テンカラ釣りのタックルと仕掛け
テンカラで使うタックルは、「竿」「ライン」「ハリス」「毛バリ」の4つで構成されます。数ある釣りのなかでも、最もシンプルなタックルのひとつといえます。
テンカラの特徴として、まず軽い毛バリをラインの重みでポイントへキャストする点が挙げられます。また、キャストの回数もほかの釣りに比べてはるかに多い釣りです。1日竿を出せば1500〜2000回はキャストを繰り返しますので、道具立てもキャストに特化した独特なものを使用します。
●竿
竿は軽い毛バリを飛ばしやすいテンカラ専用のものを使用します。テンカラは数秒スパンでキャストを繰り返す釣りなので、竿はまず「軽くて取り回しのよいもの」であることがひとつ、そして「正確に振り込めるもの」であること、また「丈夫」であることも重要です。粗悪な竿では振っていて疲れるのはもちろん、毛バリを正確にポイントへキャストできないと、釣りそのものが成立しません。
テンカラで用いる竿において、最も大切な要素が「調子」です。先にも申しましたが、テンカラはラインの重みを利用して毛バリを飛ばす釣りです。なので、テンカラではバックキャストでスムーズにラインを後方へ誘導し、その後のフォワードキャストでは、しなやかな反発で毛バリをポイントへ送り込める調子の竿が必要になります。具体的にいえば、7:3から6:4のやや胴に乗る調子のものがテンカラ竿の主流です。
シャキッとしたエサ釣り用の渓流竿では、硬すぎてバックキャストでラインを引き込めず毛バリをうまく飛ばせませんし、かといって5:5前後の柔らかな胴調子では振った際の遊びが多すぎて、正確なキャストができません。これからテンカラ釣りを始めるならば、必ず専用の竿を用意してください。
長さは釣り場の規模によって決めます。一般的な渓流域では『渓流テンカラ ZL』の3.4~3.8mが使いやすく、源流域などヘッドスペースが限られる場所では『PACK TENKARA(パックテンカラ)ZW』の3.1~3.4m、川幅の広い本流域では使用する仕掛けも長くなるので『本流テンカラ NP』の4.4mがおすすめです。
●ライン
テンカラ仕掛けの最も特徴的なパートです。一般的な釣りの仕掛けでは道糸にあたる部分ですが、テンカラ釣りでは軽い毛バリを飛ばすため、このラインの重量を利用します。テンカラ用のラインには「テーパーライン」「レベルライン」「ストレートライン」の3種類がありますが、いずれもハリスよりも太く、重みを持たせたものです。
テーパーラインとは、ナイロンなどのモノフィラメントラインを数本縒り合わせたものです。ただ、テーパーラインは木の枝にハリを引っ掛けるなどして引っ張った際に、ヨリが緩んでヨレヨレになってしまうのが欠点。そのため現在ではほとんど使われなくなりました。
レベルラインはフロロカーボンの単糸で、現在におけるテンカララインの主流といってもよいでしょう。適度な重みがあって毛バリを飛ばしやすく、傷んだ際の交換も楽に行えます。
テンカラ用として市販されているレベルラインの多くは、視認性を高めるためイエローやオレンジに染色されています。レベルラインは3〜3.5号が標準。これより太いとかえって毛バリが飛びません。
レベルラインは大変優れたテンカララインですが、唯一「巻きグセがつきやすい」という欠点があります。仕掛けは通常円形の仕掛け巻きに巻いて持ち運びますが、釣り場で仕掛けを引き出した際にカール状のクセが付いてしまい、太い糸ほどこの傾向が顕著です。上級者はこれをギュッとしごくなどして真っ直ぐの状態に戻して使うのですが、これを知らない人がレベルラインをカールしたまま使い、うまく毛バリを飛ばせないという光景をよく目にします。
そんなフロロカーボンの泣き所を払拭したのがストレートラインです。ストレートラインとは、新素材の糸を編み込んでコーティングした組糸で、仕掛け巻きから引き出したままでもスッと真っ直ぐに伸びるのが特徴。比重は1.41で、1.14のナイロンと1.78のフロロカーボンの中間的な重さです。
現在はまだまだ普及していませんが、毛バリを飛ばしやすく、トラブルも少ないことから、今後は第三のテンカララインとして認知されていくだろうと思っています。
ラインの長さは竿丈いっぱいが標準。本流域など広い流れを狙うときは長くしますが、一般的な渓流域や源流域ではこの長さでちょうどよいでしょう。
●ハリス
ラインの先につなぎ、毛バリを結ぶ糸で、主にナイロンとフロロカーボンの2種類が使われています。どちらも一長一短ですが、私はフロロカーボンを愛用しています。
フロロカーボンはハリのある糸質で直進性に優れ、毛バリが着水する直前にスッと真っ直ぐ伸びてくれる点が気に入っています。表面もサラッとしていてナイロンのように粘つかないので、水面で糸が重なっても絡みにくく、スルッとほどけます。号数は一般的な渓流域や源流域でヤマメやイワナを狙う場合、0.8号で問題ありません。
ハリスの長さは1mくらいから始めてみましょう。警戒心の強い渓魚を狙う場合、できるだけ遠くからアプローチするほうが有利です。これに照らすとラインやハリスは長いほどよい、ということになりますが、仕掛けを長く取るほどキャストが難しくなります。アプローチの距離と扱いやすさを考えると、竿のグリップエンドの位置にラインの端がきて、そこにハリスを1m結んだくらいの長さが、最もバランスが取れていると考えています。
●毛バリ
近年は多種多様なものが出回っており、初心者からすると、どれがよいのやら見当も付かないと思います。毛バリについては、ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが「何でもよろしい」と申し上げておきます。
私は目の研究をしていますが、魚の視力は人間が考えているほどよくはありません。エサと似た姿形、大きさのものが流れてくると、とりあえず口の中に入れて違和感があると吐き出すことを繰り返しています。したがって、毛バリはエサらしいものであれば、何でも魚は釣れると私は考えています。
ただし、毛バリの大きさ、ハリの大きさは気にしたほうがよいでしょう。フライフック換算で12番を標準として、喰いが渋いときなどはやや小さめの14番のハリを用いた毛バリを用意しておけば、まず困ることはないはずです。
結び
私がテンカラ釣りで使う結びは「二重投げ縄結び」の1種類です。
結びの箇所は「穂先のリリアンとライン」「ラインとハリス」「ハリスと毛バリ」の3箇所。それぞれ手順とスタイルが若干違いますが、結び方自体はすべて二重投げ縄結びになります。詳しくは図を参考にしてください。