「風」はバス釣りにとって大事な要素のひとつ。水面を波立たせて魚の警戒心を解いたり、ほどよい濁りを生み出したり、ベイトフィッシュを打ち寄せさせたりと、アングラーにとってプラスの条件をもたらしてくれる場合が多くあります。
しかし、ボートフィッシングの初心者にとっては、その「風」が厄介な存在になることもしばしば。思うようにボートをコントロールできず、操船に気を取られて釣りに集中できないこともあります。
「風に対処する基本として『風上に向かってフットコンエレキモーターを踏みながら流す』のが一般的です。向かい風に逆らうように進んだほうが、ボートをゆっくり進めたり、一箇所にステイさせやすいんです」(伊藤)
でも、伊藤さんは、その基本とは違った行動を取ることが多いのだそうです。
「丁寧に撃っていくようなときはセオリーどおりにしますが、どちらかといえば、風に流されつつキャストしていくほうが僕は好きですね。なぜかというと、魚は『風上に頭を向けている』ことが多いからなんです」(伊藤)
バスだけでなく、多くの魚は水の流れに対して、上流側に頭を向けて泳ぐ性質がありますが、風によって流れが発生すると、止水域では風上が上流側と同じ条件になるため、バスは風上に頭を向けている可能性が高くなるわけです。
「ボートを風に流されながら釣る場合、風下側(魚の後ろ側)に着水したルアーは、魚の横を通過して、魚の進行方向へと逃げていきます。反対に風上へ向かってキャストすると、魚に対して正面からルアーが接近して、後方へ通り過ぎていくイメージになります。どちらがルアーを追いやすいかといえば、魚の進行方向へと逃げていくほうだと思うので、僕は流されながら釣ることのほうが多いんです」(伊藤)
とはいえ、いくら風が味方をしてくれるといっても、強風時は落水の危険が高まり、ボートが岸に打ち寄せられて座礁・転覆したりする恐れがあります。天候の急変には常に注意を払って、安全第一で釣りを楽しんでください。
「風に流されて釣っていく」のは案外難しく、ボートが想定外の向きにズレるのをエレキモーターで補正したり、ときには軽くバックさせて風に押されすぎないよう制御することも必要です。慣れと習熟が必要なアプローチといえます。
船尾に「ラダー」をセットすると直進性が増し、横風の影響を受けづらくなります。レンタルボートの釣りでは、あると重宝するオプションアイテムです。
釣行の際は天気だけでなく、風の強さや変化もあらかじめチェックしておきましょう。
「風上→風下」へアプローチしたときのイメージ図。ルアーがバスの「後方→前方」というコースを通る可能性が高くなり、追尾してアタックしやすいと考えられます。ただし、水が風とは逆方向に流れたり、表層とボトム付近の流れが異なる場合もあるので注意が必要です。