2019/12/13
コラム
西田 一知 in 富里の堰 ふわりと飛ばし、軽やかに釣り込む。「飛天弓 柳」で釣る、必釣のライトペレ宙。【前編】
INDEX
秋も深まれば、いよいよ新べら放流の季節。各管理釣り場は爆釣の報に沸き、さながら「お祭り騒ぎ」の様相を呈す・・・というのは理想論で、実際にはなかなか思うような釣りに巡り合うことは難しいのが現実だろう。
そんな時に大きな味方になってくれるのが、今回、富里の堰で名手・西田 一知が紹介してくれたライト系ペレ宙だ。
長竿の沖狙い・・・という、警戒心の強い大型新べらをターゲットとしながらも、通常の両ダンゴ的な発想で従来そこにいる旧べらをも釣り込んでしまおうという、ある意味では欲張りな釣法。しかし西田は、
「基本的には旧べらをターゲットにしていて、新べらは『交じってくれればラッキー』くらいの感じの方が気持ちも楽だし、結果的には釣果も伸びる。同じ旧べらでもコンディションのいいへらが主体になりますしね。」
と断言する。
まだ放流前の富里の堰。そして、竿はどこまでも細くしなやかな「飛天弓 柳」18尺。
ふわりと飛ばし、軽やかに釣り込む。
元気な旧べら相手に、西田の釣りが冴え渡る!
ピンポン状態を利用する。
「細いねぇ~!」
西田の釣りを見に来た釣り人達が、竿を見て、一様に皆驚きの声をあげる。
「飛天弓 柳」18尺、ペレ宙。まずはウキからオモリまで1.5mを取ったタナで、優しく鮮やかな落とし込みを決めていく西田。確かにその竿は驚くほど細く、そしてしなやかだ。
「通常の竿なら13尺くらいの細さでしょうか。これだけ細くしなやかだと向かい風に負けて振り込みづらくなりそうですが、全然そんなことないですね。むしろ楽に軽い仕掛けが飛んでいきます。細くて風を切る感触が心地いいくらいですよ。」
●竿
シマノ【飛天弓 柳】18尺
●ミチイト
0.8号
●ハリス
0.5号 45―60㎝
●ハリ
上下6号
●ウキ
パイプトップ12㎝ 二枚合わせ羽根B9.5㎝ カーボン足6㎝ エサ落ち目盛は全11目盛中、4目盛沈め
●エサ
ペレ軽 400㏄
浅ダナ一本 200㏄
BBフラッシュ 200㏄
水 200cc
BBフラッシュ 100㏄
最後の「BBフラッシュ」100㏄でやや硬めに調整された基エサを小分けし、手水で微調整しながら使っていく西田。エサのサイズは小さめで、ハリを刺し入れた後はチモトをキュッと押さえるのみで、エサの表面はラフな感触を意識的に残しているようだ。
「考え方としてはチョーチン両ダンゴの時と似ているんですよ。硬め小さめのエサで意識的にピンポン状態を作り出すことで十分なウケと早いアタリを出すことが、まずは狙いなんです。」
西田の釣りの基本骨格。「攻め」の釣りを信条とする西田の釣りは、釣り方を問わずエサは「硬め小さめ」であることが多い。その理由は西田が言ったように、意識的なピンポン状態を作り出して魚に競い喰いをさせ、その結果として早い喰いアタリを導き出していくのだ。そしてそれは、今日のライト系ペレ宙でも変わらない。
「ただ気をつけたいのは、早いアタリを狙っていくからといって、何でもかんでも肩付近で出る1発目のアタリを取っていく、という釣りではないということです。それなら8尺メーターで普通のダンゴエサでいいわけですからね。そうじゃない、わざわざ長い竿を出して、軽めとはいえエサもペレット系にしているということは、旧べら狙いといえども『いいへら』を狙っているということなんです。ここでいう『いいへら』とは、『喰い気があり、かつコンディションが良い旧べら』ということになります。」
新べら放流前・・・いや、放流後でも、今や「大型新べらだけがバクバク」などというシチュエーションは稀だ。良くて「混じり」か、時には新べらどころか旧べらばかりになることも珍しくない。そんな時、西田のライト系ペレ宙理論は大いに参考になるはずだ。
「極端に言えば、もしも大型新べらがバクバクになるような状況なら、ウキももっと大きく、そしてエサも『ペレ軽』単品か、もっと重い「ペレ道」主体のエサで十分なんです。いや、むしろその方が釣りやすい。でも今日を含めてなかなかそういった贅沢な状況にはならないわけで、実際には旧べらも釣っていくことを意識せざるを得ないわけです。なので、普通の両ダンゴ的なテイストを生かしつつ、コンディションのいい旧べらをメインターゲットとして釣りを組み立てていく方が理にかなっているわけですね。」
非常に魚影の濃い富里の堰。なかでも特に魚が濃いとされる東桟橋奥に座った西田。「濃い」ということはそれだけエサ慣れした賢いへらの割合も高いということになるが・・・。
強烈なカラをくらいながらも、西田はコンスタントに良型の旧べらを引き始めていた。それは短竿で釣れるへらとは明らかに異なる、ぷっくりと太って魚体も綺麗な「グッドコンディション」だった。
「けっこうカラもキツいですが、それは折り込み済み。あまり高い位置のアタリには手を出さず、ナジミに入ってからタテに強く入るアタリを狙うと乗りもいいですね。」
意識的なピンポン状態によって作り出される速攻の場。そこで冷静な選球眼を持ち出し、あえて遅めの強いアタリを狙うことが、そのままカラツン対策につながっているのだ。
タナ、上!
「この天候のせいか、さすがに今日はタナが高いですね。もう少し浅くしてみます。」
10枚を釣った時点で、西田は早くも釣り方の細かい修正に入った。
まずは、この釣りでは最も重要なファクターとなる「タナ」。2時間打って「寄りきった」と見た西田は、タナの「分離」について考察していた。すなわち、「上にエサ慣れした中小型、下に活性の高い大型」という縦の図式が成立するならば、タナはむしろさらに深く、また仕掛けやエサもさらに「強く」という方向に進むという。その方が釣り自体が簡単になり(アタリも大きく、乗りもよくなる)、型も良くなるからだ。
しかし取材当日は、残念ながら「逆」。
どんよりと曇った肌寒い雨待ちの天候も影響しているのか、最初に設定した1.5mのタナだと、しだいにアタリが遠のいていく現象が起こっていた。これはへらがいなくなったのではなく、タナが上下に分離せず、全てが上に行ってしまったからである。
「こういう時は素直に魚に従うのがベストです。強引に分離できる状況ではないですね、今日は。」
冷静に状況を見切った西田は、まずウキ下を段階的に浅くしていき、最終的には規定のメーター(ウキ~オモリ間1m)に辿り着く。そして、「むしろ上の方が型がいいですね。」と、手応えをつかむ。
さらに西田は、ハリスを45―60㎝の長めから、35―45㎝とコンパクトに修正。 大きく振らせてタメを作る攻め方(すなわち上下に分離させるイメージ)から、そこにいるへら全てをターゲットにして早いアタリに的を絞る攻め方(魚の型等を選ばない)にシフトしたのである。
「これでまだ良くないならウキを小さくしますが、今日はそこまでではないですね。逆にこれ以上ウキを小さくしてしまうと、寄り過ぎて釣りづらくなる感じです。」
ウキはそのままに、より1点集中的にアタリを絞り始めた西田。もちろん、それでも「ウケてチャッ!」でいくほどではないが、ナジみきるまでに出る強いアタリを積極果敢にアワせていく。そして、適当にカラをもらいながら、さらに一段上のペースに突入していくのだ。
「これだけ細く軟らかい竿だとカブる感じもあるにはあるんですが、けっこうシャープでしょう!? それに、魚が掛かって大きく曲がった時の芯のあるパワー感が凄いですよね。これなら大型新べらの引きにも十分対応可能でしょうし、沖打ちのペレ底なんかも愉しいでしょうね。」
いつもながらポーカーフェイスの西田だが、その視線は大きく曲がった自身の竿に向けられるのだった。
後編記事はこちら
プロフィール
西田 一知 (にしだ かずのり)
[インストラクター]
関東へら鮒釣り研究会で97年、09年、10年、11年に年間優勝して史上5人目の横綱位に就く。09年シマノへら釣り競技会 野釣りで一本勝負!! 第3位。30尺の使い手で長尺の釣技に長ける。「関東へら鮒釣り研究会」「コンテンポラリー・リーダーズ」所属、「KWC」会長。
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