気軽に楽しむ和式フライフィッシング

テンカラとは、日本古来の毛バリ釣法です。もともとは職漁師が編み出した釣りで、深い渓筋で長いラインを操る釣風は、どことなくマニアックな匂いが漂います。

しかし近年、国内はもとより海外でもテンカラの人気が高まりつつあります。道具立てがシンプルで手軽なことや、和のテイストが物珍しいということもありますが、その合理的で自由なスタイルが多くの釣り人の心をつかんだからこそ、テンカラはTENKARAとして世界に広まりつつあるのでしょう。

毛バリの釣りといえば、西洋にもフライフィッシングが存在します。しかしフライを自在に飛ばすことは難しく、ビギナーにとって、このキャスティングが入門後に立ちはだかる第一の障壁となっている点は否めません。その点テンカラはちょっとコツを覚えれば、誰でも楽に毛バリを飛ばすことができます。道具を手にしたその日に魚と出逢えることも、決して難しいことではないのです。

他分野の釣りからテンカラに入ってくる人もいます。渓流のエサ釣りを楽しむ傍らでテンカラも楽しむという人はこれまでもいましたし、フライフィッシングを嗜む人がテンカラに興味を持つのも、ある意味自然といえます。しかしこのところは、ルアーなどまったくの異分野からテンカラへ転入する人も増えてきました。シーバスをはじめとするソルトルアーから河川、湖沼の釣りまで熟知し、ルアーの世界では指折りの著名アングラーである辺見哲也さんも、テンカラに魅了されたひとりです。

「実は3年ほど前からテンカラ釣りに夢中なんですよ。普段は渓流のルアーを楽しんでいる仲間がテンカラを始めまして、じゃぁ自分もやってみようかな、と思ったんです」

子供の頃からフライフィッシングを楽しんでいた辺見さんは、当時からテンカラの存在は知っており、面白そうだなとは思っていたそうです。友人に触発され、思わぬところでテンカラ竿を振ることになった辺見さんですが、釣り込むほどに伝統釣法の奥深さを感じ、同時にテンカラ釣りの“自由さ”にも気づかされたと言います。

ルアーマンから見たテンカラ釣りとはどのようなものなのでしょうか。

「ルアーでは釣れない魚が釣れるんですよ。渓流のルアー釣りは基本的に大物釣りだと思っているんです。大きく育って小魚や昆虫などを好むようになった肉食性の強い個体を狙う釣りですね。このような魚は全体の一部分なのですが、テンカラだとルアーに反応しない個体が喰ってくるんです。これは大きな魅力ですね」

辺見さんはルアーフィッシングで渓流に出向くときも、必ずテンカラ竿を持っていくそうです。大物釣りは一発勝負です。近年は大型が減り、終日にわたって攻めてもアタリひとつないこともしばしば。せっかく釣りに来たのだから、少しは魚との出会いを楽しんで帰りたい。こんなときにテンカラのタックルを持っていると、ルアーには出ないヤマメやイワナたちが癒してくれるのです。

また、ルアーやフライからテンカラに入ったからこそ見える世界がある、と辺見さんは言います。本来のテンカラ釣りは、流れの中に無数にあるポイントを「点」で撃っていく釣りです。着水からほんの数秒で喰わせ、水面〜水面直下の表層をテンポよく攻めるスタイルが一般的です。

「もちろん王道ともいえる点を数多く撃っていく釣りもするのですが、たとえばドライフライ感覚で毛バリを線で流したり、ニンフのように水中へ沈めて底付近で動かない魚を狙ったりします。あと、ルアーのように水中を引っ張ることもありますね。アップストリームで打ち込んだ毛バリがよい流れに入ると、スッと水中へ吸い込まれます。ダウンストリームに入ったところでピッ、ピッと小さく毛バリを引くと、これにドカンと魚が出てくることがあるんですよ」

いずれも既存のテンカラにはない釣り方ですが、他分野のメソッドを持ち込み、活かせるところがテンカラの自由さであり、間口の広さであるといえるでしょう。

そんな辺見さんが愛用しているテンカラ竿が、この春にデビューする『メイストーンNW』。国内外におけるテンカラ人気の高まりを受け、ビギナーや他分野の釣り人でも快適に使っていただけることをコンセプトとする、新感覚のテンカラ竿です。

開発に際して最もこだわったのが細身であること。スリムなフライロッドやルアーロッドと持ち替えたときに違和感がなく、スタイリッシュな竿があれば、テンカラがより親しみやすくなるのではないか、というのが出発点でした。『メイストーンNW』は同じ長さの『渓峰テンカラ』より20%近くも細いφ9.5mm(36モデル)となっています。その結果、素材自重も軽くなり、こちらも『渓峰テンカラ』に比べると23%の軽量化に成功しています。細身のブランクスは風切り抵抗が小さく、体感上では実重量より軽く感じるはずです。

Maystone(メイストーン)

調子はラインの重さを竿に乗せやすく、バックキャストのタイミングをつかみやすいパラボリックアクション(胴調子)。よくあるキャスティングの失敗として、バックキャストでラインが伸び切らないままに前に振り始めてしまい、力が上手く伝わらないということがありますが、『メイストーンNW』を使っていると軽いレベルラインでも後ろの伸び切るタイミングをつかみやすいのです。

いくらフライフィッシングより難易度が低いとはいえ、やはり毛バリをラインの重さで飛ばすテンカラは、ほかの釣法とは勝手が違います。『メイストーンNW』はその「なんとなく難しそう」というハードルを、ぐっと低くしてくれるのです。テーパーラインやストレートライン、細めのフライフィッシング用ラインを使っても、しなやかに後方へ運んでくれます。

「ラインの重さを感じやすいパラボリックな調子は、誰でもきれいにラインをターンさせることができるはず。スパイラルX構造を採用している『メイストーンNW』は、細身でありながらネジレ剛性が非常に高いんです。左右のブレが小さいので、思ったポイントへ正確に毛バリを打ち込めますね」

そしてもうひとつ、辺見さんは『メイストーンNW』の特筆点として“感度”を挙げてくれました。「元がルアーマンなので、感度にはこだわっているんです。『メイストーンNW』の穂先には一般的なリリアンではなく、渓流竿と同じ金属製の回転「超感」トップが付いていて、非常に感度がよいと感じました。小さな毛バリは目視しにくく、特に僕は場合によって毛バリを沈めるので、手感に頼る部分が大きいんですよ。水面下のアタリを明確に取れるのはありがたいですね」

天然木をあしらったグリップはフライロッドにも通ずるスタイリッシュなもの。ちょっとした移動のときなどに便利なフックキーパーも装備しました。既存のテンカラ竿とは違った雰囲気を醸し出しつつも、長いテンカララインを楽に扱える調子と、振りの軽さを実感していただけると思います。

「テンカラって難しそうに見えるのですが、フライフィッシングよりはるかにイージーに毛バリをコントロールできるんです。ヤマメやイワナ、トラウトのほか、ハヤなども毛バリに喰ってきますから、魚との出会いは多い釣りだと思います。キャンプのついでに竿を出すのもいい。まずはテンカラ釣りをやってみてほしいですね。これ以上手軽な釣りはないのですから(笑)」

テンカラは自由な釣りです。そして何より、開かれた釣りです。敷居は決して高くありません。

『メイストーンNW』で、まずは毛バリを投げてみてください。テンカラ釣りの魅力に少しでも触れることができたなら、あなたは一生の楽しみを得たことになるかもしれません。

自己紹介

辺見 哲也
1970年生まれ。東京都在住。本格的にルアーフィッシングにのめり込んだのは10歳のころ。時を同じくしてフライフィッシングも始める。ルアーメーカーに勤務の後独立、日本のシーバスガイドとして草分け的な存在となり、現在ではプロアングラーとして活躍。ここ数年はテンカラ釣りにもハマっている。