聡/プロセレクトはなぜこれだけの高性能で価格が抑えられているのか? と考えると素材ですね。竿の値段は素材で決まる。簡単にいえばリミテッドプロほど高弾性ではないカーボンを使っているので、これだけ値段が下げられる。料理でいえばカーボンは食材みたいなもので、各インストラクターが味付けをして高級料理に負けないように仕上げた…それがプロセレクトだと思います。
実際FWは剛が17年の中日スポーツ杯という絶対に負けられない大会で、リミテッドプロではなくプロセレクトFW85を使って見事優勝。何でリミテッドプロがあるのにプロセレクトの85をチョイスしたのか、えらい興味あるんだけどな。それだけ完成度に自信があった、ということだろうけど。
剛/まぁ、いろいろ理由はあるけど、一番の理由はプロセレクトシリーズで結果を残したかった。口では「いいサオができました~」「負けませんよ~」とかいくらでも言えるやん。でも、やっぱり使って結果を残したかったのが一番。
大会会場が馬瀬川だったので85が向く。ベリーベスト85も持っていたけれど、野鮎が小さかったので少々オーバーパワーかなと。リミテッドプロよりプロセレクトのほうがしなやかなので、じゃあ迷わずプロセレクトでいこうと思ったのが、あの時の状況でしたね。
プロセレクトはリミテッドプロにくらべるとカーボン弾性は確かに少し低いんだけど、そこが逆に粘りが出たりとか操作する時にオトリに優しかったりとか、メリットもたくさんあるので、そこは適材適所かなと。リミテッドプロFWは軽くて肉薄だからちょっとデリケートな感じもあるけど、プロセレクトシリーズは少し弾性が低いぶんそれが全然ない。そういった部分でも安心して使ってもらえると思いますね。
聡/僕がVSを使っていて一番感じるのが、タメ性能がよいこと。
剛/そう、粘りがあるね。
聡/かなり大きいのが掛かっても、ノサれてイトが切れてしまうという状態になりにくいし、思いきり曲げてもしっかり竿全体が働いてくれるので、安心してタメられるところなんかはリミテッドプロより上じゃないかと思いますね。あと、ちょっとムリしても安定感がある。少し雑な扱いをしてもヘッチャラで使える点も大きなメリット。
剛もそうだけど、僕らのようにサオを寝かしてオトリを引く釣りにはパリパリに硬くて張りがあり過ぎる竿はオトリが浮いて引きにくい。ちょっとしっとりした感じのある竿のほうがオトリがなじみやすくて弱りにくく、引きやすいね。
剛/ちょうどいいって感じでね。
聡/そういった意味ではこのカーボンの素材自体がそんな特徴を持っているから、特に僕らみたいな釣りには合うのかなという感じはしますね。皆はリミテッドプロとかスペシャル競クラスの高弾性ロッドとくらべたメリットはどんな感じ?
三嶋/いつも使ってるのがスペシャル競とリミテッドプロのMI。それにくらべると確かに弾性が落ちるので柔らかく感じますけど、そのぶんやっぱりタメ性能がいいですね。雨のあとで皮が柔らかくなったり、身切れが多い時などは違いがハッキリと出ます。そんな状況ではMIが先調子であるぶん、リミテッドプロよりよい部分がある。
状況によってはこちらのほうが釣果が伸びると思うので、それを使い分けるとよいと思います。これ1本持っていれば、一段階上にいけるかなと感じますね。初心者には最適で、トーナメントに出ている人でも、手返しは遅くなりますけど、そのぶん身切れが少なくなるというメリットもあるので、確実に1尾目を取るにはリミテッドプロに迫る可能性を持ってますね。
聡/もともとMIはパリパリのアソビのない竿だもんね。上級者はそれこそレーシングカーを運転するみたいな感じで、リミテッドプロMIを使うけど、逆にすごい集中力が必要だったりするからね。プロセレクトだと少しアソビができるから、気楽に釣れるかもしれんね。楽な釣りをしても釣果が出そう。
三嶋/そうですね。同じ調子でもプロセレクトのほうがオトリの弱りが遅いので、長時間遊べますね。プライベートでも1日しっかり遊べます。
松田/自分も普段はリミテッドプロなどを使っていますが、今年初めてプロセレクトを使わせてもらって、聡さんが言われたとおり、低弾性で若干張りが消えるぶんリミテッドプロよりオトリがなじむ、引きやすいなと感じましたね。剛さんが言うような安心感もあります。太仕掛けの力勝負でガーンと抜くような時は、リミテッドプロだとちょっと怖いかなぁという部分はありますけど、この竿だと多少無茶しても大丈夫という安心感はありましたね。感度はリミテッドプロより確かに落ちますが、釣果的にはあまり変わらないかも。
君野/皆さんの感想とほぼ同じですが、やっぱりオトリに優しくてなじみがよい。オトリを弱らせにくいですね。あと、少々ラフな操作をしてもサオが吸収してくれます。
聡/それは大きいですよね。
君野/かといって、目印がいつまでもブレて止まらない、ということもない。そのへんはすごく使いやすい竿ですね。
聡/島君のRSは穂先の使い方が命なので、サオが絶対にブレちゃいかんと思うんだよね。
島/リミテッドプロとかスペシャルのこだわりとしては、ブレずに先端部の曲がりをよりオトリ操作に生かせる竿だと思うんですよ。特に競技会のように制限時間内で数を競うなら、どうしても繊細さや軽さ、張りを求めるので、そんなロッド設計になる。けれど、このプロセレクトは楽に数が釣れて安心して使えるシリーズ。
僕が思うに友釣りはオトリの生きた泳ぎを有効活用することが大切だと思うんですが、カリカリに研ぎ澄まされた竿で鮎師が操作しすぎると、意図せず釣れない状況を作り出してしまうこともある。それを考えると若干柔らかさがあって、少し操作性は落ちるものの、それが逆によい状態を生み出し持続できる…というのが、このシリーズのよさかなと。
プロセレクトRSは実際よく釣ってくれるサオでした。高弾性のリミテッドプロよりナチュラルに釣れる状況を作り出してくれるような感じがある。掛かってからはタメ性能もよいので早く上げる必要がない。安心して取り込める。ストレスなく1日楽しめる仕上がりになっています。
聡/ということで、それぞれ特徴がありますけど、これでいよいよVSからはじまってFWが出て、新発売のRS、MI、SCと種類も豊富になりました。自分のホームグラウンドの川相に合わせたり、好みの調子など、いろんなパターンで選んでもらえるようになったと思います。カタログにはよく「初心者に」とか「中級者に」とか書いてありますけど、トーナメンターならともかく、ベテランでも妥協せずに十分満足して使ってもらえるロッドだと思います。