2025/10/17
コラム
“獅子の咆哮” 岡田 清×普天元 獅子吼
今、岡田 清氏が夢中になっている釣り場、釣り方があります。それが、椎の木湖でのパワフルなチョウチンウドンセットです。
その釣りで狙うのは、大型揃いの椎の木湖にあってさらに選りすぐりの、時に2キロにも及ぶ規格外の超大型ランカーべら。
そしてその右手には、普天元 獅子吼――――――。
まさに、“獅子の咆哮”。
強烈きわまりない「強い釣り」が、夏の椎の木湖で雄々しく吼えます。
「獅子吼」で釣りたい
重厚な朝焼けをバックに椎の木湖に入場した岡田 清氏は釣り座に着くと、ロッドケースから紫の竿を引き抜きました。
「普天元 獅子吼 8」。
言わずと知れたシマノへら竿の最高峰、“旗艦(フラッグシップ)”です。
そして岡田氏は「本音」も交えて、その選択理由を語り始めました。
「もしも今日が例会や大会で『たくさん釣らなければならない』なら、この釣り方(ホタチョー)なら、『朱紋峰 鉾』をチョイスしていると思います。何よりパワーがありますから。なんせ今の椎の木湖は1枚1kgは当たり前で、時には2kgクラスの超大型まで来ちゃいますからね。取り込み時のもたつきを考えたら、『たくさん釣る』なら『鉾』一択ですかね。
じゃあ、なんで今日は『獅子吼』なのか。
…それはね、『使いたいから』ですよ」
今日は『獅子吼』を使いたい…。
理屈ではなく、岡田氏にはふとそんな日があるのだといいます。
「なんていうんでしょうね。上手く言えないんですけど、今日はもう気分的には『獅子吼』ありきなわけ。で、『獅子吼』の短竿を使いたいんですけど、釣り場はどこがいいかな…って考えた時、出来るだけ大きなへらを掛けたかったんです。それでここ(椎の木湖)に来ました。だから今日はどちらかというと、僕にとっては『癒し』の釣行って感じですかね。『釣果ありき』ではなくて、『獅子吼』ありきなんです」
最近では「特作 色華」が話題ですが、それでは、その「色華」と「獅子吼」は何が違うのでしょうか?
「『色華』は軟らかい竿で、かつ『すっきり感』を全面に押し出した素晴らしい竿です。もちろん椎の木湖で使っても最高に楽しいし、軟らか過ぎて使えないなんてこともありません。でもですね、なぜか今日は『獅子吼』の気分だったんです(笑)。理屈じゃないんですよね。
具体的に言えば、『重厚感』…ということになるのでしょうか。
『色華』の方が軟らかいし、ということは、『獅子吼』の方が竿としては硬くなります。でも独特の重厚感みたいなものがあって、『色華』のすっきり感とはまた違った風格があるんです。だからなんていうんですかね…、とにかく今日は『獅子吼』を使いたかったんです。あるんですよ、そういう日が」
トーナメントだけでなく、「へら鮒釣り」という遊びに心を奪われて、今に至るまで夢中でウキの動きを追い続けている岡田氏。そんな氏にとっては「勝つ」こと、「たくさん釣ること」だけが全てではなく、もしかしたらその逆なのかもしれません。
「ほら、なんかすごくズッシリとくるでしょう? これが『獅子吼』の良さなんですよ」
岡田氏はに竿を手に、なんとも言えないあの笑顔でニコリと微笑んだのでした。
渾身の「ホタチョー」
◯竿 シマノ【普天元 獅子吼】8
◯タナ チョウチン
◯道糸 1.5号
◯ハリス 上下1.0号 8―20cm
◯ハリ 上10号 下8号
◯バラケ
バラケマッハ 600cc
もじり 200cc
BBフラッシュ 200cc
水 200cc
※手水で微調整
◯クワセ
魚信 2分包
水 150cc
※鍋で作り、仕上がり約8mm径に押し出して「わらび職人」に浸して持参
「粒戦」の入らないマッハ系のデカバラケに、ホタテのような巨大なクワセ(ウドン)、タナはチョウチンで夏の大型を狙い打つ通称「ホタチョー」も、すっかり定着してもう何年にもなります。元々1枚キロクラスが揃うここ椎の木湖が発祥の地となったホタチョーですが、今年は特に超大型が揃うということで、岡田氏もすっかりこの釣りに魅了されて通い詰めているのだといいます。
「セッティングもエサも豪快で、アタリも豪快そのもの。そして釣れてくるのがとんでもない大型ばかり…という釣りですから、ハマらない手はないですよね」
かなり太めのPCムクトップが装着されたセミロングタイプのウキ。これは「普通のムクだと入り過ぎちゃうし、パイプだと折れやすくて作ってもらったんだけど、すごく具合がいいんですよ」と岡田氏。何よりこの釣りを普段からやり込んでいることが窺えます。
確かにこんなパワー溢れる釣りなら、釣果を出すことだけを考えたら「鉾」の方がいいのでしょう。
「今日はこのホタチョーを『獅子吼』でやりたかったんです。理屈抜きで。『鉾』よりは軟らかいから取り込みの時間は掛かると思いますけど、それも含めて楽しみたかったわけです」
神々しい朝の椎の木湖の空をバックに、少し強い南風の中、岡田氏は序盤から確実に豪快なアタリを仕留めていきます。
「椎の木湖はもともとスロースタートですし、今朝は曇っているからいきなりは釣れないと思います。まあでもこの型ですから、焦らずいきましょう」
釣れてくるへらがまた、凄い。
丸々と太った…という有り体の表現が陳腐に思えるくらい、驚くべき魚体のキロアップばかりなのです。
獅子吼でしなやかに止める
岡田氏が座った釣り座は638番。大型ばかりの椎の木湖の中でも特に型が揃う5号桟橋です。
「同じホタチョーでも、以前より『タナ意識』に変わってきていますかね。上からカッ、カッ、ドン…というアタリもあるにはあるんですけど、それよりも、深くナジんでひと呼吸あってドカン…みたいな、そんな釣りの方が決まりやすい。まあ、この型ですからね」
岡田氏が『獅子吼』で抜き上げてくるのはキロアップ…というか、1.5キロクラスも普通に交じるのだから驚きです。
「このへらで早いアタリばかりで決まっちゃったら、それこそ200kgいっちゃいますよね(苦笑)。で、このじっくり釣っていくようなリズムに、『獅子吼』がすごく合うんですよ」
大きなハリを握り込むように付けられる、大きなバラケ。クワセも特大。それを強い仕掛けでじっくりと深ナジミさせて、強いアタリだけを狙い打つ。
全てが強い。そんな釣りを、趣のある「獅子吼」で帳尻を合わせているのか――――――。
これもまた、釣果だけでは語れないへら鮒釣りの奥深さでしょうか。
比較的静かな立ち上がりだった朝。しかし時間が経つにつれてへらの活性も上がってきたのか、徐々にウキの動きは派手になってきていました。
「へらもお目覚めですね。下バリがアオられるようになってきたので、大きくします」
岡田はそう言うと、ただでさえ大きいクワセの下バリを8号から9号にサイズアップ。野の巨べらでも釣ろうかという大きさです。
さらにバラケにもひと工夫。
「ハシャギが強く、持たなくなってきた」ことから、ブレンドに「カルネバ」100ccをプラス。その分、水の量を230ccに増やし、新たに作り直します。相変わらず「マッハ」のボソが効いた見た目だが、「カルネバ」効果でそれまでより安定して深いナジミ幅が確保されていきます。
「面白いですよね。椎の木湖ならではの釣りです」
濃厚な寄りを伝えつつ、しっかりと深くナジんでいく太いPCムクトップ。そんな長く太いトップが先端1目盛残しの位置で、ピタリと止まる。
岡田氏はタテサソイをかけることなく、そのまま構えます。すると、いったん静止したトップに「グワン」という大波のようなアオリが出たかと思うと、“スパッ!”。トップは水中深く豪快に消えていくのです。
「よし、止まった」
次の瞬間、下を向き、「獅子吼」をタメる岡田の姿が飛び込んできました。
「いやぁ、それにしても凄いへらばっかりですよね。これだから椎の木湖通いはやめられないんですよ」
1枚キロアップはザラ。1.5キロクラスも普通。
そして――――――。
「ここが面白いのは、午後になるとどんどん地合が落ち着いて、さらに型が良くなるところですよね。だからなかなか帰る決断をするのが難しいんですよ」
この日は平日とあって、夕方までには仕事で横浜に戻らなければならなかった岡田氏。それなのにどんどんウキの動きがよくなっていくのだからたまりません。
「やっぱりだんだん活性が上がってきましたよね」
通い込んでいるだけはあります。ここからの岡田氏の対応は早く、そして的確でした。
まずは上バリを巨べら用の15号にチェンジ。これでタナにバラケを入れるのが一気に楽になります。
さらに注目したのが下ハリスの長さ。一時は17cmまで詰めてみましたが、これは失敗。この日はここまで短くすると一気にアタリが飛んでしまう傾向で、しかしこれがヒントとなり、やや長めの25cm前後でいい感じになります。そこから岡田氏は2cm単位で短くしたりして、細やかな調整でアタリを弾き出していくのです。大枠は豪快な釣りですが、繊細なところはとことん繊細にいくのがいかにも岡田氏らしいところ。
「実はさっき一瞬だけヒゲ(トロロ)もやってみたんです。下ハリス17cmで。その感触があまり良くなかったからすぐにウドンに戻したんですけど、それもヒントになりました。ああ、今日は短いハリスはあまりよくないんだなって。へら鮒釣りって、やること全て、無駄ってことはないんですよね」
思い付いたことは、たとえそれでいったんリズムを崩そうとも、全て試してみる。それが今も昔も変わらぬ「岡田イズム」――――――。
「うん、いいのが交じってきましたよ」
ただでさえ申し分のない型が揃っていたこの日、さらなるサイズアップの兆候が表れてきていました。たまに700g級の「小べら」も釣れるのですが、それがまた小さくてもコロっと太った綺麗なへら。そして怒涛の1.5kg級が交じる確率がどんどん高くなっていくのです。
深く深くナジんで、一瞬静止し、スパッ。次の瞬間、「獅子吼」が大きな弧を…。
椎の木湖のホタチョーならではの豪快極まりないアタリで、ついには1枚2kgアップも浮上。
「凄いですよね、このへら…」
思わず笑顔でため息をつく岡田氏。ますます帰るタイミングを失っていくのでした。
プロフィール
岡田 清 (おかだ きよし)
【フィールドテスター】
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、
03年は準優勝、09年に3回目の優勝を果たした。
ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。
「T-style」会長。へらぶな釣り全般を愛好し、競技会以外では、
山上湖などの舟釣りで長竿を振って底釣りや
チョウチン両ダンゴ等を楽しんでいる。
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