テンカラ釣りの魅力
テンカラ釣りとは、昆虫などに似せた毛バリを用いて、主にヤマメやアマゴ、イワナといった渓流に棲む魚を狙う釣りです。毛バリ釣りというと西洋のフライフィッシングを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、テンカラ釣りはリールを用いず、1本のノベ竿に1本のライン、そして1本の毛バリだけで魚と対峙する、我が国独特の釣法です。先ほど対象魚は渓流魚と申しましたが、タックルを太くすれば本流域のニジマスや遡上魚も狙えます。
私が感じているテンカラの魅力は、まず道具立てがシンプルで、気軽に楽しめるところです。仕掛けがシンプルということは、それだけ奥が深いということ。キャストも少し練習すれば決してさほど難しいものではなく、誰でも簡単に入門することができます。
2つめの魅力は、多くの場合、毛バリにアタックしてくる魚が見えるというところ。魚がハリに掛かる瞬間が見える釣りは、さほど多くありません。ここぞというポイントで、狙いどおりに喰わせたときの喜びは格別です。
3つめの魅力は、やはり渓流というフィールドでしょう。清らかな流れと豊かな緑。美しい景色のなかで、鳥の囀りを聞き、季節の移ろいを感じながら竿を出すことは、それだけで心が癒されます。
装備と服装
テンカラ釣りは気軽で間口の広い釣りです。山歩きやキャンプの途中でよさそうなポイントを見つけたら、ちょっと竿を出すのもよいでしょう。こんな釣りではどんな服装でも楽しめます。
ただ、本格的に渓流へ出掛けるのであれば、最低限の服装と装備は必要です。渓流はとても美しいフィールドですが、多くの危険が潜む自然であることを忘れてはいけません。また、ちょっとした装備があるのとないのとでは、釣りの効率や快適さが変わってきます。
安全な釣行のために、楽しい釣行のために、ぜひとも揃えておきたいアイテムをご紹介しましょう。
●ベスト
衣類というよりもタックル入れとして役立つアイテムです。藪の中を分け入ったり、急な斜面を下りたりする渓流域の釣りでは、必要な物はすべて身に付け、可能な限り両手を空けておくのが理想です。ポケットが豊富で収納力の高いベストは、ぜひとも用意しておきたいところです。
●ウエーダー
ときとして流れを切りながら川を遡る渓流釣りでは必需品ともいえるものです。春先や秋など水の冷たい時期に身体を濡らしては釣りどころではありませんし、滑り止めの付いたソールは川の中での転倒を防いでくれます。
軽い布製の渓流用ウェーダーには、シューズと一体になった「ブーツタイプ」と、ウェーディングシューズと併用する「ストッキングタイプ」の2種類があります。
ブーツタイプの利点は、脱ぎ履きが楽なところです。ポイントをこまめに移動する短時間の釣りでは実に使いやすいのですが、長靴型であるためフィット感に乏しく、長時間歩行するような釣りでは疲れやすいのがネックです。
ストッキングタイプは脱ぎ履きに時間が掛かりますが、フィット性に優れ、それこそ運動靴を履いているような感覚で竿を出せます。両者にはそれぞれに長所と短所があるので、この2つを使い分けることができればベストです。
●帽子
日差しを遮るだけでなく、虫や木の枝からも頭を守ってくれます。
●偏光グラス
水面のギラツキを抑えてくれるので、水中の状態を把握するのに便利です。ポイントや魚の様子を見るときはもちろん、川を渡渉する際の安全面でもぜひ着用したいアイテムです。
●シャツ
渓流は木の枝や草が生い茂り、アブや蚊などの虫も多いフィールドです。転倒した際のケガを防ぐことも考慮すると、長袖のシャツを着てなるべく肌を出さないほうがよいでしょう。
●レインウエア
山の天候は変わりやすく、標高の高い所では夏場でも雨に濡れると大変寒いものです。ウェーダーの上に羽織れるショート丈のレインウエアがあると便利です。渓流用ベストの背面には大型のポケットが付いているので、常にここへ入れておくとよいでしょう。
●ベルト
玉網などを差し込んでおくためのアイテムですが、転倒時にウェーダー内への水の浸入を防いでくれるので、安全装備としても必需品といえます。着用する際はきっちり締めておきましょう。
●玉網
魚を取り込むための必需品で、釣果を写真に収めるときにも重宝します。枠の大きさは8寸(24cm)もあれば十分です。