ」
吉田康雄からの一報に、筆者は乗った。
清遊湖といえば、言わずと知れた関東を代表する人気管理釣り場。そしてその人気の中心は、やはり深場を擁する中央桟橋だろう。釣り方もやはり宙釣りがメインで、浅ダナやチョーチンで相変わらず順調に釣れ盛っている。また今季も大型新べらがすでに放流済みだが、ここにきて面白い現象が起きているという。
北桟橋の浅場カケアガリで、夏の間はどこかで身を潜めていた大型旧べらが底釣りで釣れ盛っているというのだ。
「ザリガニを弾き飛ばすような勢いですよ(笑)」
吉田康雄が見せる、「獅子吼」16.5尺による超攻撃型底釣り。
文字通り攻撃的な両ダンゴのエサ使いと超速リズムで、秋の荒喰いをとことん愉しむ!
清遊湖北桟橋、大型旧べら!
”それは新べらではないの!?“
今回の取材中、筆者は吉田康雄に何度そう確認したことだろう。
そのたびに吉田は、「今季の新べらはまだ喰っていないし、3枚4kgクラスでもっとデカいので、これは絶対に旧べらです。放流にも立ち会いましたので、間違いないですよ。」と返す…。
やってくるのは、「清遊湖にこんなへらいたの!?」というほどの、あまりお目にかかったことのないような大型旧べら。いったい夏の間はどこに身を潜めていたのだろうか。ここにきて、しかもここ北桟橋手前のカケアガリで、「荒喰い」を見せ始めたのだ。
11月13日(金)、千葉県柏市にある人気管理釣り場「清遊湖」。好天のこの日は平日にもかかわらず朝からたくさんの釣り人が詰めかけ、続々と入場していく。人気の中心はやはり、深場を擁する中央桟橋。ほとんどのが中央桟橋に入釣していく中、ロッドケースに「普天元 獅子吼」を詰め込んだ吉田は、迷わず入場口から右へと進んでいく。
北桟橋だ。
端から12席目。ゴミ箱の先の釣り座にブラックブラウンのバッグを置くと、確信の表情で準備を進めていく。
●竿
シマノ【普天元 獅子吼】 16.5尺
●ミチイト
1.0号
●ハリス
上下0.5号 50-58cm
●ハリ
上下6号
●ウキ
吉田作 底釣り用最終プロトタイプ (パイプT15cm カヤB14.5cm カーボン足6cm ※エサ落ち目盛は宙の状態で全11目盛中、4目盛沈め)
●タナ
水深約3mの底釣り(上バリトントンから1目盛ズラシ)
●エサ(両ダンゴ)
ダンゴの底釣り夏 100cc
水 100cc
バラケマッハ 200cc
釣り方はバランスの底釣りで、エサは両ダンゴ。しかし、随所に吉田ならではのこだわりが感じられるセッティングとなっていた。
まずは竿の長さ。
このポイントは清遊湖の中では浅場の部類に入ると同時に、足元から沖に向かって深くなっていく、いわゆる「カケアガリ」のポイント。
18尺を出せばほぼ平らになるというが、吉田はあえて釣りづらさを承知で少し短い16.5尺とし、カケアガリの終盤を狙う。なぜなら、そこに大型の旧べらが居着いているからだという。
ちなみに、短竿(手前)もいかにも釣れそうなカケアガリなのだというが、釣り座によっては根掛かりが頻発するとのことで(吉田によれば、水没した枝等ではなく、ゴロタ石系のカカリだとか)、「安全圏」としてやや長めの16.5尺がいいという。またそれより長いと背後に迫る樹木にバラした時などに仕掛けが掛かる危険性も高まってしまうので、総合的に判断して16.5尺がベストということだった。
さすがに清遊湖を知り尽くす吉田。そのチョイスに、抜かりはない。
フロート&重めのタナ取りゴムで手際よく底立てを済ませ、早々に両バリにエサを付けて打ち始めていた吉田。沖打ちのカケアガリということで、タナ取りにあまり時間をかけることなく、実際にエサを打ってナジミ幅を確認しながら微調整していくという、野釣り的なタナ合わせを実践する。
実際、両バリにダンゴを付けて落とし込み、4目盛がナジむようなところに持っていく。吉田によれば、「底を切ってしまうのはマズいけど、基本的には多めのナジミ幅を出しながら釣っていくのがセオリー。」という。イメージ的には、上バリトントンから1目盛ほどズラした程度にとどめる。なぜなら、そのアタリの取り方が特徴的だからだという。
底釣りとは思えないほど「早い」のだ。
4目盛がナジむ。当然、打ち始めはまだ寄りが薄いので、アタリはない。すると吉田は、底釣り特有の「返し」を待つことなく、即座に打ち返してしまう。
バランスの底釣りといえば「返してツン」が定番だが、今回に限っては、吉田は「返してツン」は全て捨てて、割り切って「ナジんでドン」だけを狙っていくのである。
その理由は、2つあった。
まず1つ目は、大型旧べらをターゲットとし、早い展開に持ち込みたいため。遅い底釣りでは、どうしても型が落ちてしまうという。体力ある大型が、我先にと競い喰いするイメージだ。
そしてもうひとつは、清遊湖の底釣りファンを悩ませ続ける「ザリガニ対策」。大型のへら鮒を底付近により多くキープしておくことで、弾き飛ばされるようにザリガニがエサに近寄れないことを狙ったのだ。実際、「返してツン」はほとんどがザリガニで、カウントのほとんどは「ナジんでドン」で大型旧べら、という信じられない底釣りだったのである。
100回練りのヤワエサを打ち切る!
「清遊湖の特徴として、朝は(宙釣りでも)ハシャギ気味なので、とりあえずはガマンです。ただし、アタリを待つようなことはしません」
そう宣言して打ち始めた吉田。その言葉どおり、「ナジんでは切り」を繰り返していく。
これは宙釣りではない。底釣りである。
傍で見守る筆者も、あまりにも潔い吉田の早切りに、「今はサワったから、もう少し待った方が…」などと思わず口をついて出てしまう。
「笑。確かに今なんかナジみ際でいい感じでサワリが出たので、ナジんだ後も少し待ちたくなっちゃいますよね。でも待ちません(笑)。あそこで待っちゃうと、アタっても十中八九ザリガニですよ。良くて小型の旧べらになってしまうし、寄りがどんどん薄くなって悪循環に陥ってしまうんです。まずは釣れなくてもいいので、勇気を持って『ナジミ切り』を繰り返していきます。絶対に釣れるようになりますから。しかも、デカいですよ。」
迷いなくエサを打ち込んでいく吉田。
そして気付く。
そのエサも、きわめて特徴的であることを――――――。
「さすが、バレてますね(笑)。これ、僕が子供の頃から愛用しているブレンドで、こういう速い底釣りには最高なんですよ。」
…と、吉田は使っているエサを一粒丸めて筆者に渡してくれた。
“ペトッ”
筆者の指先に触れたそれはまるで、カッツケ両ダンゴのペトコンエサのような軟らかさだった。
「『夏』に多めの水を入れた後、間を置かずに『マッハ』を絡めます。作ってみてもらえばわかると思うんですが、その段階ではまったくエサにならない軟らかさになっています。そこからハリ付けできるようになるまで、ボウルのヘリにこすりつけるようにしながら100回くらい練り込みます。すると、水分多めで軟らかいまま、どうにか底までは持つエサになります。これでいいんです。」
100回強く練り込んでいるとはいえ、そもそもの水分量が多いので、エサ自体は「開くエサ」に違いない。しかしこのエサこそが、この北桟橋カケアガリでの底釣りで効くのだ。
「練り込んだエサではありますが、イメージとしては『粘るエサ』ではなく、『開くエサを練り込みでギリギリ持たせている』という感覚です。このエサをナジミ切りで打っていくことで、底付近に大型の旧べらを寄せ、競い喰いさせているんです。またそうすることが、ザリガニ対策にもなっているのです。」
釣りながら吉田は、100回練った基エサをさらに練り込んでいくこともあった。それくらい軟らかいエサである。
そしてそのエサを底釣りとは思えない高速回転で打っていくことで、大型旧べらを厚く寄せ、同時にそれがザリガニ対策にも直結していたのだ。
「さすがにボソで開くエサでは、釣りが壊れてしまいます。このペトっとした軟らかい『開き』が、ギリギリのところで釣りを成立させるキモなんです。」
朝陽を浴びて、吉田の底釣りが進み始める。
ナジミ際のサワリが連続してくれば、もうしめたもの。「ナジんでドン」が連発し、大型旧べらが「獅子吼」を曲げ始めた。
底釣りで大型70枚!
いやはや、それにしても凄まじい底釣りである。
「獅子吼」によってしなやかに沖に飛ばされた軟らかいエサは、上層のへらに揉まれながらもしっかりと4目盛がナジみ、その直後に「ドン」と落とす。
そんなチョーチン両ダンゴのようなアタリで次々とキロクラスの大型旧べらばかりが浮上するのだからたまらない。
「さっき『グルバラ』でまとまり感を出してみたんですが、やっぱりダメですね。寄りが不足しますし、『返してツン』でザリガニになってしまいます(苦笑)。ここは思い切って『夏+マッハ』のヤワエサを打ち切るのが正解でしょう。」
エサの最終チェックを終えると、吉田はさらにギアを上げて超高速回転でエサを打ち続ける。9時に15枚を突破すると、もう止まらない。朝のハシャギも落ち着きを見せ始めると、底付近での強烈なアタリが連発。型も一段上がって、もう手がつけられないといったふうの底釣りが驀進していく。
「意外と真っ昼間がデカかったりするんですよ。だからここも集中です。」
11時を過ぎると日中のマッタリタイムに突入してしまったのか、釣れるペース自体はスローダウン。しかし吉田は「こういう時間帯にポンとデカいのが来ることが多い」と、野の巨べら釣りを彷彿させる理屈で、エサ打ちをする手を休める気配はない。そしてその言葉どおり、キロアップの大型旧べらをコンスタントに弾き続けていくのだ。
そのあまりに素晴らしい魚体に、思わず筆者は「それ、新べらじゃないの!?」と口をついて出てしまう…。
すると、「いやいや、今季の新べらはもっとヤバいですから。」と返す吉田。放流に立ち会った吉田によれば、今季入っている新べらは「こんなもんじゃない」とか。「あまりにも大き過ぎるので、放流直後からバカバカ喰うような雰囲気じゃないんですよね(苦笑)。ただいつどこで喰い出すか分からないので、それもまた愉しみですよ。あと清遊湖では今後、冬季に口を使うサイズの新べらも入る予定になっていますので、ますます愉しみですね。」
確かによく見ればそれは新べらではないのだが、キロアップの大型を超速攻の底釣りで連発、である。それがいかに凄まじい釣りか、容易に想像していただけるはずだ。
「ザリガニが連続した時は、へらが薄くなっているサイン。さらに回転を上げて寄せを意識します」
明確なタクティクスと実践。終了の15時半までに大型70枚。その完璧な釣りに、筆者はもはや脱帽するしかなかった。
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