2017.12.15
投げ真鯛釣りの魅力から始まり、前回までにタックルやエサ使い、釣り方の流れをご説明しました。
投げ真鯛入門の最後となる今回は、9月の末に釣行した岡山県宇野での釣りを振り返りながら、具体的な投げ真鯛の攻め方をご説明しましょう。
魚釣りは家を出る前から始まっています。まず釣り場はどこを選ぶか。
直近の情報は多く集めるに越したことはありません。真鯛にせよ、シロギスにせよ、群れが仕掛けの届く範囲に入っていなければ確率はグッと落ちてしまいます。通い慣れた釣り場なら時期によるおおよその傾向が分かるかもしれませんが、知らない釣り場ほど事前情報を綿密にチェックしたほうがよいでしょう。
釣り場が決まれば、次は天候です。前回までに触れたとおり、投げ真鯛釣りは夜釣りがメインとなります。私自身は晴天でも雨天でも、人間が我慢できる範囲の天気であれば釣果に恵まれました。しかし、問題は風です。渡船が出ないような強風は論外ですが、正面や横から風を受ける場所も避けたいものです。
あと、潮回りも確認しておきたいところです。どの潮回りがよいというのは釣り場によって異なるので、一概にこれとはいえません。ただ、どこにもよく喰う潮時というものがあるので、現地のエサ屋さんや渡船屋さんなどに問い合わせてみるのがよいでしょう。
今回私は、上記の条件を総合的に考えて、宇野沖の一文字堤で竿を出すことにしました。心強いことに、現地に詳しい釣友が同行してくれることになりました。夕方に一文字堤へ渡り、翌朝の船で戻ってくるプランです。
渡船の発着港に着いたところで、船長に挨拶がてら直近の釣れ具合を聞きました。どこで釣れたのか、釣れた時間はいつか、数と型はどのくらいか、エサは何かなどを聞いておくと、釣りを組み立てるうえで何らかの役に立つはずです。幸い、私たちが渡る一文字堤でも釣果が出始めたとのことで、予定どおり一文字堤へ渡ることにしました。
釣り場に着いたら、いよいよポイント設定です。
釣友に聞くと、への字に曲がった箇所から堤防の左延長線上にカケアガリがあり、その手前は浅いとのこと。釣果は深みに集中しているとのことなので、釣り座をへの字部分に構え、カケアガリの沖を攻めることにしました。
次は具体的な地形の把握です。とりあえず1本の竿にオモリだけをセットし、扇状に投げて周辺の地形と水深をチェックします。オモリを引いてくると、手前のカケアガリの先、30〜50mほど沖にもう一段カケアガリがあるようです。手前のカケアガリは根掛かりが多いので、沖のカケアガリを本命のポイントとしました。
夜釣りをメインとしながらも、明るい時間帯に釣り場へ入る目的は、まず第一にポイントを把握するため。
ポイントを探る以外にも、場所によっては足下にシモリが張り出していたり、沖にロープやブイが入っている場所もあるので、このような障害物を確認しておき、必要ならば取り込む場所をあらかじめ決めておくことです。
あともうひとつ、足場が見える明るいうちに安全な場所を確保しておくという意味もあります。
荷物はコンパクトにまとめておき、釣り場でスマートに立ち回れるようにしておきましょう。
瀬戸内海は潮位差が大きく、潮が速いうえ複雑に流れるエリアです。
潮がガンガン流れているときよりも、速い流れが緩んだり、止まった潮が動き始めたときに真鯛が口を使うことが多い傾向があります。釣行当日は、19時30分頃が干潮、明けた1時15分頃に満潮を迎えます。時合はこの潮止まり前後に訪れるだろうと予測し、集中力の維持に努めました。アタリがなくなるであろう時間帯は仮眠を取るなどして身体を休め、次の時合に備える予定です。
瀬戸内の釣り場の特徴として、干潮、満潮の時刻と、実際に潮が変わるタイミングが大幅にズレる点があります。
またここ一文字堤のように大小の島が周囲に点在する場所では、湾奥で跳ね返った潮が当たってきたり、島に当たった流れが反転流を作ったり、潮の寄りつきがコロコロ変わったりと、非常に流れが複雑になる傾向があります。同じ潮止まりでも日によって流れが異なりますし、潮が変わるタイミングも違うので、このような変化を逃さないことです。
夕マヅメからしばらくは、チロリに25cm前後のシロギスがよく喰ってきました。
夜釣りの大ギスも好調と聞いていたので、これを専門に狙うのもおもしろそうです。
まず真鯛を喰わせたのは、やや離れた場所で竿を出していた釣友でした。時刻は19時過ぎ。干潮に向けて潮が緩んできた頃でした。型は50cm弱とまずまず。予測していたとおりの時間に真鯛が動き始めたようです。私の竿に待望の真鯛のアタリがきたのは20時頃。干潮からの上げっぱなでした。
エサはコウジ。ズルズルに緩めておいたドラグをジリッと滑ったところでしばらく待ち、頃合いを見て大きく合わせを入れました。道糸が走らなかったのは、真鯛が安心してエサを口にしたからでしょう。型は40cmとやや控え目でしたが、まずは本命の顔を拝めてひと安心です。
2尾目は勢いよくドラグが逆転する真鯛らしいアタリで喰ってきました。道糸が走ったところでゆっくり竿を手に取り、
ドラグを締めて合わせます。釣友が差し出す玉網に収まったのは60cmクラス。秋という時期を考えると十分に良型といってもよいサイズです。
潮止まりのザワザワした流れが上げ潮に変わり、いったん左から右へ走り始めましたが、やがて流れが落ち着きました。この一瞬に喰ってきた1尾です。瀬戸内のように潮が速い場所でも、終始流れが走っているわけではありません。流れる、止まる、を繰り返すなかで、真鯛はちょっとした潮の変化で喰ってくることが多いように思います。
時合が過ぎると、まったくアタリがなくなってしまいました。
こんなときはどうするか。シロギスであればポイントを移動するところですが、真鯛狙いの場合は必ずしもこれが吉と出るわけではありません。
シロギス釣りは足で群れを追いかける釣りです。
しかし、真鯛はシロギスのように大きな群れを作りません。個体数もシロギスよりはるかに少ない魚です。したがって、アタリがないときでも「ポイントにエサを置いて回遊を待つ」という基本は変えません。時々仕掛けを回収してエサを見たうえで、エサ取りが少なく、エサがよい状態で残っているのなら、必要以上に打ち返しはせず、大きな誘いも掛けません。なぜなら、エサを不要に動かすとポイントからズレてしまうからです。
真鯛の回遊ルートを知るために、オモリで底の状態を探ったわけです。また、私は投入ごとにポイントを探して仕掛けを落ち着けているので、そこからエサを離してしまうのはもったいないことです。
喰わない時間帯にもできることはたくさんあります。
ここでひと手間掛けるか否かで、その後のトラブルをグッと減らすことができるのです。そのひとつが仕掛けのチェック。
海底に長時間置いておいた仕掛けは、アタリがなくても傷んでいたりするもの。仕掛けを打ち返すときは必ず仕掛けをチェックし、傷んでいる箇所があれば交換しておくように心掛けましょう。また、遊動ガイドが緩んで回っていないかも確認しておきたいものです。
潮が速くなったときなどは、竿のケアをマメに行わないと、竿数が多いときほど手前マツリなどのトラブルを起こしてしまいます。極端に潮が速いときは4本出している竿を2本に減らすようにすると、オマツリをある程度は回避できるでしょう。