2017.10.19

魚の王様・真鯛釣りに挑戦してみよう! [ 日置 淳 ]

Vol.1 投げ真鯛釣りの魅力&タックル

投げ真鯛釣りの魅力

メーター級の大物が身近な釣り場で釣れる!

容姿端麗、上品な食味。祝いの席には欠かせない真鯛は、日本人にとって最もなじみ深い魚のひとつです。魚の王様、高級魚の代表格として知られる真鯛ですが、内湾の磯や堤防からも狙える、意外に身近な魚でもあります。もちろん、投げ釣りにおいてもシロギスやカレイと並ぶ人気ターゲットです。

投げ真鯛釣りの魅力は、なんといっても身近な釣り場で大型が釣れることでしょう。よい状況に当たれば80cm、90cm、果ては1m近いモンスターが喰ってきます。引きも強烈で、細ハリスなど簡単に引きちぎってしまいます。シロギスのように1日に数10尾も釣れる魚ではありませんが、近年は熱心な放流事業の成果か魚影が濃くなる傾向にあり、大物と出会う確率も決して低くありません。

魚の王様・真鯛。近場の海でこんなサイズが釣れるのだからたまりません。

唸りを上げて逆転するドラグ音に興奮度MAX!

足の速い群れを追いかけるシロギス釣りは、1本の竿でポイントを探り歩く釣りですが、個体数が少ない真鯛釣りは、ポイントで仕掛けを止め、置き竿でじっくり狙うスタイルが一般的です。日中でも釣れることは釣れますが、真鯛はマヅメ時や夜間にエサを求めて回遊することが多いため、夜釣りがメインとなります。

真鯛がエサを喰った直後の疾走はかなりのもの。油断していると竿ごと海へ引きずり込まれてしまうので、仕掛けを投入したらドラグをズルズルに緩め、道糸がフリーで出る状態にしてアタリを待ちます。真鯛が喰うとドラグが水飛沫を上げて逆転し、夜の静寂にジーッというラチェット音が響き渡ります。このときの興奮は何物にも代えられません。

今回はビッグな真鯛を求めて、瀬戸内の海へ釣行しました。夕方より岡山県向日比港から渡船で沖堤防に渡り、翌朝まで竿を出すスケジュールです。この日の釣りを通して、投げ真鯛の楽しみと攻略法をお伝えしたいと思います。

投げ真鯛釣りは置き竿でじっくりアタリを待つ釣り。唸りを上げてドラグが逆転したときの興奮は格別です。

真鯛釣りの生態とシーズン

一定エリアを回遊してエサを漁る

真鯛は北海道以南から南シナ海北部に分布し、水深10~100mの岩礁帯や砂礫底の場所に棲息しています。あまり広範囲を動き回らず、海底の根周りを中心に一定のエリアをテリトリーとして回遊しています。

食性は肉食で、小魚や甲殻類、頭足類、貝類などを好みます。岩礁や砂泥の中に潜むイソメ類などは大好物です。近年流行の鯛ラバやひとつテンヤ、船からのビシ釣りなど、真鯛の釣り方は多岐にわたりますが、回遊ルートの海底にエサを置いてアタリを待つ投げ釣りは、実に理に叶った釣法といえるでしょう。

真鯛は岩礁や砂泥底に潜むイソメ類を好んで口にします。海底にエサを置く投げ釣りは理に叶った釣りといえます。

ベストシーズンは春~秋

真鯛は水温などの周辺環境によって移動する魚ですが、季節によって適切な釣り場を選べば周年狙えます。ただ、一般的には春から晩秋にかけてが真鯛の釣期といえるでしょう。

春は真鯛の乗っ込み期。数はそれほど出ませんが、70cm、80cmといった大型が釣れる季節です。早い地域では3月から釣果が聞かれ始め、4~5月に盛期を迎えます。真鯛の乗っ込みは地域によってバラツキがあるので、現地の釣具店や渡船屋さんに釣況を確認してから出掛けるとよいでしょう。

秋は中型を中心に数が釣れる季節です。中型といっても40~50cmクラスは十分に望めるので油断はできません。

10月、11月と秋が深まるにつれ釣果は下火になっていきますが、水深があって水温が安定している場所や、気候が温暖な地域では、真冬でも釣果を望めます。私自身、水深が30~40mある愛媛県の宇和島で、12月に真鯛を釣り上げています。

秋は数釣りの絶好期。竿先の灯りを見ながら夜長を過ごすのも風流です。

投げ真鯛釣りのタックル

竿=機動力のある振出がおすすめ

投げ真鯛釣りでは竿を複数出して置き竿にし、遠近左右に投げ分けてポイントを探るのが一般的。私自身もこの日は4本の竿を出しました。並継竿でも問題なく真鯛は釣れますが、釣り場までの運搬を考えるとコンパクトに仕舞える振出竿がおすすめです。

現在、私が真鯛をはじめとする大物釣りで多用しているのが「スピンパワー425CX-T」です。標準錘負荷が30号と、投げ竿では硬くも軟らかくもない一般的なアイテムです。

複数の竿を出す真鯛釣りでは収納性に優れた振出竿が便利。「スピンパワー425CX-T」は大物釣り全般で活躍するアイテムです。

遠投性能を考えるとAX、BXといった硬い竿が有利と言われており、私自身もかつては硬めのアイテムを好んで使っていましたが、最近はワンランク軟らかいものを選ぶことが増えました。その理由は、「スパイラルX」「ハイパワーX」といった技術がキャスト時におけるブランクスのネジレを抑えてくれるので、CXでも十分以上の飛距離と投入精度を得られるからです。ポイントへ仕掛けを投入できるのであれば、竿は軟らかいほうが喰い込み面でも有利。大型がヒットしたときのリフトアップ力も申し分ありません。

リール=ドラグを緩めてフリーで走らせる

真鯛はエサを喰うと一気に走ります。このときのスピード、パワーは強烈のひと言で、何の対処もなく置き竿にしていると、大切なタックルがあっという間に海へ引きずり込まれてしまうでしょう。

投げ釣り用のスピニングリールには、軽量のドラグレスタイプとドラグタイプの2種類がありますが、投げ真鯛釣りにはドラグタイプのリールが適しています。仕掛けを投入したらドラグを緩めて道糸がフリーで出ていくようにしておき、この状態で置き竿にしてアタリを待ちます。真鯛が喰うとドラグが逆転して道糸が送り出され、走りをかわすという寸法です。

私が真鯛狙いで愛用しているのが「フリーゲンSD 35標準仕様」です。特殊なドラグ座金を使用した「ハイスピードドラグ」を採用しており、ドラグノブを1回転させるだけでドラグテンションがミニマムになるので、ドラグフリー釣法では非常に使いやすいリールです。

ドラグノブを1回転させるだけでドラグテンションがミニマムになる「フリーゲンSD 35標準仕様」は、投げ真鯛釣りにピッタリ。

投げ真鯛釣りの仕掛け使い

道糸=潮の速いポイントではナイロンが使いやすい

この日はナイロンの4号を使用しました。最近は投げの大物釣りでもPEラインを使用する機会が増えましたが、瀬戸内のように潮流が速く、かつ複雑な釣り場においては、比重の小さいPEラインだと潮に流されてオマツリの原因になってしまいます。
適度な比重があるナイロンは潮になじみやすいのが利点で、特に潮流の速いエリアではトラブルを最少に抑えられると考えています。

投げの大物釣りは、魚に走られた際に根ズレするなど道糸の消耗が激しい釣りなので、経済性を優先するなら安価なボビン巻きの製品をマメに巻き替えてもよいでしょう。仕掛けを投入した方向や位置を把握するために、私は蛍光色のラインを使用しています。

潮流が速い釣り場では潮なじみのよいナイロンラインがおすすめ。蛍光色のものは投入方向や距離を把握するのに便利です。

テンビン&仕掛け=ドラグフリー釣法には遊動式がマッチ

この日に使用したのは、遊動式テンビンの30号。ドラグフリー釣法では、道糸がスムーズに抜ける遊動式テンビンが向いています。

仕掛けは2種類を使い分けました。ひとつは真鯛専用の1本バリ仕掛け。大物が喰っても力勝負できるようハリスはフロロカーボン8号としました。この仕掛けではユムシやコウジを使うので、ハリもコウジ専用の7~8号を結んでいます。

もうひとつは2本バリ仕掛けです。直前の情報では25cmオーバーのシロギスが釣れているとのことで、大ギスと真鯛の両方を狙うために用意しました。モトスはフロロカーボン12号、ハリスは5号。ハリは流線13号とシロギス用としてはかなりガッチリした仕掛けですが、釣れているシロギスの型がよいことと、真鯛との両狙いを考えての選択です。

モトスからはヨリを入れたチチワを出しておき、ハリスもチチワにしてこれに接続します。私は投げ釣りでいろんな魚を狙うタイプですが、対象魚ごとに仕掛けを作っていては、荷物があっという間に膨れ上がってしまいます。あらかじめ作っておいたモトスへ自由にハリを組み合わせられるようにしてあるのは、荷物をコンパクトにまとめるための工夫です。

ドラグフリー釣法には遊動式テンビンが向いています。

真鯛専用の1本バリ仕掛け。エサはユムシやコウジを使いました。

大ギスと兼用の2本バリ仕掛け。モトスは単体で作っておき、ハリスとはチチワで接続しています。

竿立ての三脚には、水を入れたバケツなどをぶら下げて安定させます。

大物釣りにおいて玉網は必需品。海に物を落とすこともあるので、釣り場に着いたら一番はじめにセットし、納竿時は一番最後に片付けるようにしましょう。

vol.2に続く