和式毛バリ釣法・テンカラ。インターネットが普及した現在、日本古来の伝統釣法は“TENKARA”として国外でも認知される釣りとなりました。道具立てがシンプルで気軽に入門できることに加え、仲間と一緒に楽しめるというオープンな釣趣も、多くの人に受け入れられた理由のひとつといえるでしょう。
しかしテンカラがいくら入門しやすい釣りとはいえ、魚がいるポイントを見極め、軽い毛バリを正確にキャストするには最低限の技術が必要です。そんなことから、シーズンになると各地でテンカラの講習会が開催されています。テンカラのイロハを最短距離で覚えたいと思うのなら、まず講習会に参加してみるというのもよい方法です。
「ようこそ渓流釣りの世界へ」でもVol.77で「三依テンカラ交流会」の様子をご紹介しました。今回は講習会レポートの第二弾として、2026年5月16日、17日の2日間にわたり長野県・開田高原で開催された「レディーステンカラミーティング」の模様をお伝えいたします。
「レディーステンカラミーティング」とはその名の通り、女性とそのご家族を対象としたユニークな講習会です。講師はテンカラの普及に尽力する石垣尚男さん。当日は好天に恵まれ、この上ないコンディションのもと講習を行うことができました。
木曽御嶽山の麓、開田高原で開催された「レディーステンカラミーティング」。10歳の小学生から70代まで、各地から15名のテンカラファンが集まりました。
講師を務めるのは“テンカラ大王”こと石垣尚男さん。日本古来の伝統釣法を次世代に伝えるテンカラの伝承者です。
実釣は少人数に分かれ、それぞれのグループにサポートの講師が付きます。各自のレベルに合わせて解説してくれるのでビギナーでも安心して参加することができます。
実釣は木曽川水系の西野川を中心に行いました。この一帯はイワナとアマゴの混生エリア。当日はイワナがよく釣れました。
●テンカラ講習会のメリット
前回のレポートでも触れましたが、ここであらためて講習会に参加するメリットをお伝えしましょう。
ひとつは、「実際に川を見ながらレクチャーを受けられる」ことです。昨今は動画投稿サイトや書籍などでテンカラの理論を学ぶことができますが、ポイント選びや毛バリの流し方といった実戦的なアプローチは、どうしても動画や写真、イラストでは理解しにくいもの。講習会では実際に石組みや流れの筋を見ながら、どこに毛バリを落とし、どう流し、どこで喰わせるかを学べるので、よりリアルな知識を得ることができます。
次に、一線で活躍する講師より「正しい技術指導を受けられる」ことも講習会に参加するメリットです。テンカラを始めて間もない人に聞くと、キャスティングひとつとっても、力の入れ具合やリリースのタイミングがわからないとの声をよく耳にします。講習会ではキャスティングのコツを講師から直接教われるので、回り道せずに上達することができます。
そしてもうひとつ、「交流の輪が広がること」も講習会の魅力です。釣りを通じてつながった仲間は財産です。特に女性のテンカラファンはまだまだ少数であるため、講習会は貴重な交流の輪を広げる場になってくれることでしょう。
講習会は、シーズンになると各地で開催されています。漁協や自治体が主催するもののほか、石垣さんは個人でも頻繁に講習会を開催しているので、ホームページやSNSをこまめにチェックするとよいでしょう。
講習会に参加する際には、参加費や入漁料が必要です。また、バーブレスフックの使用など河川によって取り決めがあるので、事前に確認するようにしましょう。
実際に川に入ってリアルな知識を身に付けられるのが講習会に参加する最大のメリット。ポイントの選び方、毛バリの流し方などが容易に理解できます。
仕掛け使いも丁寧にレクチャー。ラインの結び方、仕掛けの手直しなど、困ったときはすぐに講師がヘルプに入ってくれます。
講習会は釣り人同士の交流を広げる貴重な場。講習会で知り合った仲間とプライベートで釣行するようになった人もいらっしゃいます。
●「レディーステンカラミーティング」とは?
「レディーステンカラミーティング」とは、長野県の開田高原のペンション「プチビラMTおんたけ」と、講師を務める石垣尚男さんが発起人になって始まった、女性のためのテンカラ講習会です。参加資格は女性、もしくはそのご家族のみというユニークなものです。
「世界には多くのスポーツがありますが、釣りは女性の参加率がとても低いジャンルなんです。プチビラMTおんたけのご主人はテンカラが大好きな人で、女性にもテンカラの楽しさを知ってほしいよね、ということで始めたのがレディーステンカラミーティンです。テンカラはエサを使いませんし、毛バリを巻く作業も手先が器用な女性に向いていると思っています。おかげさまで毎年好評で、今年(2026年)で7回目を迎えます」(石垣)
講習はペンションをベースに1泊2日のスケジュールで行われます。釣りだけでなく、キャスティングゲームやバーベキューといった催しもあり、2日間をたっぷり楽しめるイベントとなっています。
レディーステンカラミーティングは、釣りへの女性参加を増やすために立ち上げられた講習イベント。正確なキャスティングを競うゲームなど、釣り以外の楽しみも盛りだくさん。
キャスティングゲームの優勝者は、なんと10歳の小学生。恐れ入りました。
開田高原には美しい流れが無数にあります。講習は木曽川水系の西野川とその支流を中心に行いました。
講習初日の夕食はペンションの中庭でのバーベキュー。日が暮れるまで楽しいひとときを過ごしました。
●講習会のプログラム
それでは、ここで「レディーステンカラミーティング」の具体的なプログラムをご紹介しましょう。
●講習初日
①座学
竿を持つ前に、まずは石垣さんが用意したプリントをもとに、ペンションにて1時間ほどテンカラの基礎知識を学びます。特にこのイベントは初心者が多いため、渓流でのマナーや漁協の役割から始まり、その後に渓魚の習性などについて説明を受けました。
②キャスティング講習
座学タイムが終わるとペンションの中庭へ移動し、テンカラの最初にて最大の壁であるキャスティングの講習に移ります。キャスティングの勘所は「力の強さ」ではなく「力を入れるタイミング」。もともとテンカラ竿はさほど重い竿ではないので、参加者もすぐにキャスティングのコツをつかめたようです。
③実地講習
昼食を取った後はいよいよ実戦。西野川で講師によるデモンストレーションを行った後、西野川と西俣川に分かれて皆さんに竿を振っていただきました。魚影の濃いエリアなだけあって、早くもイワナやアマゴを釣り上げた方も多くいらっしゃいました。
④キャスティング世界選手権&バーベキュー
実地講習を終えたらペンションに戻り、しばし休息した後はお楽しみタイムに入ります。的の中へ正確に毛バリを落とすキャスティングゲームは大盛り上がり。その後のバーベキューでは世代を超えて団らんを楽しみました。
⑤毛バリ巻き講習
夕食後は講師陣による毛バリ巻きの講習を行いました。自作の毛バリで魚が釣れたときの喜びは格別。参加者は慣れない作業に苦闘しながらも、毛バリ巻きの楽しさを味わっておられたようです。
●講習2日目
①実釣
2日目は朝一番から実釣です。1組4名前後の小グループに分かれ、それぞれにサポートの講師が付いてレクチャーを受けます。仕掛けトラブルの対処、根掛かりの外し方など、困ったときはすぐに講師がヘルプに入ってくれます。魚が釣れなかった方もいらっしゃいますが、実際の川で学んだリアルな知識は、きっと今後も役立つことでしょう。
2日間にわたる講習はお昼にて終了。ここでいったんお開きとなります。
②実釣(希望者のみ)
希望者は午後からも自由に竿を出すことができます。ここからはプライベートな釣りになりますが、都合が合えば石垣さんのサポートを受けることができます。
講習初日は座学タイムの後、初心者にとって最大の難関であるキャスティングについてレクチャーを受けます。石垣さんの指導のもと、参加者はすぐにキャスティングのコツをつかめたようです。
キャスティングの動作を学んだ後は、いよいよ実地講習です。一連の動作を覚える時間ではありますが、早くもイワナやアマゴを釣り上げる参加者もいらっしゃいました。
夕食後はペンションにて毛バリ巻きの講習。毛バリを巻く時間も楽しいものです。
講習2日目は少人数にのグループに分かれて実釣。講師の都合が合えば、解散後のプライベートの釣りでもサポートを受けることができます。
●西野川の参考タックル
【石垣尚男さんのタックル解説】
西野川をはじめとする開田高原で釣りをする場合、竿は『渓流テンカラ』をおすすめしています。この竿は非常に軽く仕上がっており、女性でも非常に扱いやすい竿だと思います。もっと求めやすい価格の竿というならば『天平テンカラ』も使いやすい竿です。腕力に自信がない方は、渓流テンカラならズームを3,3mに縮めて使う、天平テンカラなら短い3,3mを選ぶとよいでしょう。
ラインは視認性のよい蛍光色のソフティライン(ナイロン)を愛用しています。テンカラは毛バリが流れている位置を把握することが大切です。ソフティラインはラインの軌道がよく見えるので、毛バリの位置もわかりやすい。特に初心者の方には“見えるライン”がおすすめです。
ソフティラインは3m、3,3m、3,6mの3種類がありますが、3,3mが最も多くの場面で使える長さです。3,3mの竿なら、ラインはちょうど竿丈いっぱい。このくらいのバランスがトラブルも少なく、扱いやすいと思います。
ハリスはフロロカーボン0.8号を基準とすればよいでしょう。0,8号であれば、開田高原で釣れる平均的なサイズのイワナ、アマゴともに対応できると思います。長さはケースバイケースですが、1m前後が基本としています。ラインが竿丈いっぱいならば、ハリスの長さぶんが手尻として出る格好になります。
毛バリは融着テープをボディに巻いた手製のものを使っており、講習会でも皆さんにこれを巻いてもらいました。フックサイズは#12をメインとし、このほかに喰い渋り用として#14があれば開田高原では事足りると思います。
次回は講習会2日目の様子をレポートいたします。
(次回へ続く)