カワハギ釣りの名手として知られる鈴木孝。2016年12月より、シマノフィールドテスターとして活躍の場を得ました。鈴木孝といえば独特の構えで竿を持つスタイルが特徴、鉄砲持ち、スナイパー持ちと言われる両手で竿を持つ釣り方。連載1回目はスナイパー持ちのきっかけから利点などを語っていただきます。
皆さんはカワハギ釣りのとき、どういう竿の持ち方をするでしょうか。脇の下にグリップエンドを挟んで両手、もしくは利き手1本でリールを持つスタイルがほとんどだと思います。
私もかつてはその方法だったのですが、十数年前、そもそも湾フグにハマっていたころの持ち方をカワハギ釣りに応用したのがスナイパー持ちのきっかけ。
すると今まで見えなかった部分(目感度)、感じられなかった部分(手感度)が分かるようになり、それ以来スナイパー持ちを通しています。
スナイパー持ちの構え方(右利き)は、左手でグリップエンドを持ち、右手全体でリールシートごしに支え、人差し指はハンドルの下、親指はボディに添えるかたちで、左利きの人はその反対となります。カワハギが掛かったときはハンドルを持ち替えます。竿を持つ際は基本的に海面と平行、視線は常に穂先に向けます。
▲ 水平方向に穂先がくるので、小さなアタリを視認しやすい
スナイパー持ちは腹の位置に置いた通常の構えから、そのまま持ち上げることで1メートル幅、その位置で穂先を上下させることでさらに1メートル以上、合計2メートル以上の誘い幅を稼ぐことができます(イラスト参照)。
視線が穂先と同じ位置を保てるために目感度がよく、聞き合わせ気味に持ち上げれば竿の反発力も調整しやすいので手感度にも優れているというわけです。
その他、ウネリが高いときでも、体から竿を離して持つので、竿先がブレずに安定、ということは海底付近で仕掛けも落ち着いてくれるので、意のままの誘いができるわけです。
▲ 2016シマノステファーノグランプリ決勝大会では惜しくも船中2位で総合優勝を逸す
加えて非力な方でもテコの原理を応用することで疲れにくいのも特長です。私の周辺にも数人の女性スナイパー持ちがいますが、いつも疲れにくさを強調しています。
細かい誘いも多彩に演出できます。肘の曲げ伸ばしと上下の動きを組み合わせると、誘い上げ、誘い下げ、小づき、タルマセ、ゼロテンション、穂先の揺らしなどは自在。両手で竿を持つことでブレがなく、思いどおりの安定した誘いが行えます。
▲ 大きく体をのけぞらせて合わせるのもスナイパー釣法の特長
その結果、微弱なモタレや小さな前アタリも感じ取れます。従来の持ち方と比べてみれば分かるはず、操作性、感度、伝達スピードから疲労度に至るまですべてにおいて格段の差を感じられるはずです。加えて使用する竿の持つ特性(調子、感度、操作性)なども判断しやすいのです。
合わせに関しても一連の動作の流れの中で、竿のパワーを生かして掛けにいくというイメージ。
▲ 鈴木のメインとなるウエポン。
左からステファーノ攻HHH171、同MH200、同HH165、ニューステファーノ180
スナイパー持ちは早合わせや電撃合わせも抑止できるので、その時どきのカワハギの食い込み方に合わせて掛けにいくことも可能です。
スナイパー持ちの特長を最大限に生かす釣り方を「スナイパー釣法」と呼びます。基本は縦の釣り(仕掛けを立てたまま、主に上下の誘いで釣る方法)となります。
▲ 数を釣ることに重点を置いた釣法でもあるので、
手返しも驚くほど速い
スナイパー釣法を実戦に活用してから私の釣りは大きく変わりました。と同時に、これまで見えていなかった釣り方、仕掛け、タックルを始めとするカワハギ釣法の細部が徐々に浮かび上がってきました。
これからしばらく、私がこれまで蓄積したスナイパー釣法に即した釣法を紹介していきます。貴殿のカワハギ釣りのご参考になれば幸いです。
那古船形のくろしお丸が主宰する「くろしおマスターズ」には5年ほど前から参加。メンバーはいずれも名手で、2016ステファーノ決勝大会には10名ものメンバーがファイナリストとなった。鈴木のカワハギテクニックはこのチームで培われたともいえる。左が会長の佐久間勲氏、中央が花輪雅一船長