2018.9.25

本格的なシロギスの引き釣りに入門! [ 日置 淳 ]

Vol.2 レクチャー編 / 初めてのタックル選び

本格的な投げ釣りタックルは何が違う?

投げ釣りは数ある釣りのなかでも手軽な釣り。たとえばシロギスを釣りたいとしたら、ワゴンセールで売られているセット竿でも楽しむことはできます。多くの人はとりあえずこのあたりから釣りに入門し、ひととおり釣りを覚えたら、少しずつステップアップしていくものかと思います。

私は小学生の頃から釣りを楽しんでいました。子供のことですから高価な道具は買えませんので、父親に買ってもらった2mほどのセット竿がメインタックルです。仕掛けを投げられる距離も大したことはありませんでしたが、それでも毎日のように竿を振っていたものです。

学生時代はしばらく釣りから遠ざかっていましたが、社会に出てしばらく経った頃、ふと海が懐かしくなって、再び竿を握るようになりました。竿はカーボン製の並継、リールはコップ型ロングスプールの投げ釣り専用モデル。大人になって初めて本格的な投げ釣りタックルを手にしたのですが、少年時代に使っていたセット竿とは比べものにならない軽さと感度、飛距離には驚いたものです。

本格的な投げ釣りタックルは重いオモリをキャストすることができ、攻略エリアが飛躍的に広がります。

チョイ投げというジャンルが確立されている近年では、投げ釣りにも様々なスタイルがあります。ボーダレスのようなライトタックルの釣り、ショートロッドのアクティブな釣り、もちろん、私が少年時代に楽しんだセット竿の釣りも、立派な投げ釣りです。しかし、本格的な投げ釣りタックルだからこそ可能な攻めも、確かに存在するのです。

本格的な投げ釣りタックルは重いオモリを背負うことができ、他のどのタックルよりも遠投性能に重きを置いて設計されています。150m、200mといった超遠投は、専用の投げ釣りタックルでないとまず不可能でしょう。竿、リールとも軽量化が進み、一日振っても疲れにくくなりました。また感度も高められており、PEラインとの相乗効果で、遠くのポイントで喰わせたアタリも明確に手元へ伝わります。

「もっと飛距離がほしい」
「シロギスの小気味よいアタリを楽しみたい」


こう思ったときが、タックルをステップアップするタイミングかもしれません。本格的な投げ釣りタックルは攻略エリアを広げ、釣りの楽しみ、そして可能性を飛躍的に高めてくれるはずです。

初めての竿・どう選ぶ?

投竿には並継竿と振出竿の2種類がありますが、シロギスの引き釣りに特化した場合は、並継竿がおすすめです。サーフの釣りに砂は付き物です。竿が直接触れなくても、風に舞った砂が竿の表面に付くことがよくあります。振出竿は携行性が高く、竿を複数出す釣りには便利ですが、節を仕舞う際に砂を噛んでしまうことがあるので、サーフからの釣りを念頭に置くのであれば、並継のほうが砂噛みなどのトラブルが少ないといえます。

シロギス釣りは竿1本でポイントを探り歩く釣りであり、竿に対しては携行性や利便性よりキャスティング性能が重視されます。したがってシロギス釣りには、振出竿よりも軽く、キャスティング性能の高い並継竿が向いているといえるでしょう。

1本の竿で広範囲を探るシロギス釣りには、キャスティング性能の高い並継竿が向いています。

竿の号数(硬さ)と長さについては、釣り人の体力によってベストなものが変わってきます。竿は硬いほど、また長いほど遠投が利きます。ただしこれは、竿をしっかりと曲げ、オモリに反発力をロスなく伝えられればの話です。

硬い竿は反発力の強さゆえに、ビギナーにとってはリリースポイントがつかみにくいという側面があります。また長い竿をしっかりと振り切るには、それなりの体力とコツを要します。竿の硬さは使用するオモリの号数(重さ)とも密接に関わっているので、オモリとのマッチングも考えて選ぶ必要があります。

初めての1本には硬すぎないDX〜CXクラスがおすすめ。竿選びはオモリとのマッチングも大切です。

竿に合わせるオモリの号数は、パッケージなどに明記されている標準オモリ負荷が基準です。EXなら25号、DXなら27号、CXなら30号。このマッチングであれば、オモリをストレスなくキャストすることができます。

マイルドな調子設定でキャストしやすい「サーフゲイザー」。入門用ロッドとしては十分以上の性能を有しています。

ただ、投入した仕掛けを引いて喰わせることを考えると、標準オモリだと穂先がもたれてしまい、そこから乱暴に引くとオモリが海底で跳ねて魚を警戒させてしまうことがあるので、竿の標準オモリ負荷よりもワンランク軽いオモリが、実釣上の適正バランスといえるかもしれません。

初めての1本としておすすめなのは、「サーフランダー」「サーフゲイザー」といった、マイルドチューンが施された投竿です。求めやすい価格帯であることに加え、先調子ながらやや胴に入るマイルドな調子設定により、リリースポイントをつかみやすいのが特長。キャストの基本を覚えるのに適した竿のひとつです。7点ガイド、キャスコングリップなど、上級機種譲りの本格仕様です。

7点ガイドなど上級機種に引けを取らない仕様。軽量で楽に取り回せます。

初めてのリール・何を選ぶ?

リールは投げ釣り専用のスピニングリールが出ているので、このなかから予算に合ったものを選ぶとよいでしょう。

投げ用リールは大径&浅溝のロングスプールが搭載されており、道糸の放出抵抗が抑えられています。この構造のおかげで、200mオーバーの超遠投が可能になるわけです。

投げ用リールにはドラグ付とドラグレスの2種類があります。
シロギス釣りは大型外道でも掛からない限り、道糸を出してやり取りすることはありません。したがって、シロギスを専門に狙うのであれば、軽量のドラグレスタイプが適しています。最初の1台としておすすめなのは「サーフリーダーCI4+」です。

「サーフリーダーCI4+」の特長はノイズの少ない滑らかな巻き心地。竿サビキ、リールサビキの双方に対応し、クリアなアタリを楽しめます。

軽さは上級機種に一歩譲りますが、手元へ重心を近づけて体感重量を軽減するGフリーボディを採用し、操作感は軽快そのもの。高級感あるデザインも釣り人の心をくすぐります。

このリールの特筆点は、X-SHIP構造、そしてHAGANEギアと高強度真鍮ピニオンギアのコンビネーションがもたらす滑らかな巻き心地にあります。近年は竿で仕掛けを引く「竿サビキ」のほか、竿を固定したままリールを巻いて仕掛けを引く「リールサビキ」も多用されるようになりました。雑音の少ないスムーズな巻き心地は、アタリを明確にキャッチすることができます。ハンドル1回転でラインを約83cm巻き上げられるギア比は、サビキ速度と仕掛け回収スピードのバランスが取れた設定です。

一般的なサーフで0.8号前後の道糸を使うときは極細仕様、根の多い場所など太めの道糸を使うときは細糸仕様が使いやすいでしょう。サイズ(ストローク長)は35mmを標準として、軽さを重視するなら30mmがおすすめです。

ラインローラー部には水の浸入を抑えるXプロテクトを採用。スムーズな巻き心地が長きにわたって持続します。

スプールの中心線とロッドが平行になるパラレルボディ設計。道糸が竿を叩きにくく、飛距離が向上します。

「サーフリーダーCI4+ 30」

仕掛け&装備

道糸&力糸

投げ釣りで用いる糸は、「道糸」と「力糸」の2つで構成されます。
道糸はリールに巻き込んでおくメインラインのこと。かつてはナイロンやフロロカーボンが使われていましたが、現在は高感度で直線強力の高いPEラインが定番です。

仕掛けを遠投することを考えると、細いほどキャスト時の放出抵抗が小さく有利といえますが、不慣れなうちから極細ラインを使うと、高切れなどのトラブルが頻発する恐れがあります。これから入門するのであれば0.8号あたりから始め、キャストに慣れてきたら細いものへ移行するとよいでしょう。道糸は最低でも200mは巻いておくようにしてください。

力糸は道糸の先に結び、キャスト時の負荷を受け止めるための糸で、道糸よりも数段太いものを用います。PE5号前後の単糸を使う人もいますが、後者は道糸との結びコブが大きくなってしまうのが難点。「KISU SPECIAL テーパーちから糸 EX4PE」 「SPINPOWER テーパーちから糸 EX4PE」など、テーパー状の力糸専用ラインのほうが結びコブが小さく収まり、ガイドへの引っ掛かりも抑えられます。

「KISUSPECIAL EX4PE テーパー」のように道糸とテーパーラインが一体になった製品もあるので、これを利用するのもよい手です。ただし、高切れに備えて予備のスプールを用意しておくか、予備の力糸を持ち歩くようにしてください。

「KISU SPECIAL EX4 PE テーパー」はテーパー力糸一体型の道糸。力糸を結ぶ手間を省略でき、結びコブがないぶんトラブルも低減します。

高切れはベテランでも完全に避けられません。予備の力糸を持ち歩くと、いざというときに手早く補修できます。

予備スプールを用意できればベスト。高切れしてもスプールを交換するだけですぐに釣りを再開できます。

テンビン(オモリ)

投げ釣りではオモリにL字型のテンビンを組み合わせて使用します。テンビンには「投入時の仕掛け絡みを防ぐ」「テンビンのスプリング効果で喰い込みを促す」という2つの役割があります。オモリとテンビンが一体になった固定テンビン、アタリがあると道糸がすり抜ける遊動テンビンなどいくつか種類がありますが、現在は固定テンビンの愛用者が多いように思います。

オモリは重いほど遠投が利き、潮にも流されにくいのですが、不要に重いオモリは砂に潜ってしまい、スムーズに引けなくなってしまいます。またオモリが重くなるほど身体に負担を掛けるので、ポイントまでの距離、潮の速さなどを総合的に考えて、使用するオモリの号数を決めることです。

投げ釣りではL型のテンビンを用います。喰い込みのフォローを期待するならスプリング効果の高い固定テンビン(写真右の2本)、アタリを明確に取りたいときは遊動テンビン、もしくは半遊動テンビン(写真左)が向いています。

平均的なオモリの号数は25〜27号あたりでしょうか。このくらいの重さがあれば、ベテランクラスになると8色(200m)以上投げる人もいます。ポイントが近ければ20〜23号の軽いオモリでも十分ですし、体力に自信のない人は軽めのオモリを使用するほうが身体への負担が軽減され、釣りそのものに集中できるはずです。

仕掛け

仕掛けは釣り人のこだわりが如実に表れる部分です。
ハリ数、ハリの号数や形状、ハリスの長さや間隔など、バリエーションを挙げたらキリがありません。どんな仕掛けがよいかは状況によって異なるし、釣り方によってもベストな仕掛けが変わってくるので、一概にこうと言えないのが仕掛けの難しさであり、面白さでもあります。

仕掛け使いは誰もが悩む部分なので、自分なりの使い方が見つかるまでは、まず市販の完成仕掛けを使ってみることをおすすめします。出来合いとはいっても近年の仕掛けは作りがよく、個人的にはヘタに自作した仕掛けよりもよく釣れると思っています。

自分なりの仕掛けが見つかるまでは完成仕掛けを使うとよいでしょう。左の2つは50本の連結仕掛け。好みのハリ数でカットし、モトスを結び足して使います。

仕掛けが長いほど、またハリ数が多いほど絡みやすいので、まずは3本バリ仕掛けから始めてみて、扱いに慣れてきたら5本バリなどハリ数の多い仕掛けにチャレンジしてみるとよいでしょう。

ハリの形状は様々なものが出回っていますが、シロギス用を大きく分けると「袖型」と「キツネ型」の2種類。シマノのハリでいえば、前者が「掛けキス」、後者が「攻めキス」になります。

高活性時はバレにくさを優先してフトコロの深い袖型、低活性時は吸い込みを重視してフトコロの狭いキツネ型、というのが一般的な使い分け基準。号数は6号を中心として、小型が主体のときや喰い渋り時は小さく、良型狙いや喰いがよいときは大きくするのが一応のセオリーです。

ただ、これらはあくまでも目安。魚の喰いをみて、掛からないようであれば積極的に仕掛けを変えていきましょう。私自身、アタリがあっても掛からないときに、ハリを大きくしてよい結果が出たことが何度もあります。

仕掛けはハリ数が多くなるほど扱いが難しくなります。はじめは3本バリあたりから慣れていくとよいでしょう。

クーラーボックス

仕掛けとは関係ありませんが、クーラーボックスは必需品のひとつといえます。本来は釣果やエサ、食料の保存がクーラーボックスの役割ですが、サイドボックスなどを取り付けることによって予備の仕掛けやオモリを収納することができ、タックルボックスとしても役立ちます。とりわけシロギス釣りは歩く釣りです。荷物をコンパクトにすることによって、釣りの能率もグッとアップします。

「フィクセル・サーフキススペシャル」は、サイドボックスや竿掛け、エサ箱、オモリホルダーなどがセットになった投げ釣り専用のクーラーボックスです。オプションのアイテムも豊富に揃っているので、自分好みにカスタマイズするのもよいでしょう。

投げ釣りに特化して機能を高めた専用クーラーボックス。予備の仕掛けやテンビンをコンパクトに収めることができ、釣りの効率もアップします。

その他にあると便利なもの

重いオモリでキャストを繰り返すと、道糸をリリースする人差し指に負担が掛かります。指先を保護するフィンガープロテクターはぜひとも用意したいものです。

シロギス釣りではヌメリの強いガッチョ(メゴチ)や、ときとしてゴンズイなどの毒魚が釣れることがあります。こんなときのために。魚に触れずに済む「ライトフィッシュグリップ」があると便利です。
釣り場を車で移動する際、履き物や荷物の砂を払うためにブラシを用意しておくと車内を汚すこともないでしょう。

指先を保護するフィンガープロテクターはぜひとも用意しておきたいアイテムです。

vol.3に続く