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“サーフ”なひととき
- File.04 -

新保明弘

多彩なゲストに心躍る
サーフのライトショアジギング

静岡県沼津市・今沢海岸

初夏から沿岸部で釣れ始める回遊魚。序盤はまだサイズが小ぶりなものの、様々な種類の若魚たちが盛んに餌を追う。ルアーへの反応もよく、これからショアジギングを始めるにもピッタリのシーズンだ。ここではライトなサーフショアジギングを新保さんが実釣レポート!

ANGLER PROFILE シマノ インストラクター

新保明弘(しんぽ・あきひろ)

新保明弘

しんぽ・あきひろ

1977年生まれ。静岡県出身。
駿河湾から伊豆半島をホームグラウンドとし、ライトルアーでのメバルやアジを狙うスーパーロコアングラー。さらにシーバスやヒラメ、青物をメインとしたオフショアのビッグゲームまでと守備範囲は広く、一年を通して多彩なターゲットを追い続けている。

まだ薄明るい海岸線を前に、釣り場へ向かう足も早まる。今日はどんな魚と出会えるのだろう……

魚はいる! 状況回復に期待

観測史上最も早い梅雨明けとなった2018年。7月から煌々と日差しが照りつけ、暑い夏が急ぎ足でやってきた。雨は避けたい釣り人にとっては嬉しいことだが、釣況的にもグッドニュースが飛び込んできた。

「サーフの回遊魚が絶好調なんです。初心者でも手軽に釣れるほど魚影が濃く、高活性ですよ」

そう話すのは、駿河湾の沼津エリアをホームとしている新保明弘さん。サーフでは梅雨明け頃から回遊魚の接岸が顕著になり、ワカシ(ブリの幼魚)、ショゴ(カンパチの幼魚)、シイラ、ソウダガツオなど多彩な魚種が乱舞。海岸線は、連日釣り人で大賑わいなのだという。

「まだシーズン序盤なので魚は小型ですが、やる気のある個体が多くて釣りやすいんです。なので、これからルアーの回遊魚に挑戦したい方にはもってこい。さらに、ライトなタックルでも十分対応可能。体力勝負と思われがちなショアジギングのイメージとは違い、軽快な釣りが楽しめるはずです」

というわけで、今回はサーフからのライトショアジギングの模様をお届け。新保さんが向かったのは、沼津港の北に位置する位置する今沢海岸。この周辺には広大な海岸線が続いており、多種多様魚が狙えるショアジギングの好ポイント。手前から急に深くなっている場所も多く、回遊魚などのフィッシュイーターが餌の小魚を追い込みやすい地形になっているのだ。このあたりで好釣果が続いていたそうだが、ここで新保さんから残念なお知らせが……。

「ここのところ絶好調だったんですが、実は数日前から急激に釣果が落ちてしまいまして……。まあ、やってみないとわかりませんからね! 状況がよくなっていることを祈りましょう」

釣行日が運悪く谷間に当たってしまったようだが、こればかりは自然相手。この日は状況が回復していることを祈って早朝からキャストを開始すると、数投目でガツンと何やらヒット! 惜しくもフックが外れてしまったが、魚の気配に期待が膨らむ。

「今のはまずまずのサイズでしたね。まだ薄暗い時間のボトムですから、多分サバかな?」

  • ポイントに到着し、逸る気持ちを抑えつつタックルをスタンバイ。釣り人なら、誰しも胸が高鳴る時間。

  • 海岸線に目をやると、流木や海藻といった漂流物が打ち上げられていた。「あれは潮が手前にぶつけて来ている証拠です。魚も入ってくるいい潮ですからね」と新保さん。こういったシグナルも状況判断の一つとして覚えておきたい。

  • メタルジグが着底し、巻き上げ開始直後に何かがヒット。残念ながらバレてしまったが、早々の生命反応に俄然ヤル気が出た新保さん。

  • メタルジグが着底し、巻き上げ開始直後に何かがヒット。残念ながらバレてしまったが、早々の生命反応に俄然ヤル気が出た新保さん。

  • ちらほらとライバルが並び始めた海岸線。黙々とロッドを振り続ける群衆の中、先頭を切って獲物を仕留めた新保さん。果たして魚は?

    メタルジグに高反応。まずは若魚たちがお出迎え

    早々に魚の気配を感じた新保さん。これで状況悪化の不安が一気に解消され、ロッドを握る手にも力がみなぎる。

    この日、スタートから使用したメタルジグは「コルトスナイパー TG ベルサーテ」の40g。

    サーフの本気ショアジギングといえば、80g前後の重いジグをタフなタックルでフルキャストするイメージだが、始めたばかりのビギナーにはかなりハードなセッティングだ。魚が釣れなければ激しく体力を消耗し、疲れるばかりで釣り自体に集中できなくなってしまう。

    それを考慮すると、メタルジグは30~40gほどのウエイトであれば疲れにくく、タックルもよりライトなものを使えるようになる。高性能のロッドやPEラインを使用すれば飛距離も問題なく、小~中型の回遊魚であれば無難に、より手軽に楽しめると新保さん。

    「メーター以上のクラスにはちょっと太刀打ちできないかもしれませんが、それ以下であれば十分対応できます。さらに、僕のような動きの少ないワンピッチジャークなら疲労は少ないですから、ショアジギングに慣れていない方でも集中力が続くと思いますよ」

    そう解説しながらキャストを繰り返していると、中層あたりで再びアタリ。早朝の魚よりは小さいようだが、ここは一尾目なので慎重に寄せてくる。

    波打ち際から割って出たのは、30cm弱のワカシ。サイズとしてはもう一声といったところだが、魚が確認できたことにまずは一安心。

    時合は逃すまじ! と間髪入れずに探ると、今度はさらに力強い引き込み。パワフルなファイトを見せてくれたのは、30cmほどのショゴだった。釣り始めは状況悪化が懸念されたが、どうやらこの日は回復に向かっているようだ。

    • 一見すると細身の「ボーダレス285H 2」だが、キャスト時はしっかりとルアーの重みを乗せ、十分な飛距離を確保してくれる。

    • ワンピッチジャークが新保さんの基本アクション。グリップエンドを脇にはさみ、手首を軽く返すようにシャクると疲れにくい。

    • 早朝のバラシからややあって、再びロッドが弧を描いた! 今度はサバではない様子だが、果たして正体は?

  • 無事キャッチしたのは可愛いサイズのワカシ。晩夏頃には40cm級のイナダクラスに育ち、ロッドを絞り込んで楽しませてくれる。

    • ワカシのヒットからすぐに2尾目が果敢にアタック。鋭い横走りに耐え、魚体が波打ち際に打ち上がった。今度は別の魚のようだが……

    • 力強い引き味で楽しませてくれたのは、30cmほどのショゴ。さすがは親譲りのスプリンター、サイズからは想像できない引きの強さが魅力だ。

    厚い雲の切れ間から朝日が差し込んできた午前6時。ここで新保さんはタックルを丸っとチェンジ。何か秘策が?

    アプローチを一変させる“弓ヅノ”の活用

    釣りを開始してから1時間半が経過。序盤から魚の気配があり、ここまでの短時間でワカシとショゴを仕留めることに成功した。しかし、この後からイマイチ反応が悪く、メタルジグに触るようなアタリはあるもののフッキングまでには至らない状態が続く。

    ならばとメタルジグを30gに落とし、カラーもナチュラルからシルバーへチェンジ。喰い込みを上げようと試みるが、どうもうまくいかない……。

    「ん~、どうもメタルジグへの反応が鈍りましたね。でも魚がいるのは確かです。こんな時は、思い切ったアプローチの転換が吉ですよ」

    そう言ってタックルバックから取り出したのは「弓ヅノ」。古くから使われていた漁具であり、もっとも古い和製ルアーといったところ。この弓ヅノをテンビンなどに接続し、トローリングのように海面を引いてくるのが釣り方だ。メタルジグとは異なり、水面でのアピールに長けたアイテムと言える。

    タックルをややタフなものに組み替え、沖へ向かってフルキャスト。弓ヅノテンビンが激しく飛沫を上げ、水面で回転する弓角に注意を引きつける。

    沖からゆっくりと引いて来ると、手前に差し掛かったところでバシュ!っと水柱が上がった。次の瞬間、ロッドに確かな手応えが伝わる。そして抜き上げられたのは、一尾目よりも一回り大きい35cmのワカシ。

    「朝日が出たのでチャンスかなと思ったのですが、やっぱり出ましたね~。メタルジグのカラーやサイズでお手上げになったら、最後はアプローチです。メタルジグでは、ゆっくりと水面でアピールし続けることはできませんからね。こんな時のために、弓ヅノタックルは持ち合わせておきたいものです」

    • カラーやサイズなど、メタルジグで打つ手がなくなった新保さん。おもむろにバックから弓ヅノを取り出し、テンビンに接続する。

    • タックルも弓ヅノ専用に組み替え、メタルジグで反応があったポイントへ再びキャスト。同じポイント周辺を探り、魚の出方を見る。

    • テンビンは水面で飛沫を上げやすいフロートが付いたタイプがおすすめ。これが逃げ惑う小魚が上げる飛沫を演出し、弓ヅノへの注意を引きつける。

  • メタルジグではなかなか掛からなかったワカシをサクッと仕留めた弓ヅノ。一つ持っておいて損はナシ!

  • 沖にナブラが出現し、近づいてきた頃合いで強烈なアタリ。明らかにワカシやカンパチではない引き、次なる獲物は?

    夏の使者 “ソウダガツオ” の疾走は気分爽快!

    弓ヅノの威力を再確認した後は、潮も止まったせいか魚の気配が消失。メタルジグに戻してキャストを続けたが、まったく反応がなくなってしまった。

    しばらく沈黙が続いたある時、新保さんが遥か沖に立つナブラを発見。観察を続けていると、どうやらこちらに近づいている様子。射程圏内に入れば、なんとか数尾は捉えられそうな雰囲気だ。

    30分ほどキャストしながら待っていると、波打ち際に何やら光るものが……。駆け寄ってみると、10cmほどのカタクチイワシだった。どうやら沖で追われているのはこれらしく、徐々に追いやられて波打ち際へ打ち上げられてしまったようだ。

    「これがベイトですか……、ならばルアーをこれに寄せましょう。射程圏内に入れば、よりヒットする確率が上がりますからね」

    打ち上がったカタクチイワシは8~10cm。「コルトスナイパー TG ベルサーテ」の40gがちょうどそのサイズに合っており、カラーはブルーイワシを選択した新保さん。後は魚の群れが近づいてくるのを待つだけ……。果たして正体は何なのか!?

    「よし! 喰いましたよ」

    ついにターゲットが射程圏内に入り、ドラグが唸りを上げた。掛かった瞬間から勢いよく突っ走る相手は、明らかにワカシやショゴではない様子。そして姿を表したのは、夏の定番魚「ソウダガツオ」!

    夏の青い空の下、やはりこれを釣らねば回遊魚は始まらない。他の魚種では発揮できないこの疾走感は、やはり何度味わっても壮快だ。

    その後、ソウダガツオはもう一尾追加したが、群れは短時間で通過。しばらくチャンスが続くかと思ったが、この日はここで終了となった。

    「今回は思っていたより活性が高くてホッとしましたが、本来の好調時はこんなものではありません。魚影が濃ければもっと数を釣るチャンスがありますし、魚種もまだまだたくさんいますからね。ボトムを中心に探ればヒラメやマゴチ、カサゴ、ハタなども狙えますから、ショアジギングで楽しめる範囲は実に広いです。今回のようなライトタックルなら手軽に始められますので、気になった方は是非チャレンジしてみてください」

    • ふと沖に目をやると、白い水柱がポツポツと立っているのを発見。どうやら回遊魚によるナブラであるらしく、徐々にこちらへ近づいている様子。これはチャンスかも?

    • はっきりとしたナブラは出なくなってしまったが、時折ルアーが届く範囲に水柱が立つようになった。いよいよ魚が射程圏内に入ったか?

    • 幾度とない走りに耐え、ようやく波打ち際へ御用。やはり正体は銀色のアイツ。

    • 待望の魚が掛かった瞬間、ズキューンと突っ走る強烈な引き。走っている間は無理なヤリトリはせず、ロッドの角度を一定に保って引きに耐える。

  • 夏の回遊魚釣りといえばこの魚。サーフと海、夏の青空の組み合わせがよく似合う。

    • 銀色に輝く流線型ボディが美しいソウダガツオ。マグロの親戚なだけあって遊泳力が高く、強烈な引き味虜にするが釣り人を虜にする。

    • ソウダガツオに追われていたのか、カタクチイワシが多数海岸に打ち上げられていた。メタルジグと並べてみるとサイズとカラーがベストマッチ!

    軽快なルアータックルを主軸に弓ヅノ専用も用意

    新保明弘の回遊魚タックル

    大型回遊魚を仕留めるようなタックルでは長時間釣りを続けるのは難しく、これから始めたい人にはちょっと厳しい。対象魚が小~中型であるならば、ライトなものでも十分対応できる。
    メタルジグを扱うロッドは、7~10フィートくらいのシーバスロッドやショアキャスティング用などでもOK。あまり長くて重いロッドは疲れやすいので注意しよう。
    リールは2000~4000番サイズの小~中型スピニングリールでOK。ただしラインを出されることが多い釣りなので、スプールには最低でも150~200mほど巻けるものを選択したい。
    新保さんは並継タイプのキャスティングロッド「ボーダレス 並継キャスティング仕様 285H2」に小型スピニングリール「サステイン 4000XG」をセッティング。ラインはPEの1号を巻いている。
    弓ヅノを扱うロッドは、できればワンランクパワーアップしたものを使うのが理想。ミディアムヘビークラスのシーバスロッド、またはショア用キャスティングロッドのほか、ライトな投竿(4m前後)を使ってもよい。リールは3000~5000番サイズの小~中型スピニングリールでOK。
    新保さんは並継タイプのキャスティングロッド「ボーダレス 並継キャスティング仕様 325H6」に中型スピニングリール「ストラディック C5000」をセッティング。ラインはPEの1.5号を巻いている。
    • メタルジグのロッドは、ボーダレス 並継キャスティング仕様 285H2。目を見張るほどの細身ブランクスはスパイラルX&ハイパワーXで強化され、糸絡みしにくいステンレスフレームSiC Kガイドも採用。もっともライトな285H2は堤防のキャスティングゲームにもマッチ。 関連商品情報:ボーダレス 並継キャスティング仕様[BORDERLESS CASTING MODEL]

    • メタルジグのリールは、サステイン 4000XG。 強さを形作る「HAGANEギア」&「HAGANEボディ」、高感度を実現する「NEWマグナムライトローター」など、最新テクノロジーを惜しむことなく投入。さらに「Xプロテクト」の高い防水性能により、高次元で両立した感度と剛性感、そして快適な使い心地を長く堪能できる。 関連商品情報:サステイン[SUSTAIN]

    • 弓ヅノのロッドは、ボーダレス 並継キャスティング仕様 325H6。本格的な投げ釣りにも対応するパワースペックゆえ、テンビンを使った弓ヅノ仕掛けにも十分対応できる。 関連商品情報:ボーダレス 並継キャスティング仕様[BORDERLESS CASTING MODEL]

    • 弓ヅノのリールは、ストラディック C5000。「永遠に変わらない巻きごこち」をめざすための設計思想「HAGANE」の搭載により、上位モデルと遜色のない滑らかな回転を実現。高い耐久性と変わらないフィーリングは、過酷なサーフの環境においても頼れる存在。 関連商品情報:ストラディック[STRADIC]

    ライトショアジギングでは30~40gのメタルジグが主体

    新保明弘のルアーセレクト術

    回遊魚釣り狙いを絞るならば、手返しよく幅広いエリアを探れるメダルジグがあれば十分!
    • ■METALJIG
      今回新保さんがメインで使用したのは、鉛ボディの中心にタングステンウェイトを搭載したハイブリットジグ「コルトスナイパー TG ベルサーテ」。タングステンによる飛距離と沈みの速さが特徴で、ポイントが定まりにくいサーフでは広範囲を素早く探れるジグとして重宝している。シルエットもコンパクトなため、ベイトが小さい場合にも使えるのも利点だ。

      カラー/フラッシュシルバー(40g) (左上から1番目)
      カラー/ブルーイワシ(40g) (同2番目)
      カラー/ブルピン(30g) (同3番目)
      カラー/ブルーイワシ(30g)(同4番目)
      関連商品情報: コルトスナイパー TG ベルサーテ

    メタルジグでは演出しにくい表層アピールがポイント

    新保明弘の弓角活用術

    メタルジグではカバーしきれない、さらにハードプラグでも演出しにくい飛沫とスピードが効く!
    • ■YUMIZUNO
      弓ヅノはハリが本体と一体化しており、ハリの根元に羽根をあしらったものが一般的。本体が天然素材のものは高価で入手も難しいが、現在は本体がプラスチックなどの樹脂製のものが普及しており、これで十分釣果が望める。
      カラーはホログラムやアワビシールなどのワンポイントもあり、実に多彩。使用するサイズは40~50mm程度でOK。
      弓ヅノは水面付近の小型ベイトフィッシュを捕食しているときに威力を発揮する。メタルジグの動きにスレてしまった場合でも効果的なので、是非とも一つは用意しておきたい。

      左からピンク、ブルー、クリアーのカラーが施された弓ヅノ。クリアー系はよりシルエットを小さく見せる効果があり、シラスなどの極小ベイトフィッシュを偏食している際の効果は絶大。

    美味しい回遊魚は是非ご賞味あれ

    • 釣果を得ることができたならば、是非とも食べていただきたいのが回遊魚。調理次第でどの種類も美味しく頂けるのだが、特におすすめなのがソウダガツオ。
      一般的には血合いが多く、扱いにくい魚種という認識が強い。確かに血合いを取り除くのは面倒だが、新鮮なソウダガツオの刺身は絶品! 傷みが早く市場にはまず出回らないため、この味を楽しめるのはまさに釣り人の特権と言えるだろう。
      ただし、傷みが早いゆえに下処理は重要。釣れたら即座に血抜きし、よく冷えた海水氷の入ったクーラーボックスへ入れて持ち帰ること。雑に扱うとヒスタミン中毒の危険が高まるので、血合いの処理なども十分注意していただきたい。

      釣行後、新保さんの釣友である山田桂司さんが経営している居酒屋カフェ「YORIMICHI」へ。釣れたソウダガツオを山田さんに調理していただき、とってもオシャレなユッケとなって登場。身に臭みやクセがまったくなく、とにかく「美味しい」の一言。是非、お試しを!

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