操作性を維持したまま両立させたい性能がある
2023年9月下旬、松田克久は富山県庄川にいた。天然遡上中心のフラットな川相。引き釣りにうってつけのフィールドで手にするのは新しいスペシャル競SC90だった。
先調子の鮎竿の強みは操作性である。しかし調子を操作寄りにシフトすればするほど突っ張り感が増し、引きにくさやタメにくさ、抜きにくさといったマイナス面が頭をもたげてくる。腕に覚えがある釣り師なら“ピーキー”な調子は好みかもしれないが、オールラウンド性能は犠牲にせざるを得ない。
絶妙に胴に入り、タメがきく 広角引き釣りも思いのまま
「先調子は釣っていて軽くてラク。一日の釣りの中で竿を頻繁に動かすので、実際の自重のグラム数じゃなくて持ち重り感が少ないとあらゆる操作が快適にできます」
松田が得意とするのはオトリを横方向に展開させて探る広角引き釣り。先調子竿をシモ竿で構えると通常はリスクも大きいが、そこをあえてSCで釣るのは、オトリの鼻をピンセットでつまむような操作性を維持したまま、引きやすく、そして掛けた後ものされにくく進化しているからだ。松田は言う。
「本当のピンピンの先調子じゃなく若干あそびがある。今までは#1~2を硬め、#3を軟らかめにしていたんですけど、今回は#1~2もしなやかになり#3~4へとうまく力が働く。だから引きやすい。前モデルは掛かってから胴に“ロック”がかかって抜きにくい、のされるという話もあったんですけど、絶妙に胴に入る調子に変化しましたね」
広角に構えて竿先より沖にオトリが出ると、オトリのなじみが悪くなったり浮きやすくなってしまう。
先調子はここでテンション調節が瞬時にしやすい利点もあるが、先端部のチューニングが施された新しいSCはこのような操作がさらに容易になった。なじませたオトリをさらに沖へ展開させ、対岸ヘチの竿抜けスポットすら狙うことも可能だ。