2022/12/14
メンテナンス
電動リールの日常メンテナンス
波飛沫が舞う船の上は、精密機械であるリールにとって非常に過酷な環境です。塩やコマセで汚れたまま放置すると、塩の結晶化による固着や、各部にサビが生じる恐れがあります。特に電動リールはバッテリーとつなぐワニ口やコネクターが錆びてしまうと、まったく動かなくなることも考えられるので、釣行後はできるだけ早くのメンテナンスをおすすめします。
メンテナンスといっても、日常に行うレベルであれば大掛かりなものは不要。しっかりと塩気と汚れを落とし、ハンドルやレバーといった可動部分や、回転軸、ウォームシャフト周りの必要箇所にオイルやグリスを注油するだけで十分です。電機部品の故障の原因となるため分解しないでください。
リールを洗浄するにあたっては、必ず竿からリールを外し、ケーブルも外して完全に冷ましてから行ってください。また、電源がONのまま洗浄しないでください。洗浄はラインを巻き込んだまま行っても問題ありません。一度完全にラインを巻き込むとスプールとレベルワインドの連動にズレが生じ、実釣の1投目は少しラインが出にくくなることがありますが、その後は快適にお使いいただけます。
手順1 リール本体の洗浄
船釣りは飛沫やコマセなどでタックルに汚れが付着しやすい釣りです。まずは流水でリール本体に付着した塩分と汚れをしっかり洗い流します。レベルワインドやクラッチ周辺などの可動部は特に汚れが溜まりやすいので、念入りに汚れを落としましょう。洗浄はあくまでシャワーなどの流水で行い、水の中に漬け込まないようにしてください。
洗浄時は、必ずドラグを締め込んだ状態で行ってください。ドラグを緩めたまま水をかけると、内部に水が侵入する恐れがあります。洗浄は水道水で行うこと。温水で洗浄するとグリスが流れてしまうことがあるので注意しましょう。
汚れが溜まりやすい箇所は、流水で10秒以上洗浄することをおすすめします。
1.ドラグを締め、コネクターキャップを閉じる
ドラグを締め、コネクターキャップを閉じて内部に水が入らないようにします。
2.流水で大まかに全体を洗う
シャワーなどの流水で大まかに全体を洗います。これは大まかに汚れを落とすとともに、結晶化した塩分やこびりついた汚れを浮かせるのが目的です。水圧は強すぎないよう注意してください。
3.スポンジで全体の汚れを落とす
汚れが浮いたら、水をかけながら柔らかいスポンジで全体の汚れを落としていきます。特に汚れや臭いが気になる場合は長めに洗ってください。
4.デジタルカウンター面の汚れを落とす
ここから各部の洗浄に入ります。まずは、デジタルカウンターの表面に付いた汚れをサッと流す程度に洗います。
5.ハンドルやクラッチの作動部を洗浄する
ハンドルやクラッチ、テクニカルレバーの作動部を動かしながら、10秒以上洗ってください。
6.ハンドルノブの可動部を洗浄する
ハンドルノブの可動部は特に塩分が固着しやすい箇所なので念入りに洗浄してください。
7.サイドプレート面の汚れを落とす
ハンドルを回転させながらいろんな角度から流水をかけ、サイドプレート面を洗浄します。
8.レベルワインド部の汚れを落とす
ハンドルを回転させながらレベルワインドを動かし、流水で10秒以上洗浄します。レベルワインド部は汚れが付着しやすい箇所なので念入りに塩分と汚れを落としてください、狭い部分なので歯ブラシがあると便利です。
9.リールフット部の汚れを落とす
リールフット部も汚れが付着しやすい箇所です。流水をかけながら10秒以上洗ってください。
10.スプール面を洗浄する
ハンドルを回しながらラインに流水をかけ、汚れや塩分を洗い流します。ラインの隙間に海水が入り込んでいることもあるので、10秒以上かけて念入りに洗浄してください。
11.リール内部を洗浄する
ハンドルを回転させながらリールの内部を洗浄し、最後にリール全体に水をかければ本体の洗浄は完了です。
手順2 ケーブルの洗浄
ケーブルはリール本体とバッテリーをつなぐ血管のようなもの。ワニ口やコネクターがサビると、巻き上げや誘いといった電動機能が使えなくなることがあります。導電部分に付着した塩分と汚れは、特に念入りに落としましょう。
1.ケーブル全体の汚れを落とす
ケーブル全体の汚れを落とします。海水中の不純物が付着している場合があるので、流水でしっかり洗浄してください。
2.ワニ口とコネクター部分を洗浄する
バッテリーの端子を挟むワニ口と、リール本体に接続するコネクター部分を洗浄します。ここがサビてしまうと通電不具合が起こる可能性があるので、しっかり塩分と汚れを落としてください。「リール本体の液晶画面がしない」「点灯と消灯を不規則に繰り返す」といった症状が出たときはケーブルを交換、またはリールとケーブルを修理にお預けください。
手順3 脱水&乾燥
洗浄が終わったら乾燥作業に入ります。乾燥は「日陰での自然乾燥」が鉄則です。早く乾かそうとドライヤーで熱風を当てたり直射日光で乾燥させると、内部の蒸れや塗装の退色につながるので避けるようにしましょう。また、スプレータイプのエアダスターで水気を飛ばすこともおすすめしません。
リールに残った水滴は柔らかい布で拭き取り、その後は屋内か風通しのよい日陰で乾燥させるようにします。このときカウンター内部に曇りや水滴を角にした場合は、電源を入れずに修理を依頼してください。
乾燥時の注意点は、必ず水抜き穴を下に向けることです。水抜き穴とはその名のとおり、本体の内部に入り込んだ水を外へ排出するための穴なので、ここからきちんと水が抜ける状態で乾燥させるようにしてください。
1.リールの水気を飛ばす
水洗いが終わったら、ハンドルやクラッチの作動部を動かしながらリールを上下に振って水気を飛ばします。このときエアダスターは使用しないでください。
2.柔らかい布で全体の水気を拭き取る
柔らかい布を濡らし、軽く絞ってから表面に残った水滴を拭き取ります。ケーブルも同様に水滴を拭き取ってください。
3.ドラグを緩め、コネクターキャップを開ける
洗浄前に締めておいたドラグを緩め、コネクターキャップを開けます。
4.風通しのよい場所で陰干しする
![24.jpg 24.jpg](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2022/221214_v1/img/24.jpg)
水抜き穴を下にして風通しのよい場所で陰干しします。水抜き穴はリール本体の下部にあります(右写真の○印部分)。リールフット部を垂直に立てると水が抜けきらないので注意してください。
手順4 注油&グリスアップ
リールが完全に乾いたら、必要箇所にオイルやグリスを差します。オイルとグリスは箇所やパーツによって使い分けます。リールの性能を最大限引き出すために、オイルとグリスは必ずシマノの純正品をお使いください。注油とグリスアップの箇所は機種によって異なるので、お手持ちのリールの取扱説明書にて確認してください。
注意点として、ドラグや水抜き穴には注油しないでください。ドラグ部に注油するとドラグ力の低下につながる恐れがあります。
注油後しばらくリールをお使いにならない場合は、ケーブルを外し、コネクターキャップを閉めた状態で保管してください。
![25.png 25.png](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2022/221214_v1/img/25.png)
必要なもの
「リールオイルスプレー」「リールグリススプレー」を使用します。このほかに余分なオイルを拭き取るための綿棒、ティッシュやキッチンペーパー、ウエス等をご用意ください。
1.ウォームシャフトをグリスアップする
![29.jpg 29.jpg](/ja-JP/content/fishingstyle/article/2022/221214_v1/img/29.jpg)
ハンドルノブの回転部分にグリスを注入します。グリスアップ後は綿棒などで余分なグリスを拭き取ります。なお、小型機種の一部において、レベルワインド部がカバーされていてグリスを注入できないものもあります(○印)。
2.ウォームシャフトへグリスをなじませる
ハンドルを回してウォームシャフトへグリスをなじませます。
3.ウォームシャフトの両端にオイルを差す
ウォームシャフトの両端にオイルを差します。ここでも余分なオイルを綿棒で拭き取ります。詳細な注油箇所は取扱説明書を参考にしてください。
4.クラッチレバー部分にオイルを差す
クラッチレバー部分に注油し、余分なオイルを拭き取ります。
5.注油穴キャップBを外す
クラッチレバーを動かしてオイルをなじませます。
6.本体外部の固定ネジ部分に注油する
本体外部の固定ネジ部分にオイルを差します。これはネジのサビを防ぐのが目的です。ここも余分なオイルをウエスなどで拭き取ります。
オーバーホールについて
以上の簡単なメンテナンスでも塩噛みによる固着やサビを防ぐことができ、滑らかな回転が維持されますが、使い続けているうちにギアなどのパーツは摩耗してきます。
快適にリールをお使いいただくためにも、一般的な釣行ペースなら1年に一度、頻繁に釣行される方なら半年に一度程度、定期的にオーバーホールに出されることをおすすめします。また、うっかり海水に水没させてしまった場合も、オーバーホールに出していただくほうが安心です。
詳しくは 0120-861130 に問い合わせていただくか、シマノホームページをご覧ください。
シマノカスタマーセンター
https://www.shimanofishingservice.jp/
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