『スーパーゲーム刀』は、本流釣りのカリスマ・細山長司さんのこだわりを形にした本流ヤマメ・アマゴ竿のフラッグシップモデルである。細山さん自身が「常に完璧を目指した」と言い切る歴代の刀は、一切の妥協を許さない氏の分身ともいえるものであった。三代目『スーパーゲーム刀』のプロトを細山さんのもとへ届けたのは2017年3月のこと。しかしこの後、体調の不良を訴えた細山さんが入院。シマノに細山さん逝去の知らせが入ったのは7月上旬のことだった。
新たな刀を細山さんに振ってもらうという願いは永遠に叶わなくなってしまった。ならば、せめて細山さんの熱い思いを形にしたい。しかし、一切の妥協を許さない細山さんの意志を受け継ぎ、現時点での完璧を目指してきた刀を完成させるのは容易なことではない。
穂先が適度に入り込み、負荷に応じてしっかり胴部まで曲がりが下りてくる掛け調子。胴からしなって長手尻仕掛けを正確に振り込み、ブレがシャキッと止まる振り調子。本流ヤマメ特有の鋭く小さなアタリを見極められる感度。鋭い走りをいなす胴の粘り。長さを感じさせない体感的な軽さ。風を切り裂く細身のブランクスを有しながら、これらの要素を高次元で満たし、そのとき持ちうる技術をフルに投入して究極を追い求めてきたのが歴代の『スーパーゲーム刀』である。
強すぎず弱すぎず、魚とのフェアな勝負ができる道具を細山さんは望んでいた。竿としてのクオリティを上げながらも「むやみに硬くしない」「必要以上にパワーを上げない」「刀特有の腰のある調子にキレを出す」「シャキッとした操作性」の4点を念頭に置き、数々の新技術を投入して納得のいくレベルまで完成度を高めたプロトが組み上がったのは、2018年3月のことだった。
本流ヤマメを獲るに十分なパワーを有したうえで、「スーパーゲーム刀」には“強さの質”が求められる。ここで細山さんの釣りを知るインストラクターのもとへプロトを持って出向き、その調子を評価してもらったところ、インストラクターと開発担当の評価は一定の方向で一致。2018年7月、ようやく最終プロトの完成にこぎ着けたのである。
最終プロトは、細山さんと深い親交があった方々に試していただいた。このテストで、歴代の刀を振り込んできた人はさらに進化した三代目の完成度を評価し、刀に触れるのが初めての人は、その切れ味に目を見張った。
多くの釣り人のアドバイスを得て、ようやく完成した三代目『スーパーゲーム刀』。細山さんもその出来映えに、雲の上できっとうなずいてくれることだろう。