2021/05/07
コラム
風切炸裂西田一知が魅せる春の王道メーター両ダンゴ【前編】
INDEX
長い長い冬もようやくトンネルの出口が見えて――――。
釣り方も「抜きセット」や「段底」から、ようやく暖季の釣りが視界に入ってくる3月。名手・西田一知は、NEWロッド「風切」を手に、東京都東久留米市にある弁天フィッシングセンターへとやってきた。
「弁天ならもう両ダンゴの浅ダナで、十分釣りになりそうだね」
釣りになる…どころか、そこで展開されたのは、衝撃的な王道メーター両ダンゴでの爆釣劇。
ソフトな「風切」が軽やかにダンゴエサを運び、シャープなアワセが炸裂し続ける!
「風切(かぜきり)」
今季初の両ダンゴ。弁天なら楽しい釣りになるんじゃないかな。」
まだ朝は冬の寒さが残る3月12日、西田一知は東京都東久留米市にある「弁天フィッシングセンター」へとやってきた。東京在住の西田にとって、弁天FCは勝手知ったるホーム的な釣り場。へらの活性はすこぶる高く、多少の寒さや混雑をものともしない魚影とウキの動きを誇る人気管理釣り場だ。
長方形の池は水深約2mほどで、釣り方は浅ダナ(メーター規定)と底釣りに大別される。当日も朝からたくさんの釣り人で賑わっていたが、のんびりと底釣りで楽しむ常連さん達も目立つ。
そんな中、西田は池の事務所側奥寄りにブラウンバッグを置き、さっそく釣りの準備にとりかかった。
その強烈なインパクトから超長竿のイメージが強い西田。しかし、実は最も得意とする釣りこそが浅ダナの両ダンゴで、その小エサを駆使したハイスピードな釣りは、あの西田の常人離れしたハイスピードな30尺底釣りとも共通する部分が、多々あるのだった。
●竿
シマノ「風切」12尺
●ミチイト
0.8号
●ハリス
上下0.4号 35―45cm
●ハリ
上下5号
●ウキ
パイプT10cm 1本取り羽根 B5.75cm カーボン足7.5cm ※エサ落ち目盛は全9目盛中、4目盛沈め
●エサ
コウテン 400cc
ガッテン 200cc
浅ダナ一本 200cc
水 200cc
タナはウキからオモリまでを規定ギリギリの1mにセット(水深は約2m)。ダンゴの早期ということで竿はやや長めで、良型を交じらせる意図も感じられた。
ウキはストロークのある沖宙タイプをチョイス。やはりダンゴの早期ということで、シビアになりがちなセッティング(主にハリス長)やエサの幅を少しでも広くしたいとの意図もあった。
「弁天は活性が高いといっても、やっぱりまだ3月。夏のような豪快な釣り…というより、『小エサで丁寧に』を基本に、確実なアタリを取っていくような釣りになるかな。セッティングやエサのタッチも夏よりはシビアになるけど、そこはストロークのあるウキで帳尻を合わせて、なるべくシンプルに回転良く釣っていきたいよね。」
ネバボソタッチに仕上がったエサを小さくつまみとり、チモトをしっかりと押さえて両バリに付けて打ち始める。
最初の10投ほどは静かな打ち返しが続いたが、その後、早くもへらの濃厚な気配。さすがは弁天、相変わらず暴力的(?)なまでの魚影の濃さと、活性の高さだ。
「うん、やっぱりまだ3月だね。なかなか喰いアタリが出ないでしょ?」
ウキの周りにはすでにたくさんの魚影。そして、「タッ!」とアタってスレが続く。やはりまだ3月。そう簡単ではないか。
「タナに薄いよね。ここの夏なら強引に上のへらを喰わせていくこともできるんだけど、まだそこまでの活性はない、と。やっぱりここはより丁寧にいくべきだね。」
西田はそう言うと、早くも対応を施し始める。
30分ほど経過すると、ポツリポツリと釣れ始める。しかし、まだまだイレパクには程遠い。
ここで西田は、ウキをSサイズへとサイズアップ。これに手応えをつかむと、数投後、今度はハリスを35―45cmから30―38cmへと詰めた。
「暖季だったらさらにハリスを長くして上のへらも強引に釣っちゃうこともできるんだろうけど、今日はまだ無理。ただへらがハシャいで終わりだよね。
今日の場合、上のへらは無視して、より丁寧にタナに小エサを入れていきたい感じ。そこでウキを大きく、ハリスはさらに短くしてみた。強気の対応のように見えるかもしれないけど、そうじゃなくて、あくまでも『丁寧に』という意図だよね。」
この西田のセッティング変更は、確実に功を奏した。
変更後こそ静かな投が続いたが、さらに根気よく打ち込んでいくと、しだいにタナで強くアタって確実にヒットしてくることが増えていったのだ。型もいい。
「うん、やっぱりこっち方向だね」
大きめのウキ、短めのハリスで小エサを丁寧にタナに入れていく――――――。
攻め方の方向性を見出した西田は、ここからさらに畳み掛けていく。9時、ハリスをさらに短い25―33cmまで詰めると、ほぼ「イレパク」に近い形が完成してしまうのだ。
ストレスなくウキがスクッと立つ。
付け根で適度に揉まれたあと、ズブリとナジミに転じる。
エサ落ち目盛通過付近で「チャッ」と刻むか、深くナジんだところで「ドン」。
ウキのストロークを生かし、二段構えのアタリの取り方で確実に弁天の良型を仕留めていくのだ。
小気味いいアタリに、「風切」がシャッと水を切って立ち上がる。その曲がりは淀みなく綺麗で、フワリと優しく尺級が浮かび上がる。
「第一印象としては凄くソフトだよね、この竿。『浅ダナスペシャル』と聞くと鋭い感じの竿をイメージしがちだけど、これは全然違う。振った感じも魚を掛けた感じも、ものすごくソフト。でもそれでいて、アワせた時の水切り感なんて、凄くシャープ。なかなかないよ、こういう竿って」
NEWロッド「風切」を、「ソフトかつシャープ」とシンプルに表現した西田。素晴らしくソフトな竿で、実に丁寧な釣りが続く。10時、早くも30枚を突破。そしてここから西田の釣りは、さらに加速していくのだった。
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プロフィール
西田 一知 (にしだ かずのり)
[インストラクター]
関東へら鮒釣り研究会で97年、09年、10年、11年に年間優勝して史上5人目の横綱位に就く。09年シマノへら釣り競技会 野釣りで一本勝負!! 第3位。30尺の使い手で長尺の釣技に長ける。「関東へら鮒釣り研究会」「コンテンポラリー・リーダーズ」所属、「KWC」会長。
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