2020.10.02

“投げる楽しさ”を多くの人へ THE・遠投ディスカッション [草野満&日置淳]

Vol.1 石川県・千里浜釣行記

数釣りの聖地で本格的キャスティングアングラーの共演

石川県千里浜。
北陸エリアはもちろん、全国に名を馳せるシロギス釣りの聖地である。盛期には5連、6連は当たり前。10本バリ仕掛けにパーフェクトという離れ業も、現実的なレベルで起こりうる。

8月下旬、未明の千里浜に2人の名手の姿があった。
草野満。ジャパントップキャスターズトーナメントで優勝すること7回。シマノ投げインストラクターのなかでも指折りのパワーキャスターである。遠くにしか魚がいない状況下では、草野さんに釣り勝てる人はそう多くはないだろう。第24回シマノ・ジャパンカップにおいても己のスタイルを押し通し、超遠投で良型をまとめて優勝を成し遂げた。
日置淳。シロギスから大物釣りまでこなす投げ釣りのオールラウンダーとして知られるが、学生時代からスポーツキャスティングに取り組んでおり、その美しいキャスティングフォームは定評。近距離では緻密に攻め、遠距離でも確実に魚を付ける釣技は見る者を唸らせる。

今回は、キャスティングの楽しさと飛距離を伸ばす秘訣を伝授していただくためにセッティングした旅。それぞれのキャスティング理論を語っていただく前に、まずは久々にお二人で竿を振っていただこうという次第である。新鮮な夏の陽光が差し込み始めた。実釣開始である。

日置淳、草野満。ともに日本を代表する本格派キャスターである。今回は北陸が誇る名浜・千里浜で竿を並べた。

千里浜は能登半島西岸に位置する全長約8kmの砂浜。秋には20cm級が数釣れ、県外からも多くの釣り人が訪れる。

朝イチから穂先に激震が走る

「千里浜は全体的に浅い釣り場なのですが、シーズンになるとシロギスが大挙して近いポイントまで入ってくるんです。毎年6月頃から釣れ始めて、ピークは9月中旬から10月中旬にかけてでしょうか。今回は8月下旬で、まだ小型が多いと思いますが、あと1カ月もしたら20cmオーバーが連で喰ってくると思いますね。非常に広い浜ですし、ここは普通車でも砂浜を走れる『千里浜なぎさドライブウェイ』が通っていますから、気軽に移動してフレッシュな群れを探すことができます(草野)」

富山県在住の草野さんにとって、千里浜はホームグラウンドのひとつ。勝手知ったるところだ。

夜明けと同時に釣りをスタート。高水温による活性低下が予想される中、じっくりとサビいてシロギスのアタリを待つ。

まずは様子見と5色付近へ仕掛けを投入した日置さんが、一投目からシロギスの魚信をとらえた。巻き上げてみると20cmクラスの3連。やや遅れて仕掛けを投じた草野さんも同クラスを2連。シロギスの活性はなかなかのようだ。

一投目からシロギスのアタリが入る。パワーキャスターは喰わせのスキルも高い。

ポイントは2〜3色付近と近い.遠投という釣行のテーマとは違ってしまってはいるが、楽に魚が釣れるに越したことはない。競技会で活躍する2人である。喰わせのパターンを掴むのも早い。時折15〜17cmの小型が混じってくるものの、連でハリ掛かりする数が増えてきた。

ポイントは2〜3色と近い。喰わせのパターンはつかんだ。日置さんは追い喰いを待って7連で本命をゲット。

「8月下旬といえば気温も水温も高い時期で、海中の酸素量が少ないことから、シロギスが食い渋るケースも多々あるんです。ひょっとしたら厳しい釣りになるかもしれないと思っていたのですが、今朝はちょっと涼しかったせいなのか、結構喰い気はありますね(日置)」

滑り出しは上々といったところだ。

富山県在住の草野さんにとって千里浜はホームグラウンドのひとつ。竿出しから間もなく貫禄の5連掛け。

良型を選んで釣る

その後も快調に釣れ続けた。
「3色付近にカケアガリがあって、その手前はカケ下がってやや深く掘れているんです。このカケアガリとカケサガリでバタバタっと喰ってきますね。ちょっとここで良型に狙いを絞ってみようと思います(日置)」

狙いは3色付近のカケアガリとその手前のカケサガリ。日置さんは絶妙なサビキコントロールで良型狙いに徹した。

ここで日置さんはエサのイシゴカイ(ジャリメ)を大ぶりにハリ付けし、サビキの途中に入れる「ステイ」の時間を長く取る攻めに切り換えた。仕掛けを動かし続けるとウブな小型が先に喰ってしまう。良型を選んで釣るには、時折仕掛けを止めて「喰わせの間」を作る必要があるとのことだ。

しかし仕掛けを止めすぎると、ハリ掛かりしたシロギスが暴れて絡んでしまう。適度にブレーキを掛けて仕掛けを伸ばせるカケアガリはまだマシだが、カケサガリではサビキの制御が利かないため、特に仕掛けが絡みやすい。

良型狙いには大エサが効く。小ぶりなイシゴカイであれば1匹掛けにする。

「なので、最初の1尾はなるべく先のハリに喰わせるんです。先バリに魚が付けば仕掛けがピンと張るので、ステイさせても絡みにくくなりますからね」
サビくスピードは、エサ取りが追いつけずシロギスだけが喰える速度が基本とされているが、先バリにシロギスを喰わせるためには、シロギスがエサに追いつける範囲で最も速いスピードでサビくのがコツとのことだ。

時折遠投で沖を攻めてみるも、アタリは近場に集中した。草野さんの豪快なフルキャストもこの日は封印。

いつもなら遠投で手付かずのポイントを攻める草野さんも、オモリを軽めの25号にチェンジして3色付近を集中的に狙っている。アタリがあったらスローなサビキに変える。追い喰いのアタリが入っても、巻き上げたい気持ちを抑えて待つ。大きなアタリが何発か入ったところで巻き上げると、波間からシロギスがゾロリ。こんなシーンが何度も繰り返された。

快調に釣り続ける日置さん。昼前には束釣りに届きそうなハイペースだ。

離岸流の出スジを探って連掛けを堪能

この日、2人が使用したロッドは「スピンパワー並継」。草野さんが405BX+、日置さんが405CX+というセレクトである。

さらなる良型と連掛けを目指し、離岸流付近に狙いを移す。斜めに仕掛けを投入し、潮の出スジを探った。

「かつてはAXクラスの硬い竿をメインとしていたのですが、最近はワンランク、ツーランク軟らかいアイテムを使うことが多くなりました。AXというのは重いオモリをフルキャストして少しでも遠くへ投げるための選択ですが、この『スピンパワー』をはじめとする近年の竿は、BXクラスでも同等の飛距離を出せるんです(草野)」

「『スピンパワー』はフィールドを選ばず、遠投、近投のどちらにも対応するオールラウンドなロッドです。今日は近くで釣れていますが、仮に近くで釣れなくなって遠投に切り換えても、解像度の高い攻めができるんです。ひと昔前の投竿はピンピンに胴が張っていたものですが、『スピンパワー』は振った力に応じてギュッと曲がり込み、気持ちよくオモリを飛ばすことができますね(日置)」

日置さんの狙いが的中した。ステイを長く取った巧みなサビキに連掛けを連発。

草野さんも良型を連掛けして高笑い。「9月中旬〜10月中旬は20cmオーバーが揃いますよ」

本格派として知られる草野さんと日置さんである。できれば渾身のフルキャストを見たいところだが、どうやらこの日は超遠投の出番はなさそうである。

釣りをしながら常に周囲を見渡していた日置さんが、おもむろにクーラーボックスを担いで釣り座を移動した。移動先の正面沖にはやや波立ちがある。どうやら離岸流があるらしい。

日置さんは斜めにキャストし、離岸流の出スジに沿って仕掛けを引いてくる。例のステイを長めに取ったサビキである。
「よっしゃ!」
そんな日置さんの声に振り向くと、仕掛けには良型が8連でズラリ。ここから日置さんの連掛けショーが始まった。

技ありの8連掛け。昼を待たずに竿を収めたが、それでも100尾は釣っていただろう。

瞬く間に2人のクーラーボックスがシロギスで埋まっていく。「もういいでしょう」と竿を収めたのが午前11時前。おそらく日置さんの釣果は100尾を超えていただろう。

この後、草野さんと日置さんに遠投の魅力を存分に語っていただいた。その模様は次回からたっぷりお伝えしよう。

波打ち際には小型ながらシロギスの姿が見られた。ベストシーズンにはさらに近距離で釣れるようになるはず。

  • 草野さん、日置さんともに竿は『スピンパワー』を使用。BX+、CX+といった軟らかめのアイテムでも、7色以上の飛距離を出せる。

  • リールも揃って『フリーゲン』の35極細仕様がメイン。Xプロテクトを採用し、飛沫や砂が舞うサーフの過酷な環境下でも滑らかな巻き上げが維持される。

  • メインラインは高比重で波に取られにくい『KISU SPECIAL G5 PE』の0.6号、力糸は『SPINPOWER テーパーちから糸 EX4 PE』の0.8〜7号。仕掛けは良型に備えて『掛けキス』の6号を選択した。

vol.2に続く