ポイントの設定法

ヤマメは一定の場所に定位して、流下してくるエサを待ち構えています。したがって、流れが絞れた所や流れの合流点など、エサが集まりやすい場所がポイントとなります。

サケの場合、流れを無視してよいとまでは言いませんが、ポイントを絞り込むにあたって、ヤマメほど流れには依存しません。というのも、川に入るサケはかなりの数に上り、川のいたる所にいて、どこでも喰う可能性があるからです。本稿でモデルケースとして紹介した三面川でも、川一面にサケの姿が確認でき、それこそ迂闊に立ち込むと踏みつけてしまうのでは、と思うほどでした。

サケは川のいたる所にいて、姿さえ確認できればどこでも喰う可能性はあります。

実際には地形によって、あるいは産卵床周りを攻めるか、産卵床から離れた流れのスジを攻めるかなどによって着いているサケのコンディションや型が変わってくるのですが、サケ釣りにおけるポイント設定は、まず「サケがいる場所」「サケの姿が確認できる場所」を探すことが第一歩です。

水が澄んでいるときは、サケが水中を泳ぐ姿が見られるはずです。こんなときはサイトフィッシングの気持ちで竿を出せばOK。水が濁っているときは、サケが反転したときのモヤッとした水面の盛り上がりが目安となります。

サケ釣りは有効利用調査が目的です。入ることができる場所が限定されており、思った場所で竿を出せないこともありますが、魚がいないという状況はほとんどありません。むしろ魚はたくさんいるけれど口を使ってくれないケースのほうが圧倒的に多く、ポイントの優劣という意味では、ヤマメ釣りよりはるかに格差がないといえます。

ポイントを絞り切れないときは、スタッフの方に聞くのもよい方法です。有効利用調査のため、釣れているポイントをこころよく教えてくれるはずです。

水が澄んでいるときはサケが泳ぐ姿を目視でき、サイトフィッシングを楽しめます。

川面の下では、メスをめぐってオス同士の熾烈な争いが繰り広げられています。格闘の水飛沫やサケが反転した際のモヤッとした川面の盛り上がりは、確実にサケがいるサインです。

ポイントによる個体の違い

先にサケの姿を確認できた場所はどこでもポイントになり得ますが、ポイントによって着いている個体に違いが見られます。

産卵床周りには確実にサケが着いていて実際よく釣れるのですが、産卵活動に集中している個体が多く、食性でエサを喰う個体と、威嚇でエサに噛み付く個体が混在しています。産卵床周りのメスは食性で口を使いますが、オスは自分のテリトリーに侵入してくる他のオスを追い払うことに忙しく、あまり口を使いません。

産卵床から離れた場所にいる個体はまだ産卵準備に入っておらず、オス、メスともに食性でエサを口にする個体が多くいます。特にギュッと絞れた流速のある場所には一回り大きいオスが着いており、大物一本狙いであれば、産卵床を避け、あえてこのようなポイントを狙うのもよいでしょう。本稿の撮影でも、産卵床から離れた瀬落ちの流心で、良型のオスを釣ることができました。

周辺よりも白っぽく見える箇所がサケが底を掘ってできた産卵床。

産卵床から離れた流速のある場所は、産卵準備に入っていない大型が口を使うポイントです。

釣り方・一連の手順

それでは具体的な釣り方をご説明しましょう。喰わせ方もヤマメとは異なります。

●振り込みと流し

サケ釣りでは魚の切り身やイカの短冊など、通常の渓流釣りよりはるかに大きなエサを用います。この抵抗の大きなエサを流れになじませるために重いオモリを多用します。重量のある仕掛けを振り込むには、竿に仕掛けの重みを乗せて、しっかりと曲げる必要があります。

仕掛けは自分よりやや上流に投入し、立ち位置に流れるまでになじませます。喰わせの操作はここから。理由は後述しますが、サケ釣りは立ち位置より下流で喰わせるのが基本となります。

ヤマメ釣りでは潜り込む流れにエサを吸い込ませるといった投餌法もありますが、サケ釣りにおいてはさほど気にする必要はありません。はるか遠くにボチャンとエサが落ちても大丈夫です。そのまま狙いとするスジまで仕掛けを引いてきて、流れの中で仕掛けを張ってもエサが浮かないようなオモリ使いを心掛けてください。

仕掛けは上流へ振り込み、立ち位置まで流れる間になじませるようにします。

●喰わせ

投入した仕掛けがなじみ、自分より下流に差し掛かればいよいよ喰わせの操作に入ります。ヤマメ釣りでは流れに乗せた自然な流しが基本ですが、サケ釣りでは強めに糸を張ってエサを先行させ、積極的に誘いを掛けます。サケには食性でエサを喰う個体と、威嚇のためエサに噛み付く個体の2種類がいますが、双方とも常にエサに反応してくれるわけではないからです。

朝一番にやる気のある個体を釣ってしまったあとは、ただ自然に流しただけのエサには反応しないこともしばしばです。透明度の高い河川では、見えているサケの目の前にエサを通しても無視されることも多々あります。

やる気のないサケのスイッチを入れ、エサにアタックさせるには、仕掛けをゆっくり流し、しつこく誘って、できるだけ長い時間エサを見せることです。流れが緩い場所では、穂先を利かせて完全に仕掛けを止めてしまっても構いません。

「流下する仕掛けにドラグをかける」「エサを吹け上がらせる」「仕掛けを止める」といった操作は、立ち位置より上流ではやりにくいものです。先に立ち位置より下流で喰わせると言った理由は、ここにあります。

コツンと手元にアタリを感じたら、思い切ってアワセを入れましょう。サケの口周りは非常に固く、サケ釣りで用いる太軸のハリはなかなか立ち込みません。やり取り中にも追いアワセを入れ、しっかりとハリ掛かりさせるよう心掛けてください。

立ち位置よりも下流に仕掛けが差し掛かったら、強めに張りを入れて積極的に誘います。サケにしつこくエサを見せて、活性のスイッチを入れるよう心掛けましょう。

アタリがあったら思い切ってアワセを入れます。中途半端なアワセはハリ外れの元です。

太軸のハリがサケの固い口にしっかりと立ち込んでいます。ここまで刺さり込めば簡単には外れません。

●やり取りと取り込み

サケ釣りのクライマックスといえるのが、豪快なやり取りと取り込みです。サケのパワーは半端ではありません。まずはしっかりと竿を起こしてタメ、ダンプカーのような疾走を止めることに集中しましょう。

サケの走りを止めたら、次は寄せの操作です。サケは口を開けて首を振ることが多いので、穂先を水面近くまで下げ、サケを集中に潜らせながら上流へ引き上げます。不要に水面上で暴れさせると、ハリが外れることがあります。

サケは非常にタフなので、足下へ寄せてからも一気に走ることがあります。竿でタメ切れないと判断したときは、無理をしないことです。糸のテンションを緩めてやると、サクラマスなどと違ってサケは意外におとなしくなります。その場でじっとしていることもあるので、この隙に足場を移動して、有利な体勢を確保してからやり取りを再開しましょう。

取り込みは、私は大径の玉網で掬いますが、河原がある場所ならズリ上げてしまっても構いません。いずれにしても、サケの頭を水面上に上げ、十分に空気を吸わせてから取り込むようにしましょう。

70cmを超えたサケの魚体は、ヤマメにはない迫力があります。心ゆくまで、勝利の余韻に浸ってください。

ハリ掛かりしたサケは口を開けて首を振ります。竿を寝かしつけて魚を抑え込み、水面上で暴れさせないようにしましょう。

サケが疲れてきたらいよいよフィニッシュ。河原のある場所ならズリ上げてもOKです。

サケはタフなので足下へ寄せてから何度も走ります。十分に空気を吸わせてから玉網へ誘導しましょう。

70cmオーバーの堂々たる魚体。こんな大型が釣れるチャンスは誰にでもあります。