釣行データ
日時:2020年10月6日 6時出船・13時沖上がり
エリア:神奈川県 城ヶ島沖
天候:晴れ
潮回り:中潮(満潮7時19分、干潮12時51分)
船宿:光三丸
ヤリイカ相手にもアドバンテージ
ショートロッドと直結仕掛け
シーズン初期の弱音と自信
10月頭の平日でヤリイカ船は満員御礼の人気ぶり。スルメイカが早く終わってしまったが、その分、ヤリイカが早くから開幕して安定している
「今日は両脇のふたりを撮影してください(笑)」
朝一番に私が担当記者にそう言うと、右隣の小菅義弘さんも「僕も個人的にはシーズン初期の直結仕掛けのヤリイカ釣りは世界一難しいと思っています(笑)」と言い、左隣の永井秀夫さんも「じゃあ、ブランコ仕掛けにすればいいのに誰もやらない。今日みたいに海が荒れていても直結(笑)」と苦笑い。
前回と同じ顔触れ。長井から出船して城ヶ島沖というのも同じ。ただしターゲットがスルメイカからヤリイカに変わっており、北の風が吹いてウネリが高くなる海況とヤリイカのサイズを考慮すると苦戦することが予想できたのだった。
要は、ヤリイカはもともと腕が細くて短いことから掛けにくく切れやすいのに、10月頭のシーズン初期は後期のパラソル級の半分以下のサイズとあってさらに身切れしやすく苦戦すると暗に伝えたのだ。直結仕掛けのデメリットが最も多く出るのがこの季節のヤリイカ釣り。繊細な腕でちょこっと触れて来るヤリイカは、一本一本が水平姿勢になるブランコ仕掛けのほうが圧倒的に抱かせやすく、カンナも深く刺さりやすい。そして枝スの遊びがあるため巻き上げ途中のバラシも少ない。
そもそもこの時期の小型のヤリイカが1パイ掛かったとしても、それを明確に把握するのはなかなか難しい。「乗ってると思うけど……」と半信半疑のまま低速で巻き上げるが、何バイか釣って感覚を掴むまでは乗っているかどうかの確信は持てない。これを「引きが弱くてつまらない」と敬遠する人もいれば「微妙な乗りを察知してゆっくり海面までエスコートできたときの感激がたまらない」と面白がる人もいる。
スルメイカと違って今もお客さんの95%はブランコ仕掛けという東京湾のヤリイカ釣り。直結仕掛けは慣れないとバラしやすいなどのデメリットはあるが、慣れればメリットのほうが多いと沖イカハンターのメンバーは考えている
ヤリイカのブランコ仕掛けのプラヅノが5~7本なのに対して直結仕掛けは10本平均とツノ数が多い。4番目と8番目はガス糸巻き仕様でこの日は特に効果的だった。ツノは11cm
私たちメンバーはスルメイカのパワーとスピードとめまぐるしく変わるレンジ探しのゲーム性に魅せられているが、ヤリイカ釣りも大好きだ。ただその魅力は少なくともレンジ探しにはない。基本、底の釣り、または底からの釣りであり、ブランコ仕掛けが平均して5~7本のツノを使うのに対して直結は10本ほどを使うことから、対応するレンジの幅はもともと広い。
パワーもこの釣りには求めていない。ただしスピードは関係してくる。移動が速いためひと流しで1回しか投入できず、反応が出た直後に素早くタナまで届けるというスルメイカ的なスピードではなく、ひと流しで2度、3度、あるいはそれ以上投入することができるがゆえの手返しの早さだ。
普通、仕掛けを海面まで回収したら、ツノをひとつひとつ投入器に収めて遠投……というのが一連の流れになるが、枝スによる遊びがない直結仕掛けの場合は、回収しながら片手でツノを上手に捌けば手前マツリしにくく、そのまま投入器を使わずに次の投入が行なえる。
また、ブランコ仕掛けのツノのほうがイカにとって食べやすい姿勢だとは思っているが、真上を向いて並んだ垂直姿勢でも抱かせる自信はある。しかもツノ数が多いので多点掛けで一気に数を伸ばすことも可能で、サバなど厄介な外道に邪魔もされにくい。
これらのメリットと先に触れたデメリットを天秤にかけると、メリットのほうが大きいと感じてしまうことから私たちはこの時期のヤリイカも直結仕掛けでねらう。ただし、自信満々というわけではない(笑)。そんなことを朝一番に伝えたかったのだった。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
沖イカハンターの愛用アイテム
メンバーが使用した『イカスペシャル』のブランクスは大型青もの釣り用ロッドにも搭載されているスパイラルXコア、ハイパワーX構造を採用し、圧倒的なパワーとサオブレのない軽快な操作性を実現した。穂先には軽量UDグラス素材を特殊設計したチューブラー穂先を搭載。M170 RIGHT、MH160 RIGHT、H155 RIGHTの3アイテム
Xシートエクストリームガングリップは指4本をグリップに掛けることでパワーロスなくしっかりホールドでき、疲労も軽減され力強いシャクリが可能になる
当日は松田さんがビーストマスター2000、小菅さんと永井さんは同3000XSを使用。スプールが軽いためか仕掛けの落下速度は松田さんが最も速かった
直結仕掛けとは別にプラヅノ、ガス糸巻きのプラヅノを単品で用意しておき、明らかに当たりカラーがあれば効果的なところに配置してみる
軽量ショートロッドのアドバンテージ
1パイ目をキャッチした永井さんは「小さいけど9月のときより相当育ってる!」と興奮。9月に70パイを釣ってサオ頭になったが胴長はこの半分くらいだったという
「感度はビンビンですし、操作も軽快。あとはバレないロッド&リール操作を心がければ数も伸ばせます」と永井さん
ロッドは前回のスルメイカ釣りで活躍した新しいフラッグシップモデルの『
イカスペシャル』。シャクリ時にブレず、シャクリ後は速く戻ることで、これまで感じることができなかった微かなアタリも明確なシグナルとして釣り人に伝えるUDグラスチューブラー穂先を採用し目感度と手感度が大幅向上。約46%の穂先の軽量化に成功したこの軽量高感度ショートロッドが秋のヤリイカ釣りに対してどのような使い勝手になるのか、メンバー全員が楽しみにしていた。
例によって3人で3タイプを使い分けてみた。私は8:2調子のM170、小菅さんはMH160、永井さんはH155を使用。使用前の予想としてはバラしやすい状況であることから最も長くて最も軟らかいM170を使う私が有利に思えたが、始まってみると私も両隣と大差なくバラシを連発してしまった。
右舷のミヨシの釣り座だったが、船先が波に乗って大きく上下する状況だったため、このシリーズでは長いとはいえショートロッドの部類に入ることから、どうしても船の揺れに対してロッドのストロークで対処しきれず、巻き上げ途中にフッと軽くなることがあった。しかし、小さなヤリイカが触った瞬間も、巻き上げ途中でフっと軽く瞬間もかなり明確に分かる。上げたら付いていなかった、逃げられたと思ったけど付いていたということはない。感度でいえばMH160、H155はさらにビンビンだ。
右舷ミヨシに入ったメンバー3人。だんだんと波が高くなり、非常にアタリが取りにくい状況に苦戦した
船の上下動により仕掛けのテンションが抜けてバレてしまったりテンションが掛かりすぎて身切れしてしまったりと出遅れていたふたりにもようやく1パイ釣れて大喜び!
最初は仲良くバラシを多発し、ブランコ仕掛けの方たち(この日は満船で、ほぼすべての方はブランコ仕掛け)が着実にヤリイカを取り込む姿を少し羨ましく見ていた時間もあった。特にミヨシに入り、最もショートなロッドを使った永井さんは苦戦していた。
しかし、軽量ショートロッドならではのシャクリやすさや疲れにくさはヤリイカ釣りにおいても大きなアドバンテージになり、船の揺れに対してもパターンを予測することで柔軟に対応してキャッチ率を大きく上げていく。
朝にはサバのヒットもあったが、こちら3人にはそうしたトラブルもない。小さい差ではあるが、仕掛けをスピーディーに取り込んで次の投入も素早く行なうことで投入回数を増やし、多少、タナが上下に散った際も仕掛け幅の長さで対応。この日は多点掛けが少ないなか、3点掛け、4点掛けを達成。銅の間で揺れが少なかったためかロッド操作のたまものか、小菅さんは5点掛け、6点掛けを披露。時合に一気に数を伸ばしてみせた。
釣り方は真上近くまでロッドを鋭くシャクり上げたあとの静止時に目感度でアタリを察知する釣りのほか、水平より若干ティップを下げた状態でロッドをしっかりホールドして低速巻きするのもアタリを取りやすかった。また、オモリを着底させた状態で鋭く小さくシャクる誘いも効いた。いずれにしても乗ったらロッドを水平状態にしたまま仕掛けはずっと上昇させ続け、波の揺れに対してロッドの角度で追従して水中の仕掛けを暴れさせないことが大切だ。さらに言えば、上半身を大きくのけ反らせて揺れを吸収することも大切である。
イカの乗りを察知したら追い乗りを期待しつつ速度一定モードで低速巻き、イカのいる層を越えたら楽々モードに切り替える(30段階の12~13)とバラシが少なかった。
スルメイカ釣りと違ってヤリイカ釣りは1回の流し時間が長いことが多い。その際は取り込みながら仕掛けを絡まないように右手にまとめ、最後のツノの処理を終えたらそのまま次の投入に移行する。この手返しのよさが投入回数の多さにつながる
慣れないと難しいが枝スがない分、片手にまとめても絡みにくい。取り込みも慣れれば片手でイカを外してそのままバケツへ一直線
上位4名が直結仕掛け
釣り開始直後は完全に周囲より遅れを取っていたが、中盤になるとご覧のとおり。ちなみに「弱ったイカを一緒に入れておくと周りも弱るのですぐにクーラーボックスにしまったほうがいいです。死んでからしまったイカと生きているうちにしまったイカは味が全然違います」と松田さん
潮が速くなって両隣の仕掛けと絡みやすい状況になったら、ツノを投入器に入れ直して遠投する。特に3投目とかになったら気を付けたい
この日は城ヶ島西沖110mから開始し、最終的には城ヶ島沖100m前後を流した。非常に釣りやすい水深で、朝から沖上がりまでラッシュこそなかったものの間断なく胴長10~18cmのヤリイカが釣れ続いた。ひと月前に70パイを釣った永井さんによれば、それでもサイズはかなり大きくなっているとのこと。この号が発売される10月下旬ともなれば胴長20cm以上が揃うかもしれない。しかも春先のパラソル級と違って非常に肉厚で、筒状の身は真ん丸に肥えているから、どんな料理でも美味しくいただけるはずだ。
朝の遅れを取り戻して私は23バイで4番手、小菅さんは26パイで3番手、永井さんは28パイで2番手と手堅くスコアをまとめた。トップは顔なじみの島さんで、この方も直結仕掛けの使い手である。
これまではブランコ仕掛けオンリーだった方も、1~2組、直結仕掛けを用意して試してみてほしい。もちろん、最初はトラブルが増えるしバラシも増えるだろう。しかしその先にはきっと光明がある。ショートロッドもしかり。デメリットはあるがメリットを活かせば、新たな沖イカ釣りの世界が広がるはずだ。
今年は東京湾のスルメイカのシーズンが短く寂しく感じたが、その分、ヤリイカのロングランに大いに期待している。
なかなか多点掛けが難しい状況だったが、松田さんは3点掛け、4点掛けを達成して一気に数を伸ばした
「正直、この時期の直結仕掛けのヤリイカ釣りは難しいです。バラシを連発した時などとても精神衛生上よろしくないです(笑)」と言いながらも直結仕掛けを辞めないのは、こちらのほうが合っていると思っているためだ
最も揺れない胴の間の恩恵か、小菅さんは5点掛けを達成!
永井さんは28パイでサオ頭かと思われたがベテランの島健治郎さんが38パイでサオ頭だった。「ちぇ、島さんにやられた~(笑)」と永井さんが言うと「いつもこてんぱんにやられてるからね」と島さん。この日は上位4名が直結仕掛けだった
小菅さんは最後の流しでも6点掛けを達成!