桜が開花し、渓流釣りシーズンもいよいよ本番を迎えます。本流釣りやテンカラ、ハエ釣りなども含めると渓流釣りも多岐にわたりますが、王道といえばやはり小継竿、中継竿を用いたスタイルでしょう。

ひと口に小継竿といっても、チューブラー穂先やソリッド穂先、先調子や本調子など様々。フィールドや用途に対応できるよう、シマノからも多くのアイテムがリリースされていますが、見た目だけで性能や用途がわかりにくいことは確かです。

今回は源流から本流まで釣りこなす渓流釣りのオールラウンダー・井上聡さんに、アイテムごとの特性とベストシチュエーションを解説していただきました。井上さんのインプレッションを参考に、ベストな1本をチョイスしてください。

源流域でおすすめの竿

大石が転がり、頭上に木々が覆い被さる源流域は竿を振るスペースが限られ、時として仕掛けを短くしたチョウチン釣りも多用されるフィールドです。大きな淵から狭い深みまでポイントは様々で、1本でいくつもの攻めが可能な機動力のある竿が望まれます。

場所によってはハードな遡行を強いられることもあるので、仕舞寸法が短くコンパクトな竿が使いやすいでしょう。

●源流彩 (げんりゅうさい) NY

スパイラルX、アーマーコートで各部を強化。尺クラスのイワナの疾走を止めて引き抜く源流のスペシャルモデル。

「非常にパワフルな竿です。手元から胴にかけての張りが強いため軽く振っただけでは先調子に思えますが、胴の粘りで魚の走りを止め、一気に勝負を決められる“剛の抜き調子”です。仕掛けも思ったポイントへ正確に入ります。重めのオモリとの相性がよく、ノンズームながらチョウチン釣りにも強い。頻繁に節を出し入れするチョウチン釣りではブランクスの塗装膜が傷みがちですが、丈夫なアーマーコートがしっかり保護してくれるので安心ですね。5.3m、6.1m、7mは開けた渓流域での線の釣りもこなせます」

●渓峰 源流 (けいほう げんりゅう) ZF

しなやかで高強度のタフテックソリッド穂先を採用し、デイパックにすっぽり入る仕舞寸法35cmの超小継モデル。

「コンパクトな仕舞寸法ながら、最長で4.5mまでのアイテムがあります。すべてに3段ズームを採用しているため、ポイントへの対応力はかなりのものです。特に“ひとまたぎ”と呼ばれる細い流れや小さな沢では重宝しますね。調子は硬めでシャキッとしており、小さなポイントにも仕掛けを打ち込みやすいです」

●七渓峰 (しちけいほう) ZK

多様な変化を見せる源流域を効率よく攻められる7Wayズームを採用した小継渓流竿。

「この竿の特徴は何と言っても7段ズーム。滝壺からちょっとした棚まで、大小のポイントが次々に現れる源流というフィールドにおいて、この機動力は何物にも代えがたい武器になるはずです。手元が非常にしっかりしているので、尺イワナでも楽に抜けます。この竿はチョウチン釣りが得意中の得意ですから、水際まで背の高い草が生い茂ったボサ川など、遠くからアプローチしなければならない場所でも使いやすいですよ」

7段ズームが大小、源流のさまざまなポイントに対応します

上流〜渓流域でおすすめの竿

上流域は落差の大きい場所があれば、ある程度の筋を流せる場所もあります。岩に囲まれた棚など狭いポイントでは「点の釣り」、筋を攻めるときは「線の釣り」と、ポイントに応じた攻め分けが必要です。

一般に点を撃つ釣りではソリッド穂先の先調子、線を流す釣りではチューブラー穂先の胴調子が向くとされていますが、シマノの渓流竿はある程度の指向性を持たせつつも、点と線の双方に対応するアイテムが大半です。

●翠弧 (すいこ) ZL

シマノが提唱する小継竿カテゴリー“本調子”のハイエンドモデル。高感度のソフチューブトップを採用。

「負荷に応じて曲がりが手元へ下りてくる本調子モデルは、この翠弧と弧渓の2アイテムになります。翠弧はアユ竿に使われているウルトラマッスルカーボンを採用していることもあって、振った感じは先調子と思えるほど軽く、シャンとしています。穂先がしっかりしていて魚を掛けると曲がりが胴へ入ってくるあたりは、やはり本調子ですね。本来は線の釣りに向く調子ですが、抜きのレスポンスとコントロール性に優れているので、滝壺や落差のある場所をテンポよく攻めるときにも使いたいですね」

●弧渓 (こけい) ZM

負荷に応じて素直に曲がり込み、竿全体のバネで抜き上げる本調子。軽量チューブラー穂先トップストップⅡを採用。

「穂先が強くて、引かれるほどに曲がりが下りてくる、これぞ本調子という竿です。翠弧よりも粘りが強調された調子で、細い糸を使っているときでも安心ですね。タメが効く竿なので、やや開けた場所での線の釣りにおすすめです。このような場所は尺モノも出ますから、粘り強い本調子が活きてくると思います」

●鎧峰 (がいほう) NF

ブランクスに厚膜塗装「ダブルコート」を施し、節を頻繁に出し入れするチョウチン釣りで活躍する硬調オールラウンダー。

「すべての操作においてレスポンスのよい竿です。車でいえばスポーツカー。ハンドルの遊びが少なく、操作がクイックに行えるんです。振った後のブレの収束が速いため仕掛けを安定して流せますね。ノンズームで線の釣りも得意ですが、どちらかといえば点の釣りに向いているように思います。特に小さなアタリをとらえるチョウチン釣りでは、この竿の持ち味であるレスポンスが際立ちます。ダブルコートを施した表面塗装の強さも見事ですね。4.5m、5.4mは源流域でも活躍するはずです」

●渓峰尖 (けいほうせん) ZW

超先短設計カミソリTOPを採用した新感覚の先調子小継竿。喰い込みのよさと高レスポンスを両立。

「短いソリッドとチューブラーを合わせたカミソリTOPを採用した新感覚の先調子竿です。ソリッド穂先は喰い込み性能に長けている一方で、あまり長くすると重量面で不利になります。ソリッド部分を短くしたカミソリTOPは、軽さと喰い込み性能が両立しているのが特徴。持ち重りが軽減されたことで、テンポよくポイントへ仕掛けを打ちながら釣り上がっていくスタイルにピッタリです。ソリッドとチューブラーの良いところ取りをした竿なので、点の釣り、線の釣りの双方に対応します」

●天平 (てんぴょう) ZZ

3WAYズームとワイドなラインナップで、国内河川のほとんどをカバーするコストパフォーマンスモデル。

「クセのない先調子は、渓流竿の手本ともいえるものです。狙った場所へ仕掛けを振り込みやすく、流す際も目印が躍りにくいので、初心者に自信を持っておすすめできます。使いどころを選ばないオールラウンダーですが、3WAYズームで川幅の狭い場所にも対応できるので、私は開けたエリアよりも大石の転がる上流域で使ってみたいです」

●ホリデー小継 (こつぎ) ZT

初心者でも使いやすい軽量先調子&ズーム搭載モデル。自然渓流はもちろん管理釣り場でも活躍。

「素直な先調子で、振り込みや流しの基本をきっちり学べる竿です。入門用としては十分以上の性能を備えています。ズームを搭載しており、川幅が狭く落差のある上流域から開けた渓流域、管理釣り場でも使いやすい竿ですね。4.4m、5.3mは源流でも活躍します」

●テクニカルゲーム翠隼 (すいしゅん) ZI

柔軟さに優れたビビッドトップⅡを採用し、弾くようなショートバイトを喰い込ませるテクニカルモデル。

「この竿の特徴は、何と言っても柔軟なビビッドトップⅡですね。特にゆったりした流れや水深のある場所など、アタリがぼやけがちなポイントで有効。通常ならばモヤッとしたアタリでハリを吐き出されるような状況下でも、違和感を与えにくくスムーズに喰い込んでくれます。穂先は柔軟でも穂持ちから下に張りがあるので、合わせもしっかり効きますね。多くの釣り人が攻めるポイントの、学習を積んで賢くなった魚にうってつけです」

●中継 渓峰 (ちゅうつぎ けいほう) ZL 硬硬調

堰堤や滝壺といった大場所に対応

小継竿を強化した先調子の大場所攻略モデル。3WAYズームを採用し、大堰堤や大淵、滝壺も射程内に収める。

「手元から胴にかけてがしっかりしていて、かなりの大物が獲れる竿です。強めの穂先は重めのオモリを使っても不要に沈み込まないので、コンセプトどおり堰堤下の白泡や滝壺狙いで活躍してくれると思います。硬硬調には65-70-75と70-75-80の2アイテムがあり、いずれも渓流竿としては長めなのですが、大場所ではこれでないとポイントへ届かないこともあるので、1本持っておくと心強いですよ」

開けた渓流域でおすすめの竿

開けた渓流域では川幅もある程度広く、頭上の障害物も少ない場所がほとんど。入川も比較的容易なので、細身の中継竿がよく使われています。

このようなエリアは落差が小さく、仕掛けを流す筋も長いため、線の釣りが中心になります。キレのある先調子よりも、タメの効く胴調子竿が使いやすいでしょう。

●原点流 (げんてんりゅう) NL

郡上竿の抜き調子をシマノの技術で磨いた中継モデル。ヤマメ、アマゴからサツキマスまで1本で対応。

「穂先が硬く、胴に入りやすい調子は、職漁師が受け継いできた郡上竿の流れを汲むものです。細身&肉厚設計で、小型は穂先であしらい、大物が掛かるとグッと曲がりが胴に入って引きをいなす独特の調子ですね。比較的開けた場所の水量のあるポイントで、掛けたら一歩も動かず抜くといった釣りに適しています」

●中継 渓峰 (ちゅうつぎけいほう) ZL 硬調

本流竿から派生した「広域を流す釣り」に対応する中継モデル。2WAYズームを備え、小継竿では届かなかった筋も探れる。

「硬硬調は堰堤や滝壺などの大場所攻略に特化したアイテムですが、この硬調は2WAYズームを採用した線の釣りを見据えたモデルになります。細身の中継設計、そして70-75、75-80という長めのラインナップは“渓流以上、本流未満”の場所で威力を発揮します。小継竿と本流竿の間を埋めるアイテムと考えていただいてよいでしょう。しっかりとした穂先は重めのオモリとの相性もよく、小継竿では届かない遠くの筋や、水深があって流れの押しが強い場所で活躍してくれるはずです」

●テクニカルゲーム蜻蛉 (かげろう) ZL ピュアドリフト65-70

細糸によるスリリングなやり取りを楽しめる軟調子竿。0.08~0.1号の超極細糸にも高い次元で対応。

「細仕掛けに対応する極軟調子で、渓流竿としてはやや特殊なアイテムといえます。店頭で振っただけではダワつきを感じる方もいるかもしれませんが、仕掛けをセットして実際に釣り場で振ってみるとシャンとしているし、目印の踊りもピタリと止まるのには驚きました。エサを自然に流せるうえ、穂先が軟らかいためか魚が長くエサを咥えてくれるようです。掛けた魚をバンバン抜くほどの腰はないので、完全に線の釣りに寄った竿です。開けたポイントで賢いヤマメやアマゴを狙うときに使っていただきたいですね」