朝、「ちょっと早く着き過ぎちゃったかな」と、筆者は釣り場近くのコンビニで時間を潰していた。伊藤さとしとの待ち合わせは、ポイントに7時。まだ時刻は6時前だった。
そんな時、携帯が鳴った。伊藤からだ。
「思ったよりたくさん人が来てるから、先に入って準備してますね。」
食べかけたサンドウィッチを慌てて口の中に押し込み、コンビニから車を出す。
砂塚橋を渡りながら川を見ると、思わず驚く。
人、人、人!
早朝の川岸は、すでに見渡す限り釣り人で埋め尽くされていたのだ。
6時過ぎ、この日のポイントに到着する。
「相変わらず凄い人でしょ!?まして今日は天気もいいし、午後から風が強くなる予報だから、午前中に集中したのかもしれないですね。」
取材日は4月11日(月)。関東地方では連日記録的な夏日が続いており、この日も日中は25℃まで気温が上がって暑くなる予報。ただ午後は南風が強まりそうで、それを見越して「早朝組」が増えた感じだった。
「ざっと見渡す範囲でも100人以上はいるでしょう。おそらく川全体だと300人くらいかな。で、早朝組、日中組、夕方組…と入れ替わるから、多い日には100人以上は来ちゃう。凄い釣り場ですよね。」
釣り場からすぐ近くに住む伊藤にとって、びん沼川は「最も身近で、最もメジャーな人気釣り場」。ただ日本全国を飛び回る伊藤にとって、近年は竿を出すのは年間12回くらいとのことで、この日も久しぶりの釣行。とても楽しみにしていたという。
「今日はね、たくさん釣りたいというよりは、色々なサイズのへらを、1枚1枚じっくりとその引きを味わいながら、とにかく『楽しみたい』んです。」
ポイントの水深は約2m。伊藤がチョイスした釣り方は両ダンゴの宙釣りで、ウキ下は底近くからカッツケまでを探りながらの釣りになるという。
「意外と底近くが小べらで、水面(カッツケ)の方が型が良かったりもするんだけど、今日はどうかな?」
伊藤はそう言いながら、ゆっくりと丁寧に道具のセットを終えた。