すっきりと晴れ渡った空。外に出ると初夏の爽やかな風が頬を撫でていきます。ここは木曽御嶽山の麓・開田高原。「レディーステンカラミーティング」は、2日目も好天のもと執り行うことができました。
「レディーステンカラミーティング」とは、ペンション「プチビラMTおんたけ」と講師を務める“テンカラ大王”こと石垣尚男さんが発起人となってスタートした、女性とそのご家族を対象とした講習イベントです。
「現在、女性のスポーツ参加率は非常に高くなりましたが、釣りにおいてはまだまだ低いと言わざるを得ません。かつての釣りは“臭い・汚い・かっこ悪い”の3Kと揶揄された時期があり、そのためか女性に敬遠される向きもありましたが、テンカラはエサを使わないし、タックルもシンプル。ウェアも近年はとても洗練されてお洒落になりました。女性は手芸など手先を使う趣味をお持ちの方が多いので、毛バリを巻く作業もきっと楽しんでいただけるはず。そんな女性にテンカラの楽しさを伝えることができないか。これがレディーステンカラミーティングを始めたきっかけです(石垣)」
個々のレベルに応じた丁寧な指導、そして石垣さんの温和でユーモアに富んだ解説は毎回大好評。7回目の開催を迎える今回は、各地から女性12名、男性3名の計15名が開田高原に集まりました。2日目となれば初対面の参加者もすっかり打ち解け、朝から笑顔で談笑する光景が方々で見られます。
講習初日は机上と実地での基礎講習。2日目は全員が川に入って竿を振ります。今回は実釣講習の模様をレポートいたしましょう。
講習2日目は実釣講習。実際に竿を振りながらポイントの設定や仕掛け使い、トラブルの対処術まで実戦的なレクチャーを受けます。
主任講師は「テンカラ大王」こと石垣尚男さん。各地で精力的に講習会を開催しているテンカラの伝承者です。
開田高原で開催された「レディーステンカラミーティング」に参加された皆さん。実釣講習は4名前後のグループに分かれて行います。
2日目ともなれば初対面の人もすっかり打ち解け、方々で談笑する光景が見られました。
●実釣講習レポート
実釣講習は4名前後のグループに分け、それぞれにサポートの講師が付いて行われます。講習の場は好ポイントが軒を連ねる開田高原の実績河川。早朝に「プチビラMTおんたけ」のご主人がポイントを見て回り、先行者がいないことを確認したうえでの入川となります。
石垣さんが担当したのは40〜50代のグループ。皆さんがテンカラを始めて間もない初心者とのことです。
初日の講習で仕掛け使いや一連の手順、キャスティングの基礎は学んでいますが、実際に竿を出すとなると様々な問題や疑問が生じてくるもの。手尻の長さはどのくらいが適切か、ポイントに対してどこに立ち位置を取ればよいか、仕掛けが絡んでしまったなど、困ったときはすぐに講師のフォローが入ります。これが講習会の最たるメリット。独学の釣りではちょっとした疑問を解決するにも時間がかかるばかりか、思い込みで誤った知識のまま釣りを続けてしまうと、延々と同じ問題で悩み続けることにもなりかねません。
仕掛けのセットで戸惑っていた参加者も、数分後には気持ちよくキャストするまでになりました。1時間ほどの釣りの中で、参加者のひとりが見事にイワナをキャッチ。自分の力で釣り上げた1尾は嬉しいものです。
他のお二方は残念ながら釣果を得られませんでしたが、実釣が後半に差し掛かる頃にはキャスティングの所作が見違えるほどスムーズに。トイレ休憩を挟んだ正味2時間ほどの実釣講習でしたが、参加者のそれぞれが手応えを感じておられたようです。
講習のカリキュラムはこれにて終了。ペンションに戻って点呼を取り、ここでお開きとなります。ただ講師との都合が合えば、その後のプライベート釣行にお付き合いいただくことが可能な場合があります。この日も石垣さんは3名の希望者に付いて川に入るとのことで、午後からの延長講習に同行させていただきました。
石垣さんが担当したのは40〜50代の初心者グループ。テンカラは入門の間口が広い釣り。60歳を過ぎてから始める方もいらっしゃいます。
実釣は「プチビラMTおんたけ」のご主人がリサーチした実績河川で行います。石垣さんグループは西野川の支流である末川に入りました。
仕掛け使いや立ち回り方など、実際に竿を出すと次々に疑問が生じてくるもの。実釣講習では些細な疑問にも即座に答えてもらえます。
初日の講習で、ひととおりの知識と技術は習得しています。テンカラの最初の関門となるキャスティングも、少し竿を出しただけで皆さんがコツをつかめたようです。
参加者のひとりが20cm級のイワナを釣り上げました。自分の力で仕留めた1尾は、生涯の思い出となってくれることでしょう。
徒渉は渓流釣りに不可欠な技術のひとつ。講習会ではフィールドにおける安全やマナーについての知識も身に付けることができます。
●プライベート講習タイム
延長プライベート講習のメンバーは20〜30代。釣りにおいては伸び盛りともいえる世代です。実際に個々では積極的に釣行をされているようで、釣技、知識ともに一定以上のレベルを感じます。したがって石垣さんのアドバイスもワンランク、ツーランク上のものになります。
入った河川は先と同じく西野川の支流である冷川。ただ、末川に比べて冷川は頭上に木の枝が覆い被さる場所が多く、また落差が大きいうえに倒木などの障害物が多く、キャスティングには相応の技術を要します。
しかしそこは経験者揃いです。石垣さんのアドバイスを聞きつつ、オーバヘッドキャストにサイドキャストを絡めながら小さなタナを上手に攻めていきます。
ポイントの見立ても細かくなり、そこへ正確に毛バリを送り届けるためのノウハウがレクチャーされます。誘いについての解説もあり、これも2時間ほどの短時間の釣りではありましたが、メンバー全員が見事に20cm前後のイワナを手にしました。
釣りの途中には、石垣さんが「ちょっと竿を貸してごらん」とメンバーが散々攻めたポイントに毛バリを打ったところ、一発でイワナが喰ってくる場面も。テンカラは誰でも楽しめる間口の広い釣りでありながら、攻め方によって釣果に差が出る奥深い釣りであることを思い知らされました。
こうして楽しいプライベート講習が終了。全員が笑顔で帰路につきました。
講師との都合が合えば、講習修了後もプライベートの釣りに付き合ってもらえます。この日は20〜30代のグループに石垣さんが同行しました。
このグループは、他ジャンルも含めてある程度の経験があるメンバーが揃っていました。アドバイスもワンランク上のレベルになります。
ヒット率を上げるためには、的確にポイントを見抜き、狙った場所へ正確に毛バリを打ち込む必要があります。高度な指導に参加者の表情も真剣です。
ユーチューバーとして活躍するバチ抜けチャンネルさんがイワナをキャッチ。石垣先生とは以前から親交が深く、これまでに何度も講習会に参加しているそうです。
ピンポイントを丁寧に攻めていた大学生の参加者がイワナを釣り上げました。狙いどおりに仕留めた1尾は嬉しいものです。
講習会には一定の経験を積んだ方も参加されていました。この方はひとつひとつの所作にキャリアを感じさせる熟練アングラー。エレガントなキャスティングで見事にイワナを仕留めました。
●参加者の声
最後に、一部ではありますが講習会に参加した方の感想をご紹介しましょう。
① 50代女性(テンカラ歴半年 / 愛知県より参加)
【テンカラを始めたきっかけ】
友人に誘われて、とある管理釣り場で行われた講習会に参加したのがテンカラを始めたきっかけです。初めはテンカラの講習会であることも知らされずに参加したのですが、友人に連れられて二度、三度と講習会へ出かけているうちに、テンカラが楽しくなりました。
【講習会に参加した動機】
そもそもテンカラを始めたきっかけが講習会でした。ただ、やってみて楽しくなければ続かないはずですよね。石垣先生の人柄もあると思いますが、私が参加した講習会には、女性でも優しく受け入れてくれるアットホームな雰囲気がありました。これがよかったのでしょうね。
【講習会に参加した感想】
釣りというものは、これまでたくさん魚を釣ることだけが楽しさだと思っていたのですが、1尾と出会うまでのプロセスも楽しみなのだなと思うようになりました。狙ったポイントへ毛バリを打ち込めたときは嬉しいですし、釣れなかったときに「どうしたら釣れるのだろう」と考える時間も楽しいものです。また、川を大切にする、魚を大切にする、川を管理している方々に感謝するといった、人として忘れてはならないことをあらためて認識させてもらった気がします。
② 40代女性(テンカラ歴5年 / 長野県より参加)
【テンカラを始めたきっかけ】
以前の私は今でいう“推し活”をやっていまして、推しの方が釣りをしているとのことで、魚釣りに興味を持ちました。また、私はキャンプを趣味としているのですが、川のほとりでキャンプを楽しんでいると、しばしば釣りをしている人を見かけるんですね。これはおもしろそうだと。でもルアーやフライは仕掛けが煩雑だし、エサ釣りはエサの確保など面倒なことが多い。シンプルな道具立てで楽しめる釣りはないかと思っていたところ、テンカラという釣りを知りました。
【講習会に参加した動機】
はじめのうちは自己流で竿を出していたのですが、やはり魚が釣れないんですね。これはちゃんと基本を学ばないといけないなと思い、あれこれ調べているうちに講習会の存在を知りました。
【講習会に参加した感想】
一番の収穫は、やはりキャスティングやポイントの見立てなど、テンカラの基礎を学べたことです。狙うべき場所へ正確に毛バリを落とせるようになったので、釣果が上がるようになりました。あとは同性の仲間が増えましたね。今回はひとりで参加したのですが、何人も顔見知りが来ていました。共通の趣味を持つ人との交流は、とても楽しいものです。
③ 50代女性(テンカラ歴3年 / 愛知県より参加)
【テンカラを始めたきっかけ】
親の影響で海釣りは以前からやっていまして、特にノベ竿のハゼ釣りが大好きでした。ある日、釣友から「この竿は軽いから使ってみなよ」と竿をもらったのですが、これがテンカラ竿だったんです。でも当時はテンカラがどんな釣りかもわかりません。インターネットでテンカラを調べているうち、少しずつ「やってみたいな」と思うようになりました。
【講習会に参加した動機】
テンカラに関する情報を集めているうち、テンカラ大王(石垣先さん)の講習会の告知を見つけました。その講習会は自分で毛バリを巻いて魚を釣ろうという趣旨だったのですが、これが心に刺さったんですね。(笑)。参加してみたら、自分が巻いた毛バリでイワナが釣れてしまったんです。そして現在、すっかり沼にはまっています(笑)。
【講習会に参加した感想】
テンカラは思うほど敷居が高い釣りではなかったことがわかってホッとしました。というのも、以前フライを少し教えてもらったことがあったのですが、キャストが上手くできずやめてしまった過去があったからです。石垣先生はとにかく簡単に、時折笑いを交えながらテンカラのあれこれを教えてくださいます。講習会で多くの方と出会って仲間も増えましたし、今はテンカラが楽しくて仕方ありません(笑)。
講習会は交流の輪を広げる場でもあります。趣味を通じて知り合った仲間は何物にも代えられない財産です。
講習の前後には、知り合ったばかりの参加者同士で写真を撮り合う場面も見受けられました。
釣りは魚を釣るだけでなく、人と人をつなげてくれる素晴らしい遊び。ひとりの釣りに物足りなさを感じている方は、ぜひとも講習会に参加してみてください。