2017.10.31
魚の居場所や通り道を狙うこと。これは投げ釣りの基本であり、私は真鯛であってもシロギスであっても変わらないと考えています。真鯛の居場所とは沖のシモリ(沈み根)周りなど、通り道とはカケアガリやミゾといった海底の変化です。
ただ、真鯛よりもシロギスのほうが、絶対量が多く群れも大きいうえ、回遊スピードも速いのは皆さんもご承知だと思います。したがってシロギス狙いでは、手持ち竿で仕掛けをサビくことで、テンポよくポイントを探っていくほうが効率的です。
一方の真鯛はシロギスよりも個体数が少なく、群れもさほど大きくはありません。回遊もゆっくりしたものです。なので、シロギスのように仕掛けを動かさず、シモリ周りやカケアガリなどで仕掛けを止め、置き竿でじっくり狙うスタイルのほうが、むしろ効率的といえます。
小魚や甲殻類、頭足類、貝類などを好む真鯛は、岩礁や砂泥に潜むイソメ類やカニ、エビなどを探して一定のテリトリー内を回遊しています。海底にエサを置く投げ釣りは、この回遊個体を狙うわけです。
エサを口にしてハリや仕掛けの存在を感じた真鯛は、反転して一気に走ります。このときに何の対処もなく置き竿にしていると、あっという間にタックルが海の中へ引きずり込まれてしまうでしょう。
これを防ぐため、投げの真鯛釣りでは、仕掛けを投入した後にドラグを緩めておき、真鯛が喰って走ったときに、フリーで道糸が出ていくような状態で置き竿にします。
小型の走りはさほどでもありませんが、そこそこの型が喰うとドラグが水飛沫を上げて逆転します。漆黒の闇の中で竿先ライトが激しく躍り、ドラグ音が鳴り響く様は、投げ真鯛釣りの最もエキサイティングな瞬間のひとつでしょう。
真鯛のポイントは、前述のようにシモリやカケアガリなど海底に起伏のある所です。ポイントを定めるには、まず海底の地形を把握しなければなりません。
初めての場所へ釣行する場合、私は渡船屋さんや釣り場に詳しい人から、水深はどのくらいか、カケアガリがどのあたりにあるのかなど、地形に関する可能な限りの情報を集めます。そして道糸にオモリをセットしたところで、まずオモリだけを投入して周囲の地形を調べます。
初めての場所はもちろん、慣れた釣り場でも台風の後などは地形が変わっていることがあります。以前はあったシモリが砂に埋もれていたり、逆に前はなかったシモリが露出していたりすることは往々にしてあります。
海底の地形がわかれば、狙うべきポイントが絞れます。潮の速さがわかれば、使うべきオモリの号数も決められます。ここまでできたところで、タックルの準備に取りかかります。
置き竿で真鯛を狙う場合、複数の竿を出すのが一般的です。私は平均して4本程度のタックルを準備します。これ以上増やすと、潮が速くなったときなどに管理しきれず、手前マツリなどのトラブルが起こるリスクが増します。
タックルが準備できたら、エサを付けて順次投入していきます。海底の地形は調べたので、めぼしい場所がいくつかあるはずです。ここぞというポイントに投げ分けておきましょう。
仕掛けを投入したら、ドラグを緩めておきます。私が愛用している「フリーゲンSD 35」のハイスピードドラグは、ドラグノブを1回転させるだけでドラグテンションがミニマムになるので大変便利です。ドラグを緩めたらスタンドに竿を掛け、アタリを待ちます。
前述のように、良型のアタリはドラグが勢いよく逆転するのですぐにわかります。ただ、相手が小型であったり、のんびりとエサを喰っているときは竿先が少しもたれる程度のアタリしか出ないことがあります。こんなときは慌てて合わせず、真鯛が走るまで待ってみるとよいでしょう。
しばらく待っても魚が走らないときは、竿先でやんわりと糸を張って聞いてみます。真鯛が喰っていればドラグを締めて合わせを入れ、やり取りに移ります。真鯛の口の周りは硬いうえ、道糸のナイロンラインは伸びがあるため、遠いポイントで喰わせたときほど合わせが利きにくい状態にあります。中途半端に竿を起こすのではなく、しっかり合わせて確実にハリ掛かりさせましょう。
真鯛釣りは竿を出す前の情報収集が重要で、地形把握の精度が釣果に直結しているといっても過言ではありません。これにはポイントの選定だけでなく、取り込みを考えて、ハエ根など障害物の位置を確認しておくという意味も含まれます。足場など夜間の安全を確保する必要もあるので、夜釣りといえども明るいうちに釣り場へ入ることをおすすめします。
竿を出している途中に天候が急変することもあるので、タックルをセットしたら、日没までに荷物をコンパクトにまとめておくようにしましょう。周囲が暗くなると、ちょっとした物を探すのにも難儀します。ヘッドライトなど灯りのチェックをしておくと安心です。
真鯛は夜になると活発にエサを喰うとはいえ、一晩中アタリが続くことは稀です。多くは干潮、満潮前後の潮止まりや、潮が動き始めた一瞬など、潮の変わり目に喰ってくることが多いように思います。釣り場に何度か通っているとおおよその傾向は掴めますし、置き竿でエサをポイントに入れていれば、とりあえず喰わせる状態にはあるので、適度に休息を取って、来る時合に備えることも大切です。
今回の釣行では明け方の潮変わりまで時間があったので、寝袋を持参して2時間ほど仮眠を取りました。こうすることで好時合での集中力がアップするのです。
真鯛はときとして、一定のエサにしか反応しないことがあります。したがって、真鯛狙いで釣行するときは複数のエサを用意し、ローテーションすることで当たりエサを見つけるのが一般的です。また、異なるエサを使うことによって真鯛以外の魚を狙ったりすることも可能です。
この日、私は4種類のエサを持参しました。それぞれの特徴と使いどころをご説明しましょう。
投げ真鯛では定番ともいえるエサです。エサ取りに強く、アタリがあれば高確率で真鯛という魅力的なエサです。しかしその反面、真鯛が薄いときはアタリすらないこともあり、魚の活性を推理しにくい部分もあります。身がしっかりしているのに喰い込みはよく、私自身も真鯛狙いでは最も多用するエサのひとつです。
ハリに付ける際は、必ずハリ先を出します。ユムシを使う際、体液を抜く人と抜かない人がいますが、私は海中でユムシが膨らむのが嫌なので、ハリに付けたらハサミで切り込みを入れ、体液を抜いてしまいます。
ユムシと姿形は似ていますが、身の柔らかさや色合いが微妙に違います。白っぽいユムシに対し、コウジはクリーム色っぽい体色をしています。
色なのか口当たりなのかわかりませんが、ユムシにはアタリすらないのに、コウジには立て続けに真鯛が喰ってきたことがあります。ユムシに比べて高価ですが、エサ屋さんに入荷していれば必ず購入していきます。
その名のとおり、真鯛釣りの特効エサとして知られるエサです。真鯛以外に黒鯛(チヌ)や大ギスも喰ってきます。
真鯛の喰いは抜群でエサ取りにも強いことから、はえ縄釣りのエサにも使われていたと聞いています。何より、ヌルヌルの粘液で仕掛けを台無しにしてしまうヌタウナギが喰わないということが重宝されたとのことです。
タイムシの体液には毒素が含まれているらしく、他魚が避ける理由はここにあるのかもしれません。赤味がかった体液は、うっかり手に付けると黒紫色に変色し、なかなか取れないので厄介です。
短所は非常に高価なこと。1本で千円以上もするとなると思わず尻込みしますが、あれば必ず買ってしまうのは、その実績の高さを思い知らされているからに他なりません。
シロギス狙いでも多用されるエサですが、真鯛狙いにおいても定番エサとして知られています。今回は大ギスが釣れているとの情報があったので、真鯛と両方狙うために持参しました。タイムシに比べて細身で小ダイ狙いのエサと思われがちですが、私自身はチロリで70~80cmの真鯛を釣り上げています。
チロリはシロギスの引き釣りでもよく使うのですが、エサ箱の蓋を開けておくと、ジャリメやアオイソメよりもハエが多くたかってきます。チロリの体液には何かがあるらしく、集魚効果は非常に高いと感じています。
vol.3に続く