サケ釣りで使用する竿

海で4年の月日を過ごし、川へ入ってきたサケの平均サイズは4~7kg、シーズン終期は10kg近い大物も釣れます。そのパワーは尋常ではありません。サケ釣りで使用するタックルは、竿から糸、ハリにいたるまで、本流釣りよりはるかに頑丈でパワフルなものが必要です。

竿はサケ釣り専用のものをぜひとも用意しましょう。専用ロッドは長さ、パワーともよく考えて作られているので、サケ釣り独特の大きなエサを振り込みやすく、太い糸を張っても安心してやり取りすることができます。

一般的な本流竿とサケ専用竿の違いは、まずパワーが挙げられます。狙う魚のサイズが大きいので、これはごく当然ともいえます。ではサケ専用ロッドは本流竿を強くしただけなのかというと、これがまったくの別モノなのです。最も大きな相違点は、穂先を中心とした“調子”にあります。

本流のヤマメ釣りではミミズやブドウムシ、川虫などをエサに使いますが、サケ釣りでは魚の切り身などの大きなエサが主流で、人によってはエサを目立たせるためタコベイトを併用する人もいます。この大ぶりで重いエサを振り込むためには、止まりの早いしっかりとした穂先が必要です。

また、水中での抵抗が大きいエサを流れになじませ、かつ止め気味にゆっくりと流すために、サケ釣りでは重いオモリを多用します。こんなとき、ヤマメ用の繊細な穂先では、エサとオモリの重みと水流に負けてしまいます。

強めの穂先を支える胴も、不要に軟らかいとブレてしまって使い物になりません。しっかりとした穂先と、これを支えて豊かな粘りを発揮する胴を兼備するもの。これがサケ釣り専用竿の調子です。

現在、シマノのサケ専用ロッドとして「スーパーゲーム スペシャル サーモンZP」「スーパーゲーム ベイシス サーモンNP」の2機種がリリースされています。

「スーパーゲーム スペシャル サーモンZP」は、素材から厳選したサケ釣りのスペシャルモデルです。83-89のズーム仕様は大河川の広い川幅にアジャストしやすく、シャンとした振り調子とパワフルな粘りを兼ね備えています。ズーム機能は取り込み時にも役立ちます。

「スーパーゲーム ベイシス サーモンNP」は求めやすい価格設定ながら柔軟性と粘りがあって、大型のサケに走られてもイナシが利く調子です。ノンズームの8.3mは取り回しやすく、振り込みも楽に行えるので、これからサケ釣りを始める人の最初の1本としてもおすすめです。

北海道の忠類川はさほど広くはありませんが、新潟県の三面川、荒川などはかなりの川幅があります。川幅の狭い河川では8m前後の竿が使いやすく、川幅の広い大河川では9mクラスの長竿が有利です。長短2本の竿を揃えられればベストですが、釣行したい河川の規模を考慮して、扱いやすい長さの竿を選ぶようにしましょう。

河原がなく立ち込んでタモ入れする必要のある場面ではズーム仕様の「スーパーゲーム スペシャル サーモンZP」、河原へ魚をズリ上げられるような河川では「スーパーゲーム ベイシス サーモンNP」という選択もありです。

シマノからリリースされているサケ専用ロッドは「スーパーゲーム スペシャル サーモンZP」と「スーパーゲーム ベイシス サーモンNP」の2機種。どちらも大エサ&大オモリに負けない穂先と、サケの走りを封じ込めるパワーを有しています。

バランスの取れたタックルは想像以上に強いもの。思いっ切り竿をタメ、サケの引きを堪能できます。

サケ釣りの仕掛け

ターゲットは10㎏前後にまで育つモンスターです。一世一代の大勝負で後悔しないためにも、しっかりとした仕掛けで挑みましょう。

●ライン

サケ釣りで使用されている標準的なラインは、フロロカーボン、もしくはナイロンの3~5号です。増水時や後期の10kgクラスを狙うときは、6~10号を使う人もいますが、シマノのサケ専用ロッドを使うのであれば3~5号が最もバランスが取れており、大型が喰っても安心してタメることができます。

慣れた方は本流のヤマメ釣りと同様に手尻を若干長めに出しますが、初心者は竿尻トントンか、やや短めにしておくことをおすすめします。水際に葦が生えているなど足場の悪い所から竿を出すときも同様です。サケはその引きもさることながら、そこに重量プラス魚体が受ける流れの抵抗が加わるので、竿に受ける負荷はかなりのものになります。これを寄せるとなると、サケ専用竿であっても大きく曲がってしまうので、手尻を長くすると取り込みにくくなってしまいます。タフなサケは足下へ寄せてから何度も抵抗するので、寄せたサケに十分空気を吸わせるためにも、手尻は短めにしておくほうがよいでしょう。

私の場合、サケ釣りでは必ずサルカンを使います。サケ釣りで用いるエサは大ぶりで水中で回転しやすく、ラインのヨレを少しでも軽減したいからです。サルカンを使うと、傷んだハリスを容易に交換できるというメリットもあります。

道糸とハリスは同じ号数で構いません。ハリスの長さは50〜60cm。短すぎるとエサの動きが不自然になるので注意しましょう。

フロロカーボンは石ズレに強く、大きな石が入っているポイントに向いています。ナイロンは比重が小さく、トロ場など流れがゆったりしたポイントで、サケにじっくりエサを見せたいときなどに有効です。また、ナイロンは伸びがあるので、手尻を短くしたときのクッション効果も期待できます。

標準的な糸の号数は3~5号。障害物が多いポイントにはフロロカーボン、流れがゆったりした場所にはナイロンが向いています。

エサの回転を防ぐにはサルカンが有効。ハリスを簡単に交換できるのもメリットです。

●ハリ

サケ釣りで使用するハリの条件は2つあります。ひとつは、サケの強い引きに耐えられる軸太のものを使うこと。もうひとつは、エサであるサンマの切り身やいかの短冊を刺したときに、きちんとハリ先が出る程度のフトコロの広さを持ったものです。この2点を満たすものでないと、やり取り中にハリが伸ばされたり、ハリ外れでせっかく喰わせたサケをバラす恐れがあります。

目安としては、サーモン専用として売られているハリの19〜20号。ただ、号数が同じでも製品によって大きさにバラツキがあるので、エサの大きさ(厚さ)を考慮して、適切なフトコロのハリを選ぶようにしてください。

軸太のハリを使うときの注意点は、しっかりアワセを入れることです。サケの口周りは非常に硬いので、中途半端なアワセでは軸太バリのハリ先が立ち込みません。私はやり取りの途中に何度も追いアワセを入れます。アワセが甘くてハリが外れるほど悔しいバラシはありません。追いアワセで外れる魚はいずれ外れてしまうものと考え、アワセだけは確実に行うよう心掛けています。

ハリは軸太で適度にフトコロが広いハリをセレクトします。サーモン専用と謳われている製品なら間違いないでしょう。

サケ釣りでは、サンマの切り身など水流抵抗の大きいエサを使います。また、仕掛けにドラッグ(ブレーキ)を掛けながら、流れよりも遅くエサを流す釣りがメインとなります。大きなエサを流れになじませ、かつドラッグを掛けてもエサを浮かせないために、オモリもかなり重めのものを使います。

私の場合、サケ釣りで使うオモリは最小でも5Bです。エサがなじまなければオモリをどんどん打ち足していきます.ベストのポケットには鮎玉の1.5号までを常備。カミツブシ型のオモリは根掛かりしにくく、底石が複雑なポイントでよく使います。

水流抵抗の大きいエサを流れになじませるため、オモリは5B以上の重めのものを多用します。

流れの押しが強いポイントでは鮎玉クラスの大オモリが必要。根掛かりが多い場所ではカミツブシ型のオモリも有効です。

川へ入ってきたサケには、サクラマスと同じように威嚇でエサに噛み付く個体と、食性でエサを喰う個体の2種類がいます。

産卵活動に入った個体の多くはエサを口にしません。産卵床周りにおいては、オスは侵入してきた他のオスを追い払うことに気を取られており、エサに反応を示すのはメスが多いことを経験しています。産卵床周りでオスが釣れないこともありませんが、これは威嚇の意味でエサに噛み付いていると考えられます。

その一方、川へ入ったばかりで産卵活動に入っていない個体は、海での生活が抜けきらないのかヤマメと同じようにエサを喰います。それこそ数メートルも先からエサに突進してきて、ハリを丸飲みしている個体もいるほどです。

ただし、喰い気満々の個体はごく少数で、多くは目の前にエサを流しても無視します。このような個体に対しては、しつこくエサを見せて食性のスイッチを入れなければいけません。

上記のことからサケ釣りでのエサ使いは、威嚇する個体や喰い気のない個体を刺激する“アピール”と、食性に訴える“味”や“口当たり”を意識する必要があります。

現在、サケ釣りでよく用いられているエサは、サンマの切り身とイカを細長く切った短冊の2つです。ともに水中でヒラヒラとたなびくので、視覚と味覚の双方でサケを誘います。生エサの上にアピール度を高めるためにタコベイトを付ける人もいますが、根が渓流師の私は、生エサオンリーで攻めています。

サンマはスーパーで1本物を購入し、三枚におろしたあと斜めにそぎ切りにします。このままでは身が柔らかくハリ保ちが悪いので塩で締めますが、サケの食性を刺激する目的でおろしニンニクを絡めたり、エビ粉をまぶすといった“ひと手間”を入れることもあります。

イカもスーパーで購入し、7〜8cmの細い短冊状に切ります。イカそうめんよりもやや太いくらいが目安です。これを食紅で染めて使用するのが一般的ですが、薄緑に染めたものも効果がありました。サンマにせよイカにせよ、これが絶対というものはないので、思いついたことは積極的に試してみるとよいでしょう。

エサの使い分けについて、水が濁っているときは白っぽいものがよいなどザックリとした基準はありますが、条件で使い分けるというより、サケの反応を見つつ、目先を変える意味でローテーションしていくほうが圧倒的に多いです。サンマでアタリがなくなったらイカに変えるといった具合で、サケに飽きさせないことだけを意識すれば十分です。

メインエサのひとつであるサンマの切り身。塩で締めたうえ、ニンニクやエビ粉でサケの食性を刺激します。

イカは細めの短冊状に切り、食紅で染めて使用します。水中でフワリと躍る動きがサケのスイッチを入れます。

(次回へ続く)