群馬県の南西部に位置する上野村。村内を流れる神流川は澄んだ清流を好むヤマメやイワナが生息しています。上流の本谷には「上野ダム」がありますが、長野県にある「南相木ダム」との間にて揚水発電を行っているため、直接放水による影響は受けにくい河川です。

当日は4月にも関わらずボタン雪が舞っていました。周囲の木々を覆う雪。迫る谷が魅せる幻想的な世界。しばし、素晴らしい光景に目を奪われました。川の駅・上野の中にある上野村漁協へ立ち寄り、釣り場地図をいただきました。ここはC&R区間(キャッチ・アンド・リリース区間)や毛鉤専用区などが設けられているので、エサ釣りができる場所を入川前に把握しておくことが大切なのです。

●川の駅・上野

なお、つり券は漁協事務所前の「自動つり券販売機」で24時間購入可能です。また、漁協の旗がある民家でも購入できますので、必ず購入してから釣り場へ向かいましょう。

●自動つり券販売機

川沿いの道路を上流に向かって車を走らせ、道路脇の駐車スペースを見つけて停車。すぐ脇にある踏み跡を辿って河原に降りました。深い淵を見つけ、その前でタックル準備。竿は川幅に適した弧渓(こけい)ZM[H56]

●弧渓(こけい)ZM[H56]

この竿は5.2mと5.6mの両方使えるズーム機能を備えており、やや胴にかかる調子。今回の河川のように開けた渓流域で、流れの筋を長く流すことやテンポ良い釣りの両方で使える優れ物です。Hは硬い調子なので、ポイントを荒らさず一気に引き抜くことができ、そのパワーは従来よりもUP。更に軽量化が施されており、私にとって頼もしい相棒です。

仕掛けは天井糸0.6号、ライン0.2号、ハリ3号。ラインに取り付けた目印は3ケのシンプルな物。エサは事前に採取した川虫の「キンパク」。

●キンパク

水深のある淵への流れ込みへと軽めの2号ガン玉1個を付け、仕掛けを水流に馴染むようにエサを沈めると目印が止まるようなアタリ。すかさず合わせると17cmほどの小型が釣れました。

次に流れの筋を変え仕掛けを馴染ませると、また同サイズが竿を曲げてくれました。活性の低い春先は粘ることも大切。オモリを2ランクほど重くして丹念に底付近にエサを這わせると、ギラッと水中で良型が反転。バラシましたが、思惑通りでした。最初から魚影の濃さに驚かされながら、次のポイントへと移動。

ここは木々が上部に覆い被さるようなところ。仕掛けを枝に絡ませないよう注意しながらサイドから正確に投げ入れ、岩盤沿いに仕掛けを這わせると、一瞬、目印が水中に沈むアタリ。重みを感じた良型に対して、上部の枝をかわしながら穂先を後方にグッと倒すと、23cmを超すヤマメがタモに収まりました。美しいパーマークを纏った凛々しい顔つきはいいものです。

落ち込み手前に岩盤があり、その前がえぐれて深いポイントでは上流からの流れを利用して、深い部分へエサを自然に沈ませました。すると岩盤の深みから良型の影。警戒心が強いのか引き返しました。一投目では掛からず粘ることに。オモリを軽くして位置を上げ、流す筋を変えて試行錯誤。

しばらく攻めた結果、やっと針掛かりしたのは美しい容姿の良型でした。気が付くと、既に河原の雪は消えて気温も上昇。木々に付着した雪が水滴となり、あちこちの川面に波紋が作られたのが幸いしたのか、警戒心が薄れ、どのポイントへ竿を出しても釣れました。ここは足場の良い河川ですが、砂に足を置いてから大石に足をかけての転倒や濡れた木で足を滑らせた経験もあります。浮石で足首を痛めると大変。安全に注意しながら、慎重に遂行しましょう。

更に進んでゆくと上流に人影が見えました。竿を持った釣り人です。渓流釣りのマナーとして、先行者が優先の暗黙のルール。時計を見ると正午。川から上がって川の駅・上野で名物の「きのこカレー」を食べることにしました。地元特産のキノコの食感とカレーの相性が良く、とても美味しくいただきました。

これから木々の芽吹きが始まり、草花もたくさん開花。川の水量が増えて瀬音も元気を取り戻すと同時に、魚の活性も上がります。新鮮な空気の中で自分のペースで釣り歩き、好きなポイントで竿を出す。想い出とゴミは持ち帰り、たくさん釣れたらリリース。自然はいつでも貴方をウェルカムですから。本格的なシーズンはこれから。近場の渓流から始めてみてはいかがでしょう。

釣行河川:群馬県多野郡上野村 神流川
解禁期間:3月1日~9月20日
入漁料:日釣券 2,000円 年券10,500円
問い合わせ先:上野村漁業協同組合 0274-59-3155