釣行データ
初日:2021年1月26日 7時出船・14時沖上がり
2日目:2021年2月1日 7時出船・14時沖上がり
エリア:千葉県 洲崎沖、神奈川県 剱崎沖
天候:晴れ
初日潮回り:大潮(満潮4時29分、干潮9時27分)
2日目潮回り:中潮(満潮7時34分、干潮13時15分)
船宿:佐円丸
イカ釣りファンは格好いい!
ヤリイカ釣りは終盤戦に突入! コリコリとして甘い身をぜひ味わってほしい
多点ヅノ仕掛けを使うヤリイカ&スルメイカ釣りは沖釣りが盛んな関東主体の釣りものといえる。電動リールの普及とともに盛り上がったがそれ以前は手釣りの船宿もあった。沖イカハンターの小菅義弘さんは手釣り時代からイカ釣りを楽しんでおり、その原始的で漁的な所作もまた面白かったと話す。また、イカのサワリや乗った時の微妙な重さも手釣りをやっていたことで分かるようになったという。ちなみに私はイカ釣りを始めてから17年ほど経つ。
最初に乗った船宿は今回お世話になった三崎港の佐円丸で柳下船長から丁寧なアドバイスを受けた。アタリが全く感知できない私に「乗っているよ」と声をかけてくれたのを思い出す。周囲の釣り人を見ればみんな余裕があって格好のよい人が多かった。それがイカ釣り初体験時の印象である。イカ釣りの難しさは150号前後の重いオモリを使って、時に200mを超えるような深場からイカの乗りを感知することがひとつ。また電動リールをセットしたヘビータックルをアクティブに動かして誘うことも難点かもしれない。ただ、決まった所作を落ち着いて行なえば釣れる。淡々と取り込むその姿がとても格好よく私には映った。それから夢中になって釣行を重ね、直結仕掛けを覚えるとより一層この釣りが楽しくなった。
直結手繰りが落ち着いてできるようになれば、ツノを手に束ねることもできる
イカ釣りは枝スにツノをセットするブランコ仕掛けとツノを幹イトに直接結ぶ直結仕掛けがある。ブランコ仕掛けは枝スのアソビでイカが外れにくく、渋い時にもよく乗る。一方でサバなどの魚が掛かると外れずイカが外れたり、オマツリの要因になったりとトラブルも多い。プラヅノのカンナはハリ先が上を向いているので、直結の場合テンションを維持して引っ張り続けていれば外れない。が、イトを緩めた瞬間にバレる。常にイトを張って操作するのがキモでありスリリングでもある。取り込みの最中も投入器にツノを収納せずともよく、手返しのスピードも上がる。幹イト直結なので感度もよい。最初はとまどうが、イトを緩めないように落ち着いてツノをさばけば案外しっかりとイカを取り込める。
速い潮は着底直後が勝負
イカ釣りは乗りのよい場所で船団ができる。群れが大きいほど船の間隔も広くなるが、この日はスポットでしか反応がなく群れの動きも早かった
さて佐円丸に乗船したのは1月下旬と2月上旬。1回目は沖イカハンターフルメンバーで繰り出した。例年ならヤリイカの盛期だが低調である。要因としてはベイトフィッシュが少ないこと。反応があっても群れがすぐに動いてしまう。また潮が速すぎるのだ。イカ釣りの難敵は速い潮だ。この日は最深部で240m。2ノットの流れがある。ヤリイカが乗るのは主に底付近オモリを着底させて仕掛けを立てても、ミチイトが潮によってふくらんでしまう。そして着底一発で乗せることができればよいが、1回シャクってオモリを上げると2回目は底に着かなくなるほどイトが抵抗を受ける。「まるで凧揚げをしているみたい」と小菅さんは言う。船長もあちこちと反応を捜したが状況は好転しなかった。
そして2回目の乗船時。柳下船長は洲崎方面に舵を切った。この日は池田暁彦さんと池田さんの釣友、高橋健一さんと同船した。佐円丸のイカ釣り場は、城ヶ島沖や剱崎沖、沖の瀬という近場から、洲崎周りに集中しているが時には江の島辺りまで繰り出すこともある。そもそもヤリイカがどんな所にいるのかといえば、海溝部の崖っぷちに付いていることが多いそうだ。またヤリイカは潮に乗り、通説では冬から春にかけては東に向かう。産卵期となる春は、東京湾口部にいたイカは南房や鹿島方面の浅場で釣れ盛るようになる。
沖イカハンターのテクニシャン、小菅義弘さん。艶っぽくツノを動かし、誘いの中でヤリイカの微妙なサワリを見極める
沖イカハンターのエース、永井秀夫さんも3点掛け。ダイナミックなシャクリの中でサワリを見るのが得意
水深210m。潮が速くオモリ着底の時点でイトは20mほど多く出ていった
この日は水深200m前後でヤリイカに混じってマルイカも乗った。ヤリは細いがマルはエンペラや胴部が丸くずんぐりしている
水深は210m。私のツノ数は11㎝のプラヅノ「ツレヅレ針」を直結で10本。池田さんは直結9本。糸巻きヅノを下から3本目と7本目に混ぜており「底でしか乗らないから、ツノが3本でもいいかもね」と笑う。
船長の合図でオモリを投げる。
「今日も潮が速いです。水深210mですが、イトは230mくらいまで出るかもしれません」
とアナウンス。海は風がないのに波が立っている。潮が速いのは一目瞭然だ。そして潮が速い時は、いわゆる「底ドン」の着底一発目で乗せたい。2、3回タナを上げて誘うとオモリを再着底させるのが難しいからだ。そして1投目の着底からオモリを持ち上げた瞬間、フワフワと穂先が揺れた。これをビシッと合わせてテクニカルレバーを前に押し出すと乗った。浮上したのは中型のヤリイカだった。まさに着底一発の乗りである。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
沖イカハンターの愛用アイテム
プラヅノは「ツレヅレ針」。何本か糸巻きヅノを混ぜてアクセントを付ける
池田さんのヒットヅノはレインボーカラー。ヤリイカは幹イトがヨレやすいため各ツノの上部にヨリモドシを介すのが池田さんのこだわり
池田さんの先イトはタコ釣りなどで使う渋イトで長さは手尻近くまで取る
低速巻きでアタリをとらえる
「大きいヤリイカは簡単ですよ~」と永井さん。ヤリイカ釣りは小型ほど乗りを察知するのが難しく巻き上げ途中にバレやすい
当連載が始まった年に沖イカに魅せられた池田暁彦さんも今やエキスパート。ツノのアレンジや誘いのバリエーションなど創意工夫に満ちた釣りを展開
イカの多い時は船がすぐに停まるが、この日はクルージング時間が長い。反応が少ない証拠である。また反応が出ていても潮が速すぎて船を停めにくく、イカの側にツノを落とせているのか微妙だ。それが上手くいった時は着底までの間にガツガツとくる魚反応があり、その下にイカがいる。そしてポツポツと乗る流しもあった。
ヤリイカの腕は短い。スルメイカのようにツノをがっちりとは抱かない。大きく上下する誘いを繰り出すより、じっくりツノを動かしたほうが掛かりやすい。直結仕掛けのヤリイカ釣りで、最も簡単なアタリの取り方は低速巻きである。着底後に余分なイトフケを取ってからアタリを聞くようにオモリをゆっくり持ち上げる。ここで反応がなければリールを一巻きしながらリフトした後ストンと落としてツノを見せる。ここでもサワリが出なければ、レバー6~7の速度でじわじわと巻き上げながらサワリを見る。一定の負荷がかかった穂先が上に戻ったり、クンとおじぎをしたりするので、これを掛け合わせていくのである。
「手繰りは慌てず、イトをゆるめないことです」と池田さん
朝のうちはスルメイカが乗る
「ヤリイカは朝寝坊」
と小菅さんがよく言う。イカ船の場合は朝イチに反応がよいのはスルメイカだ。中には朝はスルメねらいで日が高くなってからヤリイカにスイッチする船宿もある。当連載でも終了間際になってヤリイカが盛り上がることはよくあった。そしてこの日もまた時合到来は13時を回ってからだ。残り1時間というころで潮が落ち着き、凪いできた。穂先がモタレる反応を逃さず巻きアワセをすると、ズンとバットがしなった。
海は青く明るい。温かい黒潮が入った時に見られる潮色である。海面下10mくらいまで透き通っている。ツノを手繰っていくと1パイ、2ハイ、3ハイ――。春を感じさせる陽光に照らされヤリイカが水面を破った。池田さんもまた多点掛けを連発し、高橋さんも4点掛けを決めた。
池田さんの釣友で横浜在住の高橋健一さんはマルイカ釣りが得意。この日は久しぶりのヤリイカ釣り。渋い中でも乗りをコンスタントに察知していた
高橋さんのツノに4ハイ付いた流しもあった
池田さんの糸巻きヅノは乗りがよい。レインボーカラーの効果か?
ヤリイカは日が高くなってから乗ることが多い