2019.01.11
“乗っ込み”とは、深場で過ごしていた魚が、産卵のためにある程度の群れをなして浅場へ移動する行動のことを言います。乗っ込みの時期は岸からでも釣りやすいうえ、数、型とも期待できます。
カレイの乗っ込みは、秋から冬にかけて。私のホームグラウンドである西日本の場合、早い所では9月下旬から抱卵した個体が釣れ始め、11月あたりになると多くのエリアでピークを迎えます。その後もしばらく釣れ続け、年明け前後に釣果が下火になって乗っ込みシーズンが終わります。
乗っ込みといっても、水温の高いシーズン初期と、水温が低下してエサ取りが少なくなった後期とでは、アプローチ法がかなり違ってきます。9月から10月にかけては水温が20℃前後あり、チャリコ(マダイの幼魚)やカワハギ、フグといったエサ取りが多い時期です。
エサ取りが少なければ置き竿でじっくりアタリを待つこともできますが、高水温期はあっという間にエサを取られ、ひどいときはハリまで噛み切られてしまいます。打ち返しのペースが早くなるので、必然的に忙しい釣りになります。
タックル選びは機動力や取り回しのよさ、仕掛けのセレクトも、エサ取りにかじられるなどして消耗したときに手早く補修できることを念頭に置く必要があります。
複数のタックルを用いて置き竿で攻めるのが基本的なカレイ釣りのスタイル。並継竿でも問題ありませんが、ロッドケースに入れて持ち運ぶことを考えると、節を収めてコンパクトに仕舞える振出竿が便利です。
私の場合、カレイ釣りでは平均して4本の竿を出します。1本の竿でポイントを探り歩くシロギス釣りでは並継竿を愛用していますが、カレイやマダイなど複数本の竿を置き竿にする釣りでは、もっぱら振出竿を使っています。運搬性に優れ、釣り場を移動する際もサッと仕舞える振出竿の機動性は、やはり頼りになります。
調子などの面で振出竿にネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、近年の振出竿は格段に進歩しており、かつての振出竿にあったひ弱さは感じません。振ったときのフィーリングは並継竿と比較しても遜色ないし、飛距離も十分です。
今年メインにしている竿は「プロサーフ振出415T」。カレイ釣り以外にも、マダイやコロダイなど置き竿の釣り全般で愛用しています。カレイやマダイ釣りではCXを主力としています。
プロサーフ振出は、スピンパワー振出に比べて調子に粘りがあるのが特長です。大物釣りでは竿の弾力を使ってやり取りする場面もあり、こんなときにブランクスの粘りが生きてきます。
バットガイドには30mmのラッピング式MNガイドを採用しています。カレイ釣りではナイロンラインの愛用者が多く、大口径ガイドは5〜8号といった太号数のナイロンラインもスムーズに収束させてくれます。
長さは4.05mの取り回しやすさと、4.25mの遠投力とリフトアップ力を併せ持つ4.15m。乗っ込み初期の打ち返しが早い釣りでも疲れにくい長さです。
カレイの喰い方は状況によって異なり、竿先に出るアタリも様々です。エサを喰って沖へ走れば大きくアタリが出ますが、ハリを咥えて手前へ泳いだときは、道糸が微かに弛むだけどいうこともあります。
また、カレイ釣りではエサを大きくハリ付けするので喰い込むまでに時間が掛かります。アタリが小さい場合は、しっかりと喰い込ませるため、ガツンと竿先を持ち込む本アタリを待ったり、道糸を送るといった駆け引きも必要です。
乗っ込み初期の高水温期は、カレイ以外にもマダイやチヌなどの大型ゲストも多い時期です。置き竿にしているときに大型魚が喰うと、一気に走られてタックルを持っていかれてしまうことも考えられます。これらのことを考慮すると、乗っ込み初期のカレイ釣りにはドラグ付の投げ専用リールがおすすめです。
私がメインとしているのは「フリーゲンSD35標準仕様」。このリールに搭載されているハイスピードドラグは、ノブを1回転緩めるだけでドラグフリーの状態を作れます。大型ゲストが喰ってきそうな場所ではドラグフリーで置き竿にしておくと、アタリがあってもドラグが逆転して道糸が出てくれるので、タックルが持っていかれる心配はありません。
カレイだけを考えても、ドラグをフリーにしてじっくり喰い込ませる、あるいはドラグを締めてガツンとアタリを出させるといった具合に、様々な喰わせパターンを演出できます。
大径ノーテーパースプールは、ナイロン、PEラインの双方に対応します。「フリーゲンSD35標準仕様」は、1台あればカレイから磯投げの大物狙いまでこなせる、置き竿釣法のオールラウンダーです。
まだ水温が高い乗っ込み初期の釣りは、エサ取りとの戦いでもあります。乗っ込み期のエサ取りが多い状況では、目立たないシンプルな物を、また、エサ取りの少ない厳寒期には、アピール力がある、数種類の装飾品を入れた派手な仕掛けを使っています。
エサ取りの種類や量によってはエダスが傷むことも考えられます。仕掛けが消耗したとき、手早く交換できる工夫も必要です。
道糸はナイロンでもPEラインでも構いません。ナイロンならば3〜5号。4号を基準として、根掛かりの少ない場所や潮が速いときは3号、シモリが多く強引に寄せる必要があるときは5号を使うとよいでしょう。
私が今メインにしているのはPEラインです。PEラインは直線強力が高く細い号数を使えることと、伸びが少ないため非常に高感度であることが大きなメリットです。
ときとして小さいカレイのアタリをより明確に取れることによって、「釣れたカレイ」が「釣ったカレイ」になり、自分の技術で釣ったという満足感を得られます。前回の瀬戸内釣行では「ピットブル4」の1.5号を使いました。
力糸は「SPINPOWERテーパーちから糸EX4 PE」の1.5-7号を結んでいます。このテーパーラインはブラックカラーで目立たず、太号数まで揃っているのでカレイ釣りとの相性もバッチリです。
テンビンは遊動のオモリ着脱タイプをメインに、飛距離が欲しい場合のみ固定テンビンを使います。遊動式を使うのは、カレイの微妙なアタリを少しでも明確に取りたいから。オモリ着脱タイプは任意の号数のオモリをワンタッチで交換できるので便利です。
オモリは30号が中心です。CXの竿だと27〜33号までのオモリを投げられるので、この範囲内で適切な号数をセレクトします。瀬戸内のように潮が速い釣り場では、33号をメインとすることもあります。
モトス周りは個人的にこだわっている部分です。本来ならばモトスに直接エダスを結ぶのですが、私はモトスからチチワを出し、ここへエダスを結節します。釣り場にはハリを結んだエダスとモトスを別々に持ち込み、釣り場の状況を見てから適切なハリを選んでモトスへ結節するという感じです。
このようなスタイルにした理由は2つあります。ひとつは、ハリを自由に選べるので1本のモトスで様々な魚種に対応でき、荷物を少なくできるからです。カレイ狙いからマダイ狙いに変更するときも、ハリを取り替えるだけでOKです。
もうひとつは、ハリやエダスが傷んでも容易に交換できるからです。乗っ込み初期はエサ取りが多く、フグなどに囓られてすぐにエダスに傷が入ってしまいます。しかしこの仕掛けなら、傷んだモトスを切ってすぐに新品のエダスを結ぶことができます。カレイの時合は短いもの。仕掛けを補修している時間を、できるだけ短縮するための工夫です。
スナズリは、基本的にあったほうがよいと考えています。固定テンビンではスナズリを省くこともありますが、特に遊動テンビンを使うときは、スナズリがあると仕掛けの絡みが激減します。
スナズリはモトス兼用の1本物です。作り方は、まずフロロカーボン10号をモトスとして必要な分より1.5mほど長めに取ります。次にモトスの片側を50cmほど3本ヨリにします。これで完成。50cmのスナズリの先に、結び目なしのモトスが出ている格好になります。
モトスの長さ、チチワの数(=ハリ数)は状況によって変えます。カレイ狙いでは2本バリを基本として、根掛かりが多い場所では1本バリも使います。
ハリは流線タイプか丸せいごタイプの13号を基準に、その前後の号数を使い分けます。釣れているカレイが40cmまでならば13号、50cmオーバーが狙える場所では14号以上の大バリを使うこともあります。
前述のように、ハリにはあらかじめエダスを結んでおき、端にチチワを作って、この部分をモトスに結節します。エダスはフロロカーボン5号が基準です。
エサ取りが多い時期の工夫として、通常は透明の糸に白バリ(銀)の仕掛けを使いますが、エサ取りが多いときのために黒いエダスに黒バリを結んだものも用意しています。黒い色はエサ取りの目に付きにくいのか、エサが取られにくいように思います。
また、エダスには絡み防止を目的としてウレタンチューブを通すことがありますが、エサ取りが多いときは目立たない黒いチューブ、逆にエサ取りが少なくカレイのアタリも遠いときは、近年流行のケイムラカラーのチューブを使うと効果的でした。
vol.3に続く