伊藤巧さんが実際のフィールドで「朝イチのハードベイト戦略」をどのように組み立てているのか、具体例をもとに紹介していきましょう。
訪れたフィールドは利根川に注ぐ支流の長門川。季節は10月上旬で、水温は約21℃でした。水深1~2m前後のシャローが多い河川で、バンク際にはベジテーションやレイダウンなどのカバーが豊富にあります。
伊藤さんが最初に選んだのは3/8ozのスピナーベイトでした。スピナーベイトは速く巻けば水面直下を通せて、ゆっくり巻けば深いレンジにも到達させられるルアー。障害物にも引っ掛かりづらいので、いろんなシチュエーションに対応する万能アイテムとして選んだのでしょうか?
「マキモノ系ルアーを選ぶとき、僕は水深・状況・濁り方・風の有無によって、スピナーベイト、クランクベイト、そしてバイブレーションを使い分けています。今回の長門川はシャローエリアが大半で、ここ数日の雨による濁りが入っていて、ベジテーション(岸や水中の植物)も多いことからスピナーベイトを選びました」(伊藤)
もしもこれが、リップラップ(ゴロタ石のポイント)やブレイク(水底の落差がある所)を釣ることの多いフィールドだったり、ルアーのスピード感がほしい状況だったら、クランクベイトを使っていたとのこと。
「全体が1m前後とさらに浅くて、ボトムの障害物を探しつつ、当ててパンパン外しながら釣るようなシチュエーションならバイブの出番です」(伊藤)
当日は、川の中流域のレンタルボート店からスタートして、下りながら左岸側をチェック。エレキは遅めのスピードで、ほとんど踏みっぱなしにして、カバーやバンク際にスピナーベイトを撃ち込んでいきました。
「ルアーが着水したあとは、視線はルアーを離れて次のキャストコースを探しています」(伊藤)
視野を広く持つことで、目から入ってくる情報量が増えます。これが、この日のファーストフィッシュを手にする重要な手掛かりになりました。進行方向に2尾のバスが泳いでいくのを発見した伊藤さんは、すかさず魚の前方にスピナーベイトをキャスト。すると、1尾があっけなくバイト! 開始わずか20分の出来事でした。
「この時点で、いろいろな情報をインプットすることができました。シャローの水が良好なこと、ターンオーバーしていないこと、バスは浅いところでベイトを追っていて、しかもやる気があること…。さらに細かくいえば、発見した2尾は、川の流れが止まった瞬間にシャローに差してきたんです。まだ水温が高めとはいえ夏ではないので、強い流れを嫌っていたのかもしれませんね」(伊藤)
スピーディな展開だからこそ、「状況変化」のタイミングを捉えることができたという伊藤さん。次の回では、ボートでの釣りの組み立てに欠かせないハードベイトの必要性について解説していただきます。
あっさりとファーストフィッシュをキャッチ。スピナーベイトを使ったスピーディな展開が朝イチの状況にピタリとハマった!