イワナってどんな魚?

イワナは日本の渓魚のなかでも特に冷水を好む魚で、多くの場合は上流域から源流域にかけてを棲息域としています。ヤマメやアマゴは里川や渓流域でも釣れますが、イワナを専門に狙うのであれば、さらに上流を目指す必要があります。

源流域ともなれば川相も険しく、ゴルジュ帯を高巻きしたり、ときにザイルを用いて急な崖を上り下りするなど、高度な遡行技術を要する場面もあります。テントで野営しながら沢を詰める猛者もいますが、苦労して手にした1尾は格別。人の手が入っていない大自然の中で竿を振る釣趣は、まさにイワナ釣りならではの醍醐味といえるでしょう。

しかし、イワナは山奥へ入らなければ釣れない魚ではありません。前回の釣行記で紹介したように、林道を通ってポイントのすぐそばまで車で入れる川もあるので、まずは気軽にチャレンジしてみましょう。

イワナはときに貪欲で、ヘビやトカゲまで食べてしまうこともありますが、基本的に臆病な魚です。普段は倒木や岩のエグレといった障害物の陰に隠れていて、エサが流れてくるのを待っています。この点は流れの中に定位しているヤマメやアマゴとは大きく異なります。

イワナ釣りの好条件は、水量が上がって濁りが入っているとき。雨が降って水量が上がると活性が高まるのはヤマメやアマゴと同じです。イワナは神経質な魚なので、水が多少濁っているときのほうが警戒心が薄れ、エサへの反応もよいようです。水の引き際、濁りの引き際などは最高の条件です。

イワナは渓魚のなかでも特に冷水を好む魚。ヤマメやアマゴよりも上流を棲息域としています。

上流~源流域がイワナ釣りのメインステージ。手付かずの大自然の中で竿を振るのはイワナ釣りならではの醍醐味です。

川によってはポイントの近くまで道路が整備されており、気軽にイワナ釣りを楽しめます。

イワナのポイント

ひと口にイワナのポイントといっても、水温が低く、イワナの動きが悪いシーズン初期と、水温が上がってイワナの活性が高まる盛期とでは狙い所が異なります。双方を一緒にして説明するとビギナーの方は混乱すると思うので、ここでは早春、まだ水温が低いシーズン初期を想定してポイントを解説します。

先述のように、臆病なイワナは物陰に隠れていて、流れてくるエサを待っています。ヤマメやアマゴであれば流れが集まる場所がポイントとなりますが、イワナは流れ込みの脇にできる緩い反転流が狙い目となります。このような場所は岩がえぐれていることが多く、イワナの着きがよいポイントといえます。このほか、倒木の陰や流れが当たる岩の下などにもイワナが着きます。

盛期ならば瀬尻の流心までイワナが出てきますが、早春は望み薄。イワナの活性が低いシーズン初期は、緩い流れを攻めるのが基本です。

イワナが棲む上流~源流域は、岩が大きく落差のある川相が大半です。渓流域に比べるとポイントが小さい反面、狙い所は比較的ハッキリしているので、流れ込み脇の緩流帯や岩の陰をタイトに狙っていくようにしましょう。

堰堤や滝の直下は、イワナ独特のポイントです。堰堤や滝の内側は深くえぐれていることがあり、ここにイワナが着いています。深く掘れた滝壺であれば、吐き出しのカケアガリにイワナが着いていることがあります。

流れ込みの脇にできる緩い反転流は絶好のイワナポイント。

泳ぎが上手くないイワナは石や岩盤のえぐれなどの物陰に潜んでいます。

流心から外れた岩の凹みでもイワナがよく喰ってきます。

堰堤の下は型物のイワナが着く大場所です。

基本的な釣り方

ヤマメやアマゴに比べ、イワナはあまり泳ぎが上手ではありません。またシーズン初期は動きが鈍く、瀬の中までエサを追いません。したがって、流れの速い流心は避け、流れ込み脇の反転流や緩流帯で、ゆっくりとエサを流すのが基本的な攻め方になります。

流れの筋を狙うヤマメやアマゴ釣りでは、エサを流れの底へ入れて自然に流すことを心掛けますが、イワナ釣りではエサを底に落ち着けて、イワナにじっくり見せるイメージで仕掛けを流します。緩流帯にエサを留めておくために、穂先でオモリを吊るような格好で流すことも多々あり、私はヤマメ狙いのときよりも重めのオモリを選択することが多いようです。

堰堤や滝壺では、攻め方やオモリ使いをきっちり切り換える必要があります。このようなポイントでは、流れ落ちた水が巻き返してできる白泡の中で仕掛けを止め、内側のエグレへ巻き込む流れにエサを入れることを心掛けます。

堰堤直下や滝壺の深みから出てしまったエサに、イワナが喰ってくるのは稀です。軽い仕掛けではあっという間に下流へ吐き出されてしまうので、オモリは必然的に大きなものが中心。5Bクラスのオモリを複数打つこともあります。

シーズン初期の釣りは、流れの緩い場所で、物陰へタイトに、かつゆっくりエサを流すのがコツです。ときとしてポイントとおぼしき場所で、仕掛けを止めるくらいの気持ちで流すとよいでしょう。

イワナの活性が低いシーズン初期は、流れの緩やかなポイントを集中的に狙います。

エサを流れなりに流すというよりは、緩流帯でジワジワと遅めに仕掛けを流し、イワナにじっくりとエサを見せるという感覚。

岩のエグレをタイトに狙って喰わせました。イワナは臆病な一方で貪欲な一面もあり、スイッチが入れば大胆にエサへアタックしてきます。