源流の歩き方とマナー

川の歩き方の基本は、足の裏全体でしっかりと石を踏んで歩くことです。砂が付いたままの靴底は滑りやすいので注意しましょう。

源流域は大きな岩が積み重なった場所がほとんどです。落差も大きく、足を踏み外すと大ケガにつながります。特に不安定な浮き石は危険です。転ぶだけでなく、運が悪いと石に足が挟まれたりします。河原を歩くときは、砂や砂利に埋まった石を見極めて足を置くことです。

足場の話としてもうひとつ、落ち葉を踏むときも注意が必要です。特に入脱渓や高巻きで斜面を上り下りするときは、ひとたび足を滑らせたらケガではすまないこともあります。

マナーの面では、まず先行者がいたら、その上流には入らないこと。本流域などでは釣り下るスタイルもアリですが、渓流〜源流域は釣り上がりが鉄則です。特にポイントが狭い源流域で先行者の上流へ入るのは御法度。悪質なマナー違反です。

源流域の釣り場には、川沿いの林道を通って入渓点まで行くケースが大半です。林道脇のちょっとしたスペースや車止め付近に車が止まっているのは、ほかの釣り人が先に入っている可能性があります。

何台も車が止まっているようなら、川を変えたほうが無難です。もし先行者と顔を合わせたら、ひと言挨拶をして、どこからどこまでの区間を釣るか確認し、そこ以外のエリアに入るようにしましょう。

また、釣り上げた魚が小さい場合はできるだけリリースするようにお願いします。河川によっては規定サイズを設け、これ以下の個体はリリースが義務づけられているところもあります。規定サイズ以下の魚を持ち帰ろうとした人が警察に突き出されたという事例もあるので、くれぐれも注意してください。

大岩が転がる源流域での釣りは他にはない趣があります。きちんとした遡行法とマナーを身に付けて楽しみましょう。

石の上を歩くときは、足の裏全体でしっかりと石を踏みます。

不用意に浮き石を踏むのは転倒のもと。場合によっては大ケガにつながるので注意しましょう。

渓流〜源流域の釣りは釣り上がりが鉄則。間違っても先行者の上流に入ってはいけません。

源流釣行での注意点

川を渡るときは、必ず身体を上流側へ向けてください。下流側を向いていると流れに押されてバランスを崩しやすく、そのまま転倒する恐れがあるからです。また、水中の石の頭には、極力足を乗せないほうがよいでしょう。石によってはヌメリが強く滑りやすいことに加え、それが浮き石であるかどうかの見極めも難しいものです。源流域は水が澄んでいるので、私はあえて石を避け、深みを選んで渡渉することもあります。

次に、入渓する際はくれぐれも無理をしないこと。渓流釣りは数ある釣りのなかでも特に事故が多い釣りです。とりわけ源流域は携帯電話の伝播が届かない場所も多く、滑落して動けなくなったとしても助けを呼べません。危険を感じたら引き返す勇気を持ってください。

入渓点(脱渓点)がわかりにくいときは、色付きの粘着テープを用意しておき、川へ下りた場所の木などに目印として巻き付けておくのも手です。テープは川から上がるときに回収すればOKです。

また、近年では熊に遭遇するケースが増えていると聞きます。熊鈴やホイッスルを携帯しておくと安心です。

川を渡渉するときは必ず身体を上流に向けること。膝を使い、上流側へ身体を傾けられるようにしておくと、うまくバランス取ることができます。

熊の被害が増えている現在、ホイッスルや熊鈴を用意しておくと安心です。

左岸と右岸の選び方

源流域はポイントが小さく、うまく立ち位置をセレクトしないと魚を驚かせてしまい、ポイントを潰してしまうことにもなりかねません。川の左岸側から竿を出すか、右岸側から攻めるかの選択は、非常に重要なテクニックといえます。それともうひとつ、谷が深く草木が生い茂る源流域では、頭上に仕掛けを振り込むスペースを確保することも重要です。

頭上の障害物が少ない開けた渓流域でヤマメを狙うのであれば、ポイントとなる深みの対岸に立つのがセオリーですが、小さなポイントを点で撃っていくことが多い源流域では、どちらかといえば頭上にある障害物の多少で立ち位置を決めるケースのほうが多いように思います。

右側から大きく木の枝が張り出しているようなら、左側に立つとよいでしょう。どんなに気を付けていても、仕掛けを木の枝に引っ掛けたりするトラブルは回避できないものです。移動式天上糸を活用するなどして、ポイントごとに仕掛けの長さを調節するのはもちろん、予備の仕掛けも十分に用意して、トラブルの際も手早く補修ができるよう心掛けたいものです。

雪の深い時期は河原が見えにくいものですが、たとえば流れが蛇行した箇所で、左に切り立った崖があれば右側は浅く、河原があると予想できます。河原から竿を出すために川を切る必要があれば、その下流で対岸へ渡っておくことです。

立ち位置は木の枝などの障害物が張り出している対岸に取ります。障害物の状況により、適時仕掛けの長さを調整するのがトラブルを防ぐコツです。

左岸と右岸のどちらから竿を出すか。適切に立ち位置をセレクトするには、常に上流の状況を見ておくことです。

雪上釣りでの注意点

春先の釣りは、地域によってはまだ雪深い川もあるはずです。白銀の中を流れ落ちる川は息を飲むほど美しいものですが、雪中の釣りは危険がいっぱいです。気温の低い朝はしっかりとした雪でも、日が昇ると溶けて軟らかくなり、大きな石の隙間付近に体重を乗せると、足が深く埋まってしまうことがあります。

特に注意したいのは木の周囲。生きている木の周りは、雪が溶けて空洞になっていることがあります。

また、春先は積もった雪が川へオーバーハングしている箇所も多く見受けられます。不用意に水際へ近づくと、オーバーハングを踏み抜いて落水ということもあります。このような場所で川に落ちると、岸に上がれる箇所がないことも多いので特に注意が必要です。

春先の源流によくあるスノーブリッジ(雪渓)も、崩れるかもしれないという意識を常に持ってください。スノーブリッジの下をくぐるときは細心の注意を払うこと。不安を感じたら高巻きするほうが無難です。スノーブリッジの上を歩くと崩れる恐れがあるので、できるだけ岸側を歩くようにして上流へ向かうようにしてください。

雪中釣りは春先ならではの楽しみ。しかし美しい景色の中には思わぬ危険が潜んでいます。

朝はしっかりと締まっていた雪も、日が高くなると溶けてきます。ちょっとした空洞を踏み抜く恐れがあるので細心の注意を払いましょう。