
誰も言わないから申し上げたい竿の取り扱い術
へら竿、特に長尺軽量モデルは他の竿に比べ、極めてデリケートです。
扱い方次第で製品寿命は大きく延びます。
ぜひ、名手の助言を参考にしてください。
何気ない動作の中に、破損事故の原因がいっぱい!
竿のトラブルは、注意をすれば避けられるケースが大半だと言われています。
たしかに名手たちから、めったなことで破損の修理依頼はありません。
そこで実際に起こったトラブルの報告をご紹介させていただき、取り扱いのアドバイスとして名手の言葉を添え、ここであらためて使用上の注意を呼びかけたいと思います。
はやる気持ちを抑えて、桟橋・舟・野釣り場で要注意!
『カーボンロッドは丈夫』であることに変わりないのですが、何をしてもいいというわけではありません。
丈夫であることを過信しなければ、ほとんどの折損は防げます。
伊藤さとし氏は「桟橋や舟、岩場の上には不用意に竿を置かないようにしてください。そのときは折れずとも亀裂ができ、力が加わったときに破損します」と説きますが、多くの修理依頼品を確認しても、その傾向があります。亀裂から折れるので、原因である亀裂に気づけないことも不注意を繰り返す理由といえるでしょう。
例えば釣り桟橋で、タナを変えるためにウキをずらそうと竿を手繰ったとき、後方では、桟橋の縁、フラシ掛けなどで塗装面が削られて著しく一部の耐久性を低下させてしまっていることがあります。桟橋だけでなく、舟釣りの場合も舟縁、オールのクラッチで同様のことが起こります。
傷を防止するために、必ず手元から竿を抜き、傷つきにくいところにパーツを置きながらタナを変更して、継ぎ直すように心がけてください。
舟釣りで長竿を振ることの多い名手は「舟の上でタナを調整するとき、抜く作業もトラブルを起こしそうだと不安になる人もいるでしょう。竿尻を後ろへガリガリやるくらいなら、まだ水に入れて(水面に浮かべて)しまう方が傷つきにくいですよ。(※ただし握りは防水仕様ではありません)」と、とにかく硬い物にかかわらせないように注意している様子です。
塗膜を剥離する傷の問題だけではありません。握り部は素材部(本体部分)よりも重量があるため、握りのすぐ上をぶつけた場合、ハンマー効果により、まるで叩き折ってしまうような亀裂が生じます。中澤岳氏は「竿はガラス細工のようなもの。落とせば割れる、当てれば欠けると思ってください」といいますが、そうした配慮で、すべてのへら竿を扱っていただけるように強く望みます。
絶対避けたい、桟橋でのガリガリ
手狭なところだからこそ要注意
後方確認、石には注意
草などをクッションとして活用
竿を保護して運搬するはずのロッドケース内で、竿が傷ついてしまう場合もあります。ロッドケースは1~3層ケースがあり、スペースごとに分けて収納できます。同じ層に竿同士を収納しているならば問題はありません。しかしハリス計測具(ハリを掛ける金具が当たる)、ウキ箱とハリスケース(木製の箱形で角が当たる)、パラソルの柄(金属製でネジが付いている)などと混載した場合は当たって竿が傷つきます。使用しない竿までロッドケースへ詰め込んでパンパンに膨らませているのも、決していい状態ではありません。
車で例会へ行くとき1台に複数人が乗り合わせることになり、人数分のロッドケースを重ねて運んでいる様子を見かけますが、下のロッドケースは荷重がかかり、ケース内の竿に金具などが当たって擦れていたら、ノコギリを引くように深く傷が入ります。すべての製品でいえる問題ですが、わかりやすく“長尺を軽量化させるため極力素材を薄く仕上げた製品が、潰されながら金具に擦られている”のを想像してください。
吉田康雄氏は「私はドボン仕掛けの釣りもしますから、重めのオモリが竿に当たることすらも気にしています」と語ります。釣りでは大胆に振って、絞っていただき、それまでの扱いは慎重に。へら竿の折損は気分を落ち込ませます。『すてきな釣行の思い出をつくる釣具へ愛を』シマノからの切なるお願いです。
使用後は、竿を拭いて水気を取り収納してください。穂先は特に、太径から細径に向かって拭い、逆方向は避けてください。細い先から太い元へ向かって拭くと、折れる危険があります。乾燥収納で塗膜が健全に保たれます。
多くの人が、想定外の大きな魚(多くはへらぶな以外の魚)を取り込もうとして、ある程度、竿が立ったときに強く引き込まれ、片手で握り部を持っているだけでは耐えきれず、両手を使った“拝み取り”態勢を経験します。
このとき“元竿の中央部”を支えたために折損する場合もあります。小山圭造氏は「魚が逆を向いているとき強引に引かない。竿をためることで魚の走りは止まります」と語りました。萩野孝之氏は「釣技として上手にバラすこともひとつの方法です。へら竿はへらぶな以外に折られていることが多い」とも話しています。
竿先を水へ深く入れてアワせたり、向かい風の振り込みで竿を折損することがあります。𠮷田康雄氏は「水や風の抵抗に対して急操作は強烈な衝撃となり竿を傷めます。向かい風ならばパワーロッドを選びます」とのこと。
喰い渋り打開の基本は、とりあえず“竿を長くすること”です。その竿交換で、うっかり竿掛を短尺設定のまま交換すると、長尺にしたとき数本分も浸してしまい、同じように力強くアワせて元竿を折損する場合があります。
水の抵抗は想像以上に大きく、急な操作は予想以上の強い衝撃を生じます。
製品、尺数に限らず竿掛は長い方が良いと小山圭造氏。「長い分には竿先が入りすぎないから折損防止になります。短い竿掛に長めの竿を乗せると竿尻が上がり、このふらつきが原因となる問題も起こりますよ」
「スレた魚をフラシへ入れない意思」を表して、玉網を使用せず仕掛けをつかんで引き寄せる人がいます。仕掛けが短いと穂持ちが大きく曲がっているうえに不用意な力が加わって折損の危険が高まります。瞬間的に強い力で鋭角に竿を曲げる行為は、竿を傷めます。できる限り、竿の長さに合った玉の柄と組み合わせた玉網で取り込むようにしてください。
面倒と思わず、しっかり玉網を使い、フィニッシュまでへら竿を大事にしながら楽しみましょう!
巻きグセ防止と手早く収納できることから、竿袋へ仕掛けを巻く釣り人は多いのですが、このときに口栓をしない人もいるようです。軽視しがちですが口栓は、穂先の飛び出し(竿袋内で折損)や大事な継部の玉口が欠けないように防止している役割を担っています。ちなみに竿袋へハリを掛けるとき、ハリ先が竿へ当たらないよう横から縫う形で刺してハリ先を外へ出すのがオススメです。
継ぐときに、玉口へ指を当てて差し込むことでズレて傷つくことが防げ、玉口に触れるからゴミや砂の付着も気づけます。※慌てて竿交換した場合や、根掛かりなどで直線方向に竿を引いたときは“込み”を確認してください。