2024/12/20
コラム
名手の推し竿【My Favorite Rod】岡田 清impression「飛天弓 閃光LII」長竿で復活の芦ノ湖を堪能する
2024年、完全復活を果たした芦ノ湖。岡田 清が大好きな「飛天弓 閃光LII」長竿で、その春の復活劇を振り返る。
芦ノ湖完全復活を振り返る
長く不調にあえいできたビッグレイク芦ノ湖が今年、突如の完全復活を果たした。
「この時をずっと待っていたんです。まだ早いかもしれませんが、行ってみましょう!」
同じ神奈川に住み、常に芦ノ湖の状況をチェックしてきた岡田 清。「モンスター」の異名を持つ生粋のトーナメンターではあるが、同じくらい野の浪漫を求める釣りも大好きな岡田にとって、芦ノ湖は常に頭の片隅にありつづけた存在だった。
「10年以上前かな。けっこう通ったんですよ。浅場での釣りも面白いし、もちろん、深場から引き抜く引き味も最高。湖もへらぶなも綺麗で、大好きな湖なんです」
近年は原因不明の不調にあえいできた芦ノ湖だったが、もちろん、虎視淡々と「復活」の時に備えて準備してきたかのように、2024年春、突如として良型が釣れ始まったのだ。
岡田がやってきたのが、そんな情報が飛び込んできた5月初旬。久しぶりの再会となったつり舟「うえ乃」スタッフの方との会話も弾むが、その息は真っ白。
「ちょっとこの気温が心配ですが、釣れていますよ」
早朝の気温はなんと、3℃。冬に逆戻りしたかのような冷え込みとなったが、「釣れる」と信じて曳舟にてポイントに向かう。
スタッフの杉山さんに促されて入ったのは「キャンプ場下」というエリア。良質な藻が生育し、岸に向かって綺麗なカケアガリとなっているこのポイントは、例年、真っ先に釣れ始まるポイントとして知られる。
「いやぁ、最高ですね…」
芦ノ湖のボート釣りは、前後の2本の水棹でボートを固定するスタイル。岸から数十メートルは離れているため、まるで天空の湖の真ん中にポッカリと浮かんで…という極上の趣を楽しめるのだ。
「贅沢ですよね。これで長竿の底釣りで、深場から…。想像しただけでもう震えてしまいそうですよ」
岡田が出した竿は、竿いっぱいで底となる「飛天弓 閃光LII」21尺。早朝の凛とした湖に鮮やかなレインボーカラーが映える。その光景を少し離れて見ているだけでも、「なんて贅沢なへらぶな釣りなんだろう…」と、思わずため息が漏れてしまうほどだった。
さあ、いったいどんな釣りが待っているのだろう?
恐るべき芦ノ湖。いきなりの大型の引き味に驚く!
岡田にとっては10年以上ぶりとなった芦ノ湖。そこぬは意外な展開が待ち構えていた…。
釣り開始は6時。開始から1時間は静かな時間が流れたが、これは想定済み。なんせこの寒さである。釣れるとしても太陽が上がって水温が緩み始める10時くらいか…などと予想していたので、岡田に焦りの表情はない。
釣り方は底釣りだが、底にはまだ毛足の短い藻が生えている。岡田はあえて24―45㎝とハリス段差を取り、片方を藻の中に、そしてもう片方の上バリは藻の上に浮かせるような感じの変則的な底釣りをイメージしながらエサを打っていく。エサ使いは、まずはバラケ&グルテンから。
7時、いきなりウキに「フッ」という軽い反応が出る。
「ちょっと軽かったからジャミかな?」
岡田がそう呟いた次の1投で、やはり軽い動きで小さなブルーギルがハリ掛かりしてきた。
やはりここは芦ノ湖。そう簡単にはいかないか…。
しかし――――――。
「何か大きな魚がエサ周りにいますよ」
岡田がつぶやく。ブルーギルらしい軽い動きはなくなり、代わりに重々しくアオるようなサワリが出ているという。
眼光鋭く、岡田の視線が広大な湖に突き出すウキのトップに集中する。
7時16分、深くナジんだトップが止まり、次の瞬間「ツン!」と明快に落とした。
「いやぁスレかぁ! でもいましたね!」
残念ながらこれはスレ掛かりだったが、見事な魚体のへらぶなが浮上。
7時40分にはガッチリとグルテンを食わせたが、残念ながらこれは半べら。
「そう簡単には釣らせてくれないですね。でも予想以上にウキが早くから動いています。これは期待出来ますよ」
7時55分。今度はエサを両グルテンとし、じっくりと待つ作戦に切り替える。これ以上ジャミやスレで「場」を荒らしたくないと考えたからだ。
この作戦が功を奏したのか…。
かなり待ってからの小さな「チクッ」で、青空に大きな「LII」の虹が架かる。
「よし、今度は食ってますよ。引き味も間違いなくへらです」
ここから、極上の湖で夢のような時間がスタートするのだった。
芦ノ湖の大型乱舞。「LII」の軽いだけではない、良質な「バランス」と「パワー」が光る!
アワせる。ゴツンと止まる。そして、竿が3番まで水中に引きずり込まれる…。
握りの上に左手を添えてそれを耐えると、竿は大きく曲がって「コクン! コクン!」というへらぶな独特の引き味をこちらに伝えてくる。
「最高です」
シンプルな言葉で心情を表現する岡田…。
水面に浮上したのが、まさに「野武士」と表現したくなるような40㎝オーバーの、しかも腹パンの「これ以上ない」という魚体だった。
「やっちゃったよ 凄いよこのへら!」
タモに入った魚体を眺め、思わず興奮する岡田。無理もない。それくらい見事な魚体なのだ。
「ちょっと言葉にならないですね…」
しかし、これで終わりではなかった。
アタリは続いた。
5枚目までは、まさにイレパクといった様相の連続ヒット。しかもその全てが40㎝オーバーの野武士なのだ。
9時を過ぎて風が強まっても、アタリは続いた。ただし流れが出始めたので、岡田は下バリの上にカミツブシのオモリを付け、いわゆる「ハリスオモリ」で流れを止める。エサもバラケはやめて両グルテンとし、じっくりとした待ち釣りに徹する。
この攻め方もよかったのか、ポツリポツリとアタリがきて、強引がやってくる…。
「こういう風や波が出る時ってどうしても竿を竿掛けから外して持ったりするから、なにせ軽い竿がいいですよね。まあそういう意味ではもう『LII』の独壇場でしょう。僕自身、そんなに腕力がある方ではないので、この絶対的な軽さは本当にありがたい。それに軽いだけじゃなくて、閃光シリースが脈々とブラッシュアップしてきたバランスっていうのかな…、『PII』ほど分かりやすい強さはないんだけど、それでも、普通に使うには十分なパワーと、何よりこのバランスがいいんです。1日振っていても、全然疲れないんですよ。僕はこれより短い長さになっても、断然『LII』推しですね」
大好きな閃光シリーズを振って、岡田は管理釣り場のビッグトーナメント、底釣りで頂点を極めたこともあった…。その最新鋭機「LII」で、しかも芦ノ湖という極上の湖で、さらに大型の固め釣り…。
「1枚でも釣れればいいと思ってきたのに…。長くへらぶな釣りをやっていると、こんなこともあるんですね(笑)」
岡田はこの日、なんと30枚もの大型をものにし、風が強くなった15時まで夢中で「LII」を振り続けた。そして最後に、こんな言葉を残して湖を後にした。
「釣れない時期も淡々と仕事をこなし、復活を信じて努力されてきた舟宿さんや常連さん達に最大限の敬意を評したいと思います」
まさに、「最高」の1日だった。
プロフィール
岡田 清 (おかだ きよし)
【フィールドテスター】
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、 03年は準優勝、09年に3回目の優勝をした。 ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。 『T-style』会長。へらぶな釣り全般を愛好し、競技会以外では、 山上湖などの舟釣りで長竿を振って底釣りや チョウチン両ダンゴ等を楽しんでいる。
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