2019.02.07
“水温が高い乗っ込み初期は、厳寒期に比べてエサ取りが非常に多い季節です。この時期のエサ使いで最も大切なことは、“十分な量を用意すること”です。
エサをふんだんに用意しても、エサ取りが好むものばかりでは大量に消費するだけで、なかなかカレイの顔を拝めません。カレイが好む定番エサに加え、エサ取りの猛攻をかわす工夫も必要です。
乗っ込みガレイを狙うときの具体的なエサ使いを、瀬戸内釣行を例にご説明しましょう。今回の釣行で釣り場に持ち込んだエサは次のとおりです。
数あるエサのなかでも、最もカレイが好むもののひとつです。匂いが強く、遠くからカレイを寄せる効果もあります。本来ならばローテーションの主軸としたいのですが、エサ取りが多いときは魅惑的な匂いが仇となります。
高価なエサであり、何も気にせず使い続けるとあっという間に底をついてしまうので、エサ取りが多いと感じたときは他のエサに切り換えて温存し、ここぞという時間帯で使うほうがよいでしょう。
本虫を塩漬けにしたものです。塩漬けにすると本虫は死んでしまいますが、身が締まってエサ保ちがよくなります。牛肉に例えれば、生きた本虫が生肉ならば、塩マムシはビーフジャーキーといったところ。小魚に多少かじられた程度ならハリに残るので、エサ取り対策にはうってつけといえるでしょう。
塩マムシの作り方は、本虫を好みの長さに切って塩漬けにするだけと簡単です。釣行で余った本虫で作る人もいますが、私は塩マムシであっても新鮮なものが一番と考えているので、エサ屋さんで買ってきたばかりの活きのよいもので作るようにしています。
塩マムシにするとカラカラに干からびますが、海中で水を吸うと作る直前の状態に戻ってきます。このとき、余り物で作ったものと新鮮な本虫で作ったものとでは、明らかに質感が違います。
本虫と並ぶカレイ釣りの鉄板エサです。匂いでアピールする本虫に対し、アオムシは動きで誘うエサといえます。ただ、アオムシは万能の虫エサといわれるように、多くの魚が好むエサです。
比較的安価で流通も安定しているので入手に困ることはありませんが、エサ取りが極端に多いときはあっという間に取られてしまいます。特にフグやカワハギはアオムシが大好物なので、これらが多いときは十分な量を用意しておきましょう。
マダイ狙いで多用されますが、カレイの喰いもよいエサです。口にする魚が限られており、また身がしっかりしているのでハリ保ちが非常によいのが特長。厳寒期はあまり使いませんが、エサ取りの多い時期は実に頼りになるエサです。
カレイ以外にも、マダイやチヌ、スズキといった大型外道が喰ってくるので、リールのドラグはフリーにしておくのが無難です。
ハリに付ける際は、小ぶりなものは1匹掛け、大きなものは小指の2/3ほどの長さに切ってハリ付けします。いずれとも必ずハリ先を出すようにします。
尻の部分をハサミで切って体液を絞り出す人と、体液を出さずに使う人がいますが、これは好みで構いません。私は体液を出し、本虫と同じくらい細く絞ってハリ付けします。エサ保ちのよさはそのままですが、吸い込みやすいためか、これに大型のシロギスも喰ってきます。
エサ取りの少ない厳寒期であれば、匂いの強い本虫や動きのよいアオムシを中心に使い、カレイにエサを見つけてもらうことを意識します。しかし、水温の高い乗っ込み初期にこのようなエサ使いをすると、あっという間にエサ取りに喰われてしまい、効率の悪い釣りになってしまいます。
エサがハリに付いていないと魚は釣れません。高水温期のエサ使いは、いかにしてエサがハリに付いた状態を持続させるかがキモとなります。
エサのハリ保ちをコントロールする具体的な方法は、集魚力の高いエサと、エサ取りに強いエサの使い分けです。前述したエサメニューに照らすと、本虫とアオムシが前者、塩マムシとユムシが後者にあたります。
本虫やアオムシはカレイ釣りの定番ともいえるエサですが、非常に集魚力が高く、カレイ以外の魚も好んで口にします。そのため、エサ取りが多い時間帯にこれらを使うとすぐに取られてしまい、瞬く間に消費するハメになります。
ただ、周辺にいるカレイを寄せるためには集魚力も不可欠です。なので、本虫やアオイソメを使う場合、エサ取りの多い時間帯は集魚に必要なぶんだけハリ付けし、エサ取りが減ってカレイの活性が上がりそうな気配を感じたら、たっぷりとハリに付けてアピールするとよいでしょう。
一方、塩マムシやユムシはエサ取りに強いエサです。塩で締めた本虫は固く、エサ取りに多少囓られてもハリに残ってくれます。ユムシはもともとこれを好む魚が限られているうえ、身がしっかりしています。
エサ取りが多い時間帯は塩マムシやユムシを中心にローテーションして、何よりもハリ保ちを優先させます。ただし、ハリに残りやすいエサは、エサ取りの量や種類、活性といった情報が得にくい側面もあるので、本虫やアオイソメを時折絡めていくようにしましょう。
エサは単体でハリ付けするほか、複数のエサをミックス掛けするのも効果的です。カレイ釣りの王道パターンは本虫とアオムシのミックスですが、ユムシとアオムシのミックス、塩マムシとアオムシのミックスも効果的です。アオムシの動きでカレイを誘いながら、エサ取りに喰われたとしても、ユムシや塩イソメはハリに残ってくれます。アオムシの残り具合でエサ取りの活性も読み取れるので、情報収集という意味でも有効な装餌法です。
カレイが釣れないときは、その周辺にカレイがいないという方もいるかと思いますが、ある程度釣れている場所であれば、私はカレイがエサを喰わない状況にあっても、近くに何尾もいると考えています。潮や水温、天候、時間帯などの自然条件によってカレイの活性が上がらないのかもしれません。またカレイ以上にエサ取りの活性が高く、カレイの口元にエサが届かないのかもしれません。
やがて何かのキッカケでエサ取りの活性が落ち、カレイのスイッチが入ってエサを喰う。これがいわゆる“時合”というものだと考えています。好調な釣り場であっても、終日にわたってカレイが釣れ続けることは稀です。
しかし、日に何度かはカレイの活性が高まる時間帯があり、この時間にパタパタッと喰ってくるパターンが多いように思います。
時合は潮の変化、いわゆる“潮変わり”に訪れるのが代表的なパターンです。止まっていた潮の動き始め、走っていた潮が緩んだとき、潮の方向が変わったときなどはチャンス。投入した道糸の角度には常に留意して、少しでも変化が見られたら打ち返しのサイクルを早めるなど、積極的に攻めるようにしましょう。
満潮、干潮を挟んだ前後も狙い目です。干満の潮変わりはなかなかタイドグラフどおりには起こらないものですが、事前に得られる参考データとして、潮時を頭に入れておいて損はないと思います。
時間帯に関しては、朝夕のマヅメはゴールデンタイムです。また、これはマコガレイに限っての話ですが、午前9時と午後3時前後に捕食行動を起こす傾向があるという研究データがあるそうです。その真偽は定かではありませんが、喰うであろう時間帯の目安があれば攻めにもメリハリが生まれ、集中力も持続します。
vol.4に続く