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深渓のネイティブは烈暑重畳にも黙さず

こんにちは!サポートアングラーの矢野元基です。
ソルトでのサクラマス釣りが終わると同時に涼を求めて渓へ足を運ぶのが矢野家のルーチン。
7月末に日高山脈の渓流へスペシャルゲストと妻の3人でオショロコマを狙いに行った記録です。

オショロコマという魚について

今年も日本列島を猛暑が襲い、北海道も北国らしからぬ暑さで連日の真夏日が続く7月末。道東ではついに40度を超えるなど衝撃的なニュースも飛び込む。ふと、高水温に弱いオショロコマの存在が気になった。

オショロコマは日本では北海道にしか生息しない冷水性のネイティブトラウトで、北海道でも高所や知床など一年を通し低水温の河川に生息している。アイヌ語の「オソルコマ(尻・それによって・泳ぐ)」に由来していると言われ、なんとも愛らしいネーミング。そして、その見た目も朱点鮮やかでカラフルなカラーリングにお目目クリクリ、名前に劣らずチャーミング。

芸術的なビジュアル

トラウトであるため降海型も存在するが、ヤマメが降海すると「サクラマス」と呼ばれるのに対し、オショロコマが降海すると「ドリーバーデン(英名)」というとてもカッコいい名前で呼ばれる。どうやら、ドリーバーデンの語源は英国の歴史小説の中に登場する乙女の名前であり、活発かつ純真無垢で英国が理想とする乙女像を象徴するドリーバーデンはレッドドットの衣装を身に纏い、若い女性のファッションアイコンにもなったそう。

そんな洒落た見た目のオショロコマは純真無垢という表現がピッタリな好奇心旺盛でヒットするまで何度もルアーを追う魚だ。アメマスと似て上下の動きに対し好反応を示すが、トラウトには珍しく遊泳力が弱く捕食も苦手だ。鈍臭くミスバイトをする姿もまた愛おしい。ヒットするまで何度もルアーを追うので、釣れるに任せて釣り過ぎるのもアングラーとしての情がない。ほどほどに釣って眺めるというくらいがちょうどいい。もちろん、トレブルフックを用いて釣るなどはしたくない。私はシングルのバーブレスフック1本で狙うことにしている。

ゲストと深山へ、そこはアブの楽園でした

今回、オショロコマ狙いで日高山脈の山岳渓流へ同行したのは、かの有名なアクロバット飛行隊のブルーインパルスで4番機を務めていらっしゃった手島孝さん。4番機は空にスモークで描かれたハートの中心を射抜くポジション。年齢も近いことから仲良くさせていただいており、九州出身でオショロコマを釣ったことがないとのことで、是非とも射抜いてもらいたい。

嬉しい2ショット

前日はまとまった降雨があり、濁りが少し心配だったが、クリアな水質で問題なさそうだ。まだ雨が降っており、川の状況は良さそうだが、駐車の際に車の周りを飛び回っている大量のアブが気にかかる。どうやら車から発する熱と二酸化炭素に誘われて集まっており、100や200という数ではない・・・。想像を絶するレベルだった。ハッカ油とシーブリーズを1:4の割合で調合した特製の虫除けを浴び、森林香を炊いて出陣。

3人がそれぞれ、100匹以上のアブを身に纏い入渓する。アブなどの吸血する虫は黒や赤などの色に顕著に寄ってくるため、夏場に川釣りをする際はウェーダーを着用していない胸周りより上に黒のアイテムを着用しないよう普段は意識していたのだが、今回は黒のサングラスをチョイスして失敗。早速オデコを刺されてしまう。手島さんは黒と赤を基調としたウェア、ベスト、キャップのため、かなりの注目を浴びているようで辛そう。妻は淡い色主体のコーディネートのため、そこまで集られてはいない。

ウェーダーを貫通して刺すことはない
妻には寄りつくアブの数が少ない

アブの楽園はオショロコマの楽園

小雨で気温は24度でアブの数と活性はすこぶる高いが、魚の方はどうだろうか。水温は感覚だが10℃以下。普段はソルトのビッグゲームの釣行が多く、川釣りの経験があまりない手島さんへ少しレクチャーしキャスト。一投目からチェイスがあり、すぐに釣れた。あまりにも簡単に釣れて驚きの様子。どんなアングラーでも初魚種は嬉しいもの。大量のアブを身に纏いとても大切そうに写真を撮っている。オショロコマの魅力は魚に興味のない人が見ても美しいと思うだろう色彩だ。初めて生のオショロコマを見て触れて、大変嬉しいとの感想で私も喜ばしい。日本が誇る大空の英雄もかわいらしいオショロコマに笑顔した。これが釣りの魅力だろう。

手島さんのタックルはカーディフNX S54ULにカーディフXRC2000SHGをセットし、ルアーはリフレイン50HSと4gと2.5gのスプーンにマイクロバーブのシングルフック1本を装着したセッティングでコンスタントに釣果を重ねる。一通りポイントを打ってもらい、25㎝ほどの見事な良型も射抜いた。普段、ヘビーなタックルを用いた釣りをしてきたがロッドはキャスト精度と操作性がよく、リールとのタックルバランスが逸品で渓魚の繊細な釣りがとてもし易いと好評で、私も同意見だ。そして、相変わらず手島さんと私の周囲は「アブ柱」ができており、随所を射抜かれている。

大空の英雄がアブに囲まれ真剣に撮影

具体的な釣り方について

妻と私はカーディフストリームプレミアムS54 SULと S54ULにリフレイン42Sを使用。フロントフックは外し、フックは標準で装着されているモノより2番手ほど大きいシングルバーブレス1本のみのセッティングとした。オショロコマは冒頭で触れたように「遊泳力が弱い」ため、淵や流れの弛みに群れる。また、捕食が下手なため、ミノーに関しては早巻きやルアーを一直線に引く棒引きよりも、リフトアンドフォールやミノーの側面に水の流れを当てつつのドリフトさせてからの巻き始めでターンした際にバイトが多い。直ダウン(流れの下流方向)に投げてゆっくりと巻いてくるのもよい。岩陰など、どこからともなく現れて、次々にバイトしてくる。小さく柔らかい魚体のため強いフッキングをせず、巻き合わせで充分だ。

シックなタックルの組み合わせが気に入っている
水中では見事な保護色となる

リフレイン45Sの特性として急流のポケットや細流などルアーを引いて魚へアピールするリーチが短い小場所を攻め切ることに主眼を置いている。山岳渓流や竿抜けポイントを丁寧に探るにはもってこいだろう。また、塗装に関してはインジェクションの量産品とは思えない繊細かつ美麗な仕上がりで、作り手が「トラウトフィッシングの世界観」への高い拘りが垣間見られ、美しい渓魚と大変マッチする。特にマッドなカラーリングに柔らかな温もりを感じる。これは写真では伝わらないので、是非手に取って見てほしい。高度な塗装の質感を表現するため耐久性が少し弱いが我慢できるレベル。むしろ、塗装を痛めないように丁寧なキャストを心掛け、スキルアップに繋がるかもしれない。

ルアーの塗装が剥げない使い方も腕のうち?
シングルバーブレス1本で十分

最後に

今年もより一層暑い夏となったが、日高山脈の深渓は悠久の時を常に低水温を維持し、オショロコマ達もいつものように元気な姿で安堵した。手島さんも美麗で無垢その姿に心和んだことだろう。

思えば、オショロコマという魚は、苫小牧と名寄、下川でヤマメとニジマスばかり釣っていた幼い頃の私にとって憧れの魚だった。ビデオテープで録画されたテレビの釣り番組で見た里川でオショロコマを釣る映像。ナレーションは「牧場の小川のオショロコマ」だった。その美しさに心奪われ、文字通りテープが擦り切れるまでその映像を観た。口を開けば「牧場の小川のオショロコマ」と呪文のように唱える私に両親も困ったに違いない。小学生になった頃だろうか、キャンプで訪れた知床の川で初めて釣った時の感動を今でも昨日のように思い出せる。当時は知床にしかいない魚だと思っていたこの魚がいつまでも元気に暮らせる環境が整っていることを願わずにはいられない。

そして、お決まりの遠征飯のコーナー。 くろ牛(平取町)和牛くろべこスペシャルステーキ

北海道三大和牛と評されるのは「ふらの和牛」、「白老牛」、「びらとり和牛」。なかでも、びらとり和牛は油分が他の二つと比べてもあっさりとして食べ易い。そんなブランド和牛を低価格でいただける大変お勧めのお店。なかでも、和牛くろべこスペシャルステーキはカットステーキが300gと中々のボリューム。甘めのソースとステーキが至福を約束してくれる。是非ともライスは大盛りで、おかわりもしてほしい。窓際席の景色もよくご褒美飯にぴったり。

妻いわくびらとり牛は札幌でも珍しいようだ

TACKLE & EQUIPMENT タックル&装備

使用タックル

<矢野元基のタックル>
ロッド:カーディフストリームプレミアム S54UL
リール:ステラC2500SXG
ルアー:カーディフ リフレイン42S 各色
ライン:ハードブル+8 0.6号 シングルバーブレスフック1本
リーダー:ナイロン6ポンド

<矢野愛美のタックル>
ロッド:カーディフストリームプレミアム S54SUL
リール:カーディフXR C2000SHG
ルアー:カーディフ リフレイン42S 各色
ライン:ハードブル+8 0.6号 シングルバーブレスフック1本
リーダー:ナイロン6ポンド

<矢野元基のタックル>

<着用アイテム>

矢野愛美のタックル

※記事内で紹介されている製品は、旧モデルの可能性がございます。

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