間もない調子だからこそ90の特性をどう進化させるか?
鮎友釣りの歴史において、己の技術をここまで磨き続けている男は小澤剛をおいてほかにいないだろう。釣れば釣るほど、勝てば勝つほど、その考え方はだんだんシンプルになっているように見受けられる。達観しているといってもいい。
「みんなが僕と同じだとは思っていないし、日本で一番うまくなりたいと思っているわけじゃないのは百も承知です。ただ、もっと釣りたい、もっとうまくなりたい、そんな『もっともっと』の先に、オトリ操作は避けて通れない。じゃあオトリ操作って何?と聞かれたら、それは糸の張り加減なんですよ」
突き詰めればそこしかない。そう小澤は考える。その張り加減の基準こそゼロテンションであるが、実際にはその基準からどこまで張っていくかという操作になる。ゼロ感度を重視した釣りなら求められる調子はFWだが、引き釣り主体ならエアロドライバーだ。小澤の考える“黄金調子”とは、つまりこの2つに集約される。ただエアロドライバーの調子は誕生間もない。スペシャルからリミテッドへの進化の道筋は鮮明に見えていなかった。
実戦で求められる性能と超高弾性カーボンの可能性
「僕は調子しか見ていないから、穂先の太さや竿の細さとかは全然気にしていなくて、ただ僕は自分の理想に向かっていくだけです」
スペシャルの90で目指したものは、オトリを積極的に動かして掛けにいくためのしなやかさ。「ジワッ、ジワッ」と曲がりが微調整してくれることで高速引きにも対応する寛容なしなやかさだ。それをリミテッドで表現するならば、センサーに例えられる小澤の指の触感をマックスに発揮できる軽さと感度に引き上げる必要があった。
「最終型はもちろん、自分の目指すところまでたどり着けたと思います。スペシャルがかなりいい出来だったので、リミテッドはあれを超えられるのだろうか?と思っていましたけど、超えたとはっきり言い切れますし、僕の中ではやりきった」
超高弾性カーボンの採用に疑問を抱いたこともあった。素材がいいから竿はよくなるに違いない、そんな価値観は小澤とは無縁だからだ。
「僕も兄貴(小沢聡)もそうだけど、釣れなきゃ意味がないと思ってます。最終的に引舟の中に大きい鮎がたくさん入っていることが重要なんです」
だから小澤にあらためて訊ねてみた。釣れる竿ですか、と。
「釣れる竿だと思います」
小澤は迷いなく即答した。