寒極まるサクラマスジギングで、ずっと温めてきたセミロング EP3

SIXRIDE
  • JIGGING
INSTRUCTOR

山本 啓人Hiroto Yamamoto

エピソード3 可能性を消し込む、ということ

プロト、プロト、プロト

SIXRIDE

これらは140gのサンプルの一部。全て似ているようで違う。また150gも作ってみたりした。

音を上げるくらいのプロトを作ってやる、と意気込み、次はどんなパターンを振るかと、山本氏の脳内設計を引きずり出しては現物のダメ出しと泳ぎ出しを求めて各所にサクラマスに通う。
そんな日々を過ごしていくうちに、あっという間にジグの山ができた。
どれも同じように見えるかもしれないが、私たちにとってはどれも違うジグだ。

例えばこれは要素は同じだが、厚みが違うサンプル。
ヌケは良くなったが、飛び過ぎたり、制御が難しくなったサンプル。
強めにしゃくるユーザーも多いサクラマスシーンには向かないと判断し、ボツ。

作り手だけが釣れるモノは、真意じゃない

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140gのプロトたち。似ているようで違う。最終仕様はこの中にはいない。私たちだけが知り、「まだ出せない」と判断した子たちだ。

ものづくりの初期段階は、夢や希望を含め無限の可能性が広がっているわけだが、釣種ターゲットを絞ったり、使用環境といった周辺条件、あるいは実際に当たり付けとなるサンプルを作って実釣をしてみたりしていく中で、半自動的に選択肢は絞れてくる。

恵山で描いたセミロングジグへの無限の可能性も、サクラマスシーズンを過ぎ、青物、あるいは底物なども視野に入れた日々の実釣を経て、24年の夏にはある程度落とし所(といえばいささかネガティブかもしれないが、発散が収束に向かう=製品ローンチが近づくという点では、どの製品も通る道であるし、ポジティブであるともいえる)が見つかってきた。

山本啓人が重要視しているのは、ユーザーが咀嚼可能なマニュアル感であると、幾年も横で見てきて感じている。

例を上げると、シックスライドの初期サンプルの幾つかのパターンには、非常にピーキーなものがある。
条件(ユーザー、潮、水深、タックルバランス)が揃えば爆発的な釣果を生み出すこともあった。
疑似餌としての一つの正解ではあるとは思うが、しかしながら山本氏はそれを良しとはしなかった。

「作っている側というのは、常にその製品のゼロ地点から伺ってきたのだから、誰よりも使い方を知っているのは当然で、重要なのは今日その日初めて使った人でも釣れるものづくり

そういった理念のもとでジグを作っていった。

山本啓人の場合

SIXRIDE

お尻のラインにはこだわった。少しずつ変化させていき、いちばん良いピークラインを探した。

オシアのジグ、今回のシックスライドの時もそうだが、山本氏のジグ作りは基本的には削っていく方向で、泳ぎを出すことが多い。種々の理由はあるにせよ、金型およびデータへの再現性が高いのがメリットだ。

ただデメリットとしては、「戻れない」といった所にある。
或いは、目標重量が決まっている為、「削ることができる体積に限りがある」。

いわばジグとのチキンレースだ。
山本氏はこのチキンレースが上手すぎる、と傍目で見ていてそう思う。
あと1削り2削りで台無しになりそうな、そんなギリギリを攻めてくる。

たまに勝負するが、大抵の場合私はこのチキンレースには負ける。

「ちょっとしゃくってみて」
「ん~、頭削りすぎたな(笑)」

などと見事に言い当てられる始末。

技術を盗んでやろうと思うが、王道というのは中々存在しない。
ただただ、丁寧かつ繊細。
ヤスリを持つ手の力の入れ加減、これ以上やったらジグが死ぬという感性。
それをジグの種類、性格に合わせて時には大胆に、時には繊細に答えに近づいていく。

そこに青森、北海道と長年サクラマスシーンやユーザーを見てきた上での「この感じならみんな使いやすいと思ってくれるし、サクラマスが釣れる動き」というニュアンスをかけ合わせながら、徐々にシックスライドは形になっていった。

チャートになんて表しきれない

SIXRIDE

よく、シマノのジグは5角形のチャート図で表されるが、もしかしたらシックスライドのプロトモデル後半は全部同じような図になるかもしれない。

でも0.5とかそういうキリや程度の良い単位では表すことができないような些細な差だったり、実際に使ってみた「使用感」的な官能的評価(一般化できない何か)も考えながら作っている。
最後はたった5つのパラメータで、分かりやすさもかねて表すことにはしているのだが、ただ、作っている段階では、それ以上の細かいところの方が悩みのタネだったりする。

あとひと削りで良くなるかもしれない、でもそれ以上削ると、てんでダメになることもある。

そうやってジグの山を築いていった。
だからこそ、90点のジグと90.1点のジグができた時に、素直に後者を選ぶことができる。

それが可能性を消し込む、ということだ。