チーム沖イカ

釣行データ

日時:2020年11月30日 5時出船・12時沖上がり
エリア:千葉県 勝浦沖
天候:曇
潮回り:大潮(満潮4時55分、干潮10時18分)
船宿:鈴丸

低速巻きの追い乗せに
イカスペシャルのねばりが効く!

スルメイカが居着く勝浦沖

この日はフルムーンの大潮。勝浦沖には漁火を点けたイカ漁船も多い

 大きな満月と漁火を煌々と焚いたイカ船が水平線に並んでいる。午前5時、川津港を出船した鈴丸はゆっくりとその方角に進んでいった。全国各地でスルメイカの不漁が騒がれているなか千葉県勝浦沖は8月下旬から好釣果に沸いていた。
 
 川津港は勝浦灯台の建つ八幡岬の東側に位置する。イカ釣りに力を入れる船宿が数軒あり、今回お世話になったのは鈴丸だ。鈴木武夫船長は16歳から漁師になり、遊漁船「鈴丸」を創業したのは32年ほど前。昔はカツオ、メジマグロといった青ものを追いかけ、メヌケやアコウと深海釣りの看板も掲げていた。今ではほぼ周年イカを追いかけて付き場を見る目はもちろん、自身もイカ釣りを楽しむ。そして「イカの気持ちが分かっている」と通い込む鈴丸リピーターは多いのだ。
 

スタートダッシュを決めた私

「勝浦沖はスルメイカが離れない。小湊沖にはイカの産卵場があり、スルメの群れが行ったり来たりするんです。12月下旬から1月半ばまでは水深200mラインで大きなスルメが釣れ盛ります。例年だとそれから脂の乗った寒サバに入れ替わって、やがてヤリイカが始まる。今年は12月初旬でスルメのサイズが中型です。まだまだ続きそうな感じですね」
 
 と鈴木船長。沖イカハンターの中では小菅義弘さんが勝浦沖の事情をよく知る。いわく「勝浦の船は流しっぱなしなんですよ。相模湾の船みたいにイカを追いかけ回さない。いつ来るかという群れに備えて誘い続けなければダメ。だから気が抜けません。最近はスルメが浮きにくいですから数が付きにくい。よい人で30パイというのがアベレージですかね」と話す。
 
 同乗の池田暁彦さんは「スルメが浮かないというので今日はツノ数を10本にしました。普段は14本が標準ですが、上にツノがいっぱいあっても意味がなさそうですから」と苦笑。やがてポイント水深の160mラインに船が到達。エンジンが唸り「ハイどうぞ」と船長が合図をだした。仕掛けを投げ入れ着底間もなく、第一号を乗せたのは池田さんだ。ブシューッと水鉄砲を吹いて浮上したのは胴長30㎝ほどの太いスルメ。池田さんが取り込んだところで、小菅さんにも乗った。そして私もまた穂先を押さえ込むようなサワリをとらえて合わせると、ズンズンと数が付いた感触。テクニカルレバーを13ほどに調整して巻き上げていくとゾロリ、ゾロリといきなり4ハイのイカが躍り上がった。

ブレずに動かせる粘っこい穂先

常に穂先に集中し、どんな変化も逃さない池田さん

 この日の3人のロッドは『イカスペシャル』。私と小菅さんはMH160を手にし、池田さんはH155を使った。このロッドが登場するまで当連載で出番の多かった「イカセブン」シリーズや「ベイゲームX イカ直結」に比べ、穂先が粘っこいのが特徴だ。ツノをしっかり躍らせることができる穂持ちの張りがありながらも、粘っこく穂先が曲がる。サワリを取って掛けたあと低速巻きの多点ねらいにこの粘りが効く。とりわけ小菅さんにはMH 160の調子が手に合っているようだ。小菅さんは実に艶めかしいシャクリをする。頭上までシャクリ上げた穂先を目線の高さまで戻し、リフト幅の狭い小さなシャクリでツノをチョンチョンと躍らせる。鋭くキレのよい小刻みなシャクリについてくる絶妙な曲がり幅が150m以上もの海底付近で躍る妖艶なツノの動きを想起させるのだ。
 

池田さんの1パイを皮切りにコンスタントにイカが乗る

小菅さんにはイカのサワリが途切れない

 幸先のよいスタートから、その後もスルメイカは乗り続ける。早朝はほとんど下のツノにイカは付いた。つまり、ほとんど浮いていない。オモリ着底からの基本動作は、穂先を水面近く下げて余分なイトフケを巻き取り、水平までの距離はじんわりした速度でリフト。この間に穂先に集中してサワリを見て、水平位置から頭上までのリフトはビシッと力強くシャクリを入れる。そこでサワリがなければ、リールを1巻きしながら穂先を一気に下げ、ストンと仕掛けを落とす。また同じ要領でサワリを聞きシャクる。こうして海底から10mくらい上までレンジを探っていくのが基本。勝浦沖のように大型スルメが多ければサワリも分かりやすいのでイカビギナーもエントリーしやすいだろう。
 
 「フォールで当たりましたよ」
 と池田さん。水深170mラインで仕掛けを落としている際中150mダナでイトがフワッと膨らんだという。こんな時は落下中のツノにスルメが抱き付いて仕掛けが一瞬止まっているサインであることも多い。群れの分厚いタナを仕掛けが通過する時によくある。そこで池田さんはすかさずクラッチを戻しイトを張る。と、クンというサワリが出た。これを乗せると3点掛けで太いイカが上がってきた。池田さんはレスポンスよくツノを動かせる硬調子のサオが好み。今回使用したH155はシャクリ時にブレず、シャクリ後は速く戻る。高感度なショートロッドである。
 

松田竜也の爆乗り注目ポイント
沖イカハンターの愛用アイテム

メンバーが使用した『イカスペシャル』のブランクスは大型青もの釣り用ロッドに搭載されているスパイラルXコア、ハイパワーX構造を採用し、圧倒的なパワーとサオブレのない軽快な操作性を実現した。穂先には軽量UDグラス素材を特殊設計したチューブラー穂先を搭載。M170 RIGHT、MH160 RIGHT、H155 RIGHTの3アイテム

池田さんが「ほかのグリップを持つと不安になる」というくらいホールド感があるXシートエクストリームガングリップ

小菅さんの愛用リールはビーストマスター2000EJ

プラヅノは18cm。オモリ150号に中オモリ30号でミチイトを張りやすくする

「置きザオでも乗っちゃいますよ」と小菅さんも多点掛けを連発

ブシューッという潮鉄砲を吹きながら躍り上がるスルメイカ

誘い続けて乗り続ける

追い乗せを演出する小菅さん。浮上したイカは4ハイだった

極上の沖干しスルメがロープいっぱいに仕上がっていく

 この日の結果からいえば、12時の沖上がりまでスルメイカは乗り続けた。底付近ほど良型で、上のツノには小型が乗った。「落とせばドンだよ」と池田さんが言えば、「置きザオでゆっくり巻いているだけで乗っちゃったよ」と小菅さんも笑う。船は基本的に反応のよい水深ラインを流しっぱなしにしているのだが、これだけアタリが多いのだから気が抜けない。
 
 残り1時間というところで潮が速くなり、私たち右舷側の釣り座は船下に入り込む潮が生じた。イトが船下に入り過ぎると、シャクリを入れにくくなる。サオとイトの角度に無理が生じて、サオの破損にもつながる。船下に入った時はオモリ着底から速度6くらいの低速巻きでじわじわとタナを探るのがおすすめだ。
 
 低速で一定に曲がる穂先がフワッと持ち上がる、もしくはモタれるといった変化はイカのサワリと思って、すかさずアワセを入れる。乗っていればテクニカルレバーを前に倒してアワセをアシストすればOK。巻き上げの際は穂先をなるべく海面近くまで下げてやり取りするとサオに負担もかかりにくい。ただ船下に仕掛けが入り過ぎればオマツリも多くなる。イトが入り過ぎていると思えば、一度仕掛けを回収して入れ直したほうがいい。ちなみにツノを動かしやすく、サワリも察知しやすいサオとイトの角度は穂先のやや沖から真下までである。
 
 小菅さんも池田さんも「スルメは干してなんぼ」という2人なので、釣ってはさばいての繰り返し。取り込み後、仕掛けを落としている間にイカを開く。冬の沖合は干物に最適な乾燥した潮風が吹く。夏に仕上げる干物より、はるかに美味と感じるのは私だけではない。沖干しロープにみっちりと並ぶイカ暖簾ができあがるほどの釣果に沸いて、トップは小菅さんで54ハイ。私が50パイ、池田さんが47ハイであった。年末年始に大型スルメが揃う勝浦沖はこれからイカ釣りを始めたいという人にも釣りやすく、かなりおすすめのフィールドだ。

池田さんも4点掛け。こちらも太い勝浦サイズ

イカの付いたツノは手すりに幹イトを引っ掛けながら勢いよく下に振る。テンションを緩めてはいけない


				近くに産卵場所を備えた勝浦沖は冬でもスルメイカが離れない。
				この時期は群れが浮かないため、底から10mまでを低速巻きで探るのが有効だ。
				サワリをかけた後の追い乗せねらいでは
				『イカスペシャル』シリーズの粘りのある穂先が威力を発揮。
				この日も腕の太さほどの大型スルメが釣れ続いた。

				近くに産卵場所を備えた勝浦沖は冬でもスルメイカが離れない。
				この時期は群れが浮かないため、底から10mまでを低速巻きで探るのが有効だ。
				サワリをかけた後の追い乗せねらいでは
				『イカスペシャル』シリーズの粘りのある穂先が威力を発揮。
				この日も腕の太さほどの大型スルメが釣れ続いた。