2024/12/18
コラム
名手の推し竿【My Favorite Rod】吉田康雄impression新時代の最強コンビ「風切」&「紅月」
軽快な浅ダナ、重厚な底釣り…。吉田康雄が新時代の最強コンビ「風切」&「紅月」で富里乃堰を釣る。
現代の“浅ダナ番長”「風切」
「まずはこのデザインが最高ですよね。『今日は浅ダナでガンガン釣るぞ!』っていう気持ちをアゲてくれます」
久しぶりに富里乃堰へとやってきた吉田康雄。今日は、まずは大好きな浅ダナを両グルテンで、そして後半は底釣りで型狙い…という算段だ。
そしてまず吉田が継いだのが、「風切」の13.5だった。
「スピーディーな浅ダナ両グルテンは大好きな釣り方なんです。まずはこれでガンガン釣っちゃいましょう」
小さく軽いグルテンエサが、こともなげに沖へと振り込まれていく。簡単そうに見えるが、これは意外に難しいはず。
「そうですね。かなり軽くて小さなエサですので、簡単ではないと思いますよ。でもこの『風切』には『タフテックインフィニティ』と呼ばれる高性能なソリッド穂先が搭載されているので、振り込み時の操作性が抜群なんです。単純な振り切りだけでなく、もちろん落とし込みもビシバシ決まります。これって穂先の性能に頼る部分が大きくて、しなやかかつ、適度な張りがあることが、最後の最後での細かい操作性の良さを実現するんですよ。浅ダナの釣りってど真ん中の落とし込みだけでなく、やや落とし込みとか、微妙に左右にずらしたりもするんですよね。ですので、穂先の性能ってすごく重要なんです」
魚影抜群の富里乃堰。吉田の狙いどおりの早いアタリが連発し、次々と元気なへらぶながヒットする。
「いいですね。狙いどおりです」
手応え十分の吉田。シャープなアワセでへらぶなが掛かった後は、白い竿が大きなアーチを描く。
「この曲がりもいいですよね。浅ダナで早いアタリを取る釣りって、魚が沖走りするんです。そこで硬過ぎる竿だとバレたりハリスが切れたりするんですが、『風切』はしなやかな竿なので、それがないんですよ。これも浅ダナに向いている理由ですよね」
大きなカーブを描いてへらぶなの突進を止めた後は、今度はブレることなくタモへと吸い込まれていく…。
「『風切』はただ軟らかいだけでなく、現代に大型化したフィールドに合わせて力強さも備えています。特にバット(元)の部分には適度な張りを持たせてあるので、取り込みの寸前に潜られたりすることが少ないんですよ。穂先も強いので、負けないですよね」
吉田の浅ダナ両グルは、まさにイレパク状態。ウキが立った直後に揉んで、そこから「チャッ!」と落とす超速攻のアタリが連発する。
「楽しいですね。まさに狙いどおりの釣りです」
「風切」がその名のとおりシュッと風を切り、富里の良型がタモへと吸い込まれていく…。
使い込むほどに際立つ「紅月」の万能性
「曲がる竿が大好き」と公言する吉田。例えば「柳」などの軟らかい本調子の竿もフェイバリットに挙げる吉田にとって、パワー系を謳う「紅月」とは、いったいどんな立ち位置の竿なのだろうか。
「『紅月』は確かにパワー系の竿なのは間違いないんですが、実際に振ってみると、ほとんどの方が『硬い』って感じないと思うんです。なかには『なにこれ軟らかいじゃん!』って驚く方もけっこういました。で、そこが『紅月』の人気の秘密なんですよ。
以前のパワー系の竿っていうと、いわゆる硬式先調子という感じで、ピンピンに硬くて先だけ曲がる…みたいな感じの竿が多かったんですよね。それがさまざまな技術革新や、釣り人の感性の変化などもあって、そういったただピンピンの硬い竿では楽しくなくなってしまった。そして楽しいだけじゃなく、竿ってやっぱりきちんと曲がらないと、本当のパワーって得られないんだって皆が気づいたんです。そこで登場したのが『紅月』だったんですよ。
『紅月』って、振った感触は正直、パワーロッドとは思えないんです。とてもしなやかなんですよね。もちろん『伊吹』や『柳』などに比べれば分かりやすい張り感はあるんですが、思った以上にしなやかなんです。だからエサの振り込みが非常に楽で、何なら小ウキを使う浅ダナなんかにもバッチリ使えちゃうんですよね。感触的にはむしろ中硬式の本調子に近い。これが『紅月』の守備範囲を広げているんです」
パワーロッドでありながら、非常にしなやかな感触を体現している「紅月」。まさにこれこそが、「紅月」を吉田が好む理由の一つである。
「振った感触はへら竿らしくしなやかなんだけど、パワーロッドらしい張り感も備えている…。だから、とにかくどんな釣り場、どんな釣り方でも使いやすいんですよ。ガチガチの竿でもないので、仮に釣れるへらぶなのサイズがそんなに大きくなくても、その引き味も十分楽しめちゃう。だから、使い込んでいくほどに、そのオールマイティーな性能に感心してしまうんです。それでいて価格帯も低めなので、初心者や女性の方にもすすめやすい。実はフィッシングショーでも、お子さんや女性の方からの反応が一番多かったのが、この『紅月』でした。『なにこの綺麗な竿!』っていう感じで、くいつきが全然違う。で、振ってみてもらうと、そのしなやかな感触に、またびっくりされていました。『おこづかい貯めて、この竿を買う!』って言ってくれた少年もいて、すごく嬉しかったなぁ」
使い込むほどに際立つ万能性、そして、使い込むほどに惚れ込んでしまう竿…。
管理釣り場での浅ダナから底釣り、ボートでのチョーチン釣り、そして超短竿での乗込みの釣りまで…。あらゆる場面で「紅月」を使い続ける吉田。「風切」同様、斬新なデサインの中に隠された「万能性」が、「紅月」を唯一無二の存在として輝かせている。
そして今回、「紅月」で吉田が楽しむのは、富里乃堰の重厚な底釣りだ。
曲がるほどに湧き上がるパワー
「紅月」をパワーロッドたらしめている点として、実際に魚が掛かった後の所作がある。つまり、大きく曲がることによって、ありあまるパワーが底から湧き上がってくるのだ。
「とにかく『曲げたくなるパワーロッド』なんです、『紅月』は。同じ系統としては『飛天弓 皆空』もあって、これもまたパワー系なんだけどしっかり曲がる大好きな竿なんですが、『紅月』はこの『皆空』よりもうワンランク曲がる感覚なんですよね。だからより幅広い釣り方や、小さめの魚のサイズにも対応するんです。ですから、管理釣り場やボート釣りなど気合の入った釣りだけでなく、ふらっと出掛ける野池の釣り…なんかでも、つい出したくなっちゃうんですよね。で、貴重な1枚が釣れた時には、しっかり曲がってすごく楽しいんです。ですから、結局のところ、1年じゅう僕のロッドケースに入っちゃってるんですよね(笑)。『紅月』を基準にして、もう少し竿を曲げたいなぁなんて時には『柳』とか、僕の中で竿選択のど真ん中、『基準』となっているのが『紅月』なんですよね。本当に大好きな竿です」
かの「飛天弓 本ぬけ」に始まり、「曲がる竿が大好き」と公言してきた吉田康雄。そんな吉田が辿り着いた「オールマイティーロッド」こそが、この「紅月」である。しなやかタッチのパワーロッドはあらゆるフィールドで躍動し、吉田の釣りをしなやかに支え続けている。
さて、軽快な浅ダナを楽しんだ後、吉田は「紅月」18で、富里乃堰の重厚な底釣りを存分に堪能した。
「狙いどおり、浅ダナより型がいいですね。アタリはちょっと待ち気味ですが、それもまたこの竿のキャラクターに合っている気がして、すごく楽しいです」
しっかりとナジみ、ジワジワと返して「ツン」。これぞ底釣りという重厚なアタリで、浅ダナよりひとまわり大きなへらぶなが竿を大きく曲げる。
「ほら、パワーロッドなんですけど、硬いというよりは、まるで軟調子の竿みたいに大きく曲がるでしょう? これが『紅月』の特長なんです」
曲がれば曲がるほど、底から湧き上がってくるかのようなトルク感…。
「これだけ曲がって、でもまったくブレずに大型が上がってくる。硬くないので手にゴツゴツくる感触もなくて、釣っていて楽しいし、腕にも優しくて疲れないんですよ」
浅ダナでイレパク、底釣りで味わいある重厚な型狙い…。
富里乃堰を贅沢に楽しんだ吉田は、最後に40㎝級の大型を手に、最高の笑顔を見せた。
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