サケ釣りの魅力

サケは国内で釣れる最大級の遡上魚。北海道の忠類川など一部の河川ではカラフトマスも釣れますが、基本的に釣りの対象となるのはシロザケです。 川で生まれたサケは海へ下り、4年の月日を経て産卵のために母川へ回帰してきます。川へ入ってきたサケは平均して4〜8kg、大きいものは10kg前後に育ちます。

その引きは強烈のひと言で、サクラマスやアメマスなどとは比較になりません。少しでも後手に回れば簡単に竿をのされてしまいます。力対力の勝負はサケ釣りならではの醍醐味。しかし多くのサケは、川へ入ってくるといったん口を使わなくなります。エサに興味を示さないサケのスイッチを入れ、ハリに掛けるためには緻密なアプローチも不可欠です。70cmクラスともなれば1尾取り込むとヘトヘトになりますが、この豪快さと繊細さが同居する釣趣が、サケ釣りの魅力といえるでしょう。

ノベ竿でサケを狙う場合、タックルは通常の本流釣りとはまったく切り離して考えたほうがよいでしょう。相手は10kg前後まで大きくなるモンスターです。シーズン終期の大型になるとヤワな道具ではまったく歯が立たないので、それ相応のものを用意する必要があります。

とはいえ、サケとの格闘で体得した技術は、ほかの釣りに活かせるものも少なくありません。魚が暴れるタイミング、走りを止めて上へ引き上げるタイミングなどを感覚で覚えておくと、サクラマスやヤマメ釣りで思わぬ大物を喰わせても、慌てず対処できるようになるはずです。

国内最大級の遡上魚であるサケ。婚姻色の出た堂々たる魚体には、サクラマスやアメマスとは違った風格が漂います。

サケの引きは強烈のひと言。剛竿をたわわに曲げたやり取りは力対力の勝負です。

何度寄せても、何度浮かせてもサケの抵抗は続きます。1尾掛けるとヘトヘトになります。

サケ釣りのシーズン

サケが産卵のために川へ入ってくるのは秋です。このタイミングで各河川の漁協がサケの有効利用を名目として、サケ釣りの調査期間を設定します(サケ釣りのシステムについては後述します)。その期間はほんの1〜2日から3カ月前後と河川によって様々です。

基本的に川の水温が下がってからサケの遡上が始まるので、寒冷な地域ほど解禁が早い傾向にあります。北海道の忠類川は、8月1日からサケ釣りが可能ですが、本州では10〜11月に調査期間を設ける河川が大半です。総じて期間は短いものの、渓流釣りのシーズンが終わってからサケ釣りが本番を迎えるので、ノベ竿ファンにとっては嬉しい限りです。

ただし、有効利用調査へ参加するためには、事前に申請したうえで漁協や行政の許可を得なければなりません。その手続きには時間を要するので、各漁協のシステムを確認したうえで、数ヶ月前から準備に入る必要があります。

山の木々が色づき始める秋がサケ釣りのシーズン。渓流が禁漁になってからもゆっくり楽しめます。

川に入ったサケにとって秋は恋の季節。伴侶を見つけて産卵活動に入ります。

日本のサケ釣り事情とシステム

基本的に川へ入ったサケを捕獲する行為は法律で禁止されています。ではなぜ一般の釣り人がサケ釣りを楽しめるのかというと、サケが遡上する一部の河川では、サケの有効利用調査を目的として、一定の期間を設けて調査員を公募するからです。漁協を通して行政の許可を得た人は、調査員として漁協が定めたルールに則ってサケを釣ることができますが、一般的な遊漁とは根本的に立場が違うということを、まず認識してください。

サケ有効利用調査が行われている河川は、北海道の忠類川や浜益川、山形県の寒河江川や鮭川、小国川、新潟県の三面川、荒川、五十嵐川、胎内川、富山県の小川、石川県の手取川あたりが代表的な所。このほかにも太平洋側では茨城県以北、日本海側では石川県以北のエリアに、サケ釣りが可能な河川があります。ただし、有効利用調査を休止している河川もあるので、インターネットなどで事前の確認が必要です。

釣行する河川が決定したら、まず有効利用調査員の公募に応募する手続きをします。応募形態はハガキやファックス、インターネットなど漁協によって様々。公募は早い河川で6月1日から始まります。募集人員には人数制限があり、また日にちを指定して許可を出すのが普通なので、釣行日程を決めたうえ、漁協ごとの様式に則って手続きを進めてください。

インターネットで入手できる申込書の一例。河川ごとに申し込みの様式が違うので、事前に確認すること。

行政からの許可を得て、はじめて竿を出すことができます。

サケ釣り河川のモデルケース・新潟県三面川

サケ釣りに際する具体的な手続きの流れを、前回に釣行記で紹介した新潟県の三面川をモデルにご説明しましょう(以下の説明は平成30年実績)。

①申し込み

三面川におけるサケ有効利用調査は、10月1日〜11月30日の2ヶ月間行われます。サケ有効利用調査員は8月1日から8月31日までの期間に募集されます。募集の詳細は、 三面川鮭有効利用調査委員会(三面川鮭産漁業協同組合)、または村上市観光協会のホームページで確認できます。

所定の方法で応募用紙を取り寄せ、必要事項を記入したら、三面川鮭有効利用調査委員会へファックスにて書面を送信します。この際、三面川では調査参加希望日を明記する様式になっているので、事前に日程を決めておきましょう。

募集人員は、10月中は1日あたり50人、11月中は30人と決められています。定員より募集が多く集まった場合は抽選となるので、応募すれば必ずしも竿を出せるわけではありません。ただし、定員いっぱいの日であっても、急な都合で川へ来られない人もおり、人員枠に空きが出ることがあります。この場合はキャンセル待ちという形で竿を出せることもあるので、直近に三面川鮭有効利用調査委員会へ問い合わせてみるのもよいでしょう。

②許可通知

9月上旬になると、三面川鮭有効利用調査委員会から新潟県知事に宛てて、サケ採捕許可書の申請を行います。県知事から調査員の認可が下りたら、三面川鮭有効利用調査委員会より応募者へ参加資格通知書が送られます。これにて事前の手続きは完了です。

③調査当日

当日は午前8時より、河原にある鮭釣り管理小屋前にて受付が始まります。ここで規約遵守の誓約書など必要書類を提出し、調査参加費として5,000円(一般参加者の場合)を支払います。

この後、入川順を決めるクジを引きます。これは前夜からの場所取りを防ぎ、公平を保つための措置です。8時30分の開始時刻になったら、クジ番号の若い人から入川します。

④調査の決まり

有効利用調査における決まりは河川ごとに異なるので、事前に規約に目を通しておくようにしてください。

三面川の場合、調査時間は午前8時30分〜午後3時。持ち帰れるサケはオスが1尾と決められています。オスがそれ以上釣れたときや、メスが釣れたときは、受付時に配布されるネットに入れて生かしておき、巡回してくる漁協の方に回収してもらいます。

午後3時にはすみやかに竿をたたみ、鮭釣り管理小屋へ戻って釣果報告書とアンケートを提出します。名目はあくまでも貴重な水産資源であるサケの採捕調査なので、この手続きは必ず行うようにしてください。

また、三面川ではライフジャケットの着用が義務づけられています。決まりを遵守したうえで、サケのパワフルな引きを堪能してください。

三面川の鮭有効利用調査員の資格通知と誓約書。いくつかの手続きを経て竿を出せるようになります。

朝の受付風景。必要書類を提出した後にクジを引き、引いた番号順に入川します。

あらかじめ目星を付けておいたポイントへ移動。8時30分からはいよいよ実釣です。

三面川の場合、持ち帰れるのはオスを1尾のみと決められています。メスと2尾目以降のオスはネットに入れて生かしておき、漁協の方に回収してもらいます。

(次回へ続く)