釣行データ
日時:2019年10月1日 5時30分出船・12時沖上がり
エリア:千葉県外房・勝浦沖
天候:晴れ
潮回り:中潮(満潮6時14分、干潮12時06分)
船宿:不動丸
大型の多い海域
朝のうちは二枚潮に苦しめられた
千葉県外房・勝浦エリアの紹介は初めてだ。我ら沖イカハンターの中では小菅義弘さんと永井秀夫さんが事情に通じる。「スルメが太い!」と好機になると通い込み、群れに当たると腕が上がらなくなるほど大型が乱舞するという。
今回の相棒は永井さん。お世話になった川津港不動丸とは5年ほどの付き合いと話す。
「勝浦沖は年内いっぱいスルメイカ。年明けからヤリイカに切り替わるのが例年のパターンです」
とは吉清晃朗船長である。不動丸は創業約40年。船長は2代目。先代からイカとカモシを主体に看板を掲げ、近年はジギング、キャスティングとルアーフィッシングにも力を入れている。さっそくスルメイカの近況を聞いてみると……。
「8月の終わりから9月の初めはいい群れが入ったけど、最近はいまひとつ。型も小さくなりました」
と芳しくないようす。とはいえ仕掛けを下ろしてみなければ分からない。私も永井さんも18cmヅノ12本の直結仕掛けを投入器にセットし、5時30分にいざ出船。
ミチイトを張りやすくするために中オモリ20号をセット。オモリは150号である
サバの中にはスルメイカ
探見丸の画面右下付近にある点々は魚(サバ)と思しき反応。この中にもスルメイカが混じっている。イカの活性が高ければ底から立ち上るような反応が出るのだが……
ポイントは勝浦灯台の沖、水深150~160m。探見丸にはサバらしき反応がポツポツと映っている。
「3週間前にも勝浦に来ましたが、いいスルメが35ハイ。全部底付近で乗りました。前回サバはいませんでしたが今回はいるらしいです。少しはスルメが上ずっていると楽しいんですけどねえ(笑)」
と永井さんが言う。外房および南房ではサバ反応に船を当てていくことが多い。うるさいサバアタリの中から、イカのサワリを見極めると釣果アップにつながる。そしてサバがいると指示ダナよりも上層で数が乗るケースが多々あるのだ。
仕掛けを投入すると水深100mを過ぎた辺りからブルッ、ガツンとアタリが出始めた。急降下するツノにサバが襲い掛かっている。
潮色は濃紺。イカが乗りそうな雰囲気はある。誘っているうちに怪しい反応も出始め、左舷トモではスルメイカが顔を見せたようだ。しかし潮が速すぎる。さらには二枚潮がきつく、イトがS字を描いて底が取れないうえにオマツリも多発。前回の乙浜信栄丸でもお伝えしたが、近年の南房、外房沖合は黒潮が直撃している。潮のかっ飛ぶ中で水深200m近い底付近をねらうのは至難の業。
鋭くシャクった穂先にイカ反応が出る。永井さんは瞬間的にテクニカルレバーを前に倒してアワセを入れた
そんな苦しい状況で永井さんがサワリをとらえる。仕掛けを巻き上げると船下に突っ込む潮。「これはまずい」と永井さんの取り込みに緊張が走った。我々は右舷に座っていたが左舷側のお客さんとオマツリ。直結仕掛けは絶対にテンションをゆるめてはならない。カンナ1つ分イトが緩めばイカは外れてしまうのだ。永井さんはイトを張ったままオマツリを巧みに外し、そのまま2ハイを取り込む凄技を見せた。
「今日は潮との戦いになる」と不安がよぎったが、船長は仕掛けが落ち着く潮筋を見つけだした。しかし今度は潮止まりと重なり逆に潮が動かなくなった。オマツリは減ったものの反応も遠くなってしまう。
余談だが勝浦の船は流し替えることが極端に少ない。長時間の流しである。ポツポツとイカが乗る状況だと集中力を持続させるのが大変。だが、永井さんはやってのける。信じる者は救われるとばかりに力強くシャクリを入れて、微かな気配を感じ取って掛ける。私も何とか数ハイ乗せることができたが、永井さんのペースには追い付かない。
船長が言ったとおりスルメイカは小型である。勝浦名物の大型は胴長30cmを超えるようなサイズ。引きは凄まじく5点、6点と付くと巻き上げ最中にスプールがミシミシッと音を立てる。こんなイカが乗る時はミチイトがPE3号ではもたない。4号が望ましい。
イカと魚のアタリの違い
直結仕掛けの取り込みは常にイトを張り続けることがキモである。永井さんの取り込みは淀みがない
乗せ続ける永井さんのテクニックを見てみよう。タナは基本的に底付近。それだけでなくサバが当たったタナを重点的に探る。鋭くシャクっては落とし、仕掛けを動かしていく中でイカのサワリを見極めるのだ。ではイカと魚のアタリの違いとは?
「イカが触ると穂先が暴れません。クンとモタれた後で穂先が跳ねないのがイカです」
またシャクリの誘いの中でズル巻きも織り交ぜる。
「テクニカルレバー12くらいの速度で誘い上げていると穂先がクンと入り、そのまま乗ります」
ズル巻きはオートマチックに乗りやすい常套テクニック。特にこの日のような反応が少ない日は有効手段のひとつ。多点掛けは少ないものの会心の釣りを続ける永井さん。いつの間にか船上干しのイカ暖簾ができるくらいは数を乗せた。
永井さん会心の2ハイはこの日の最大
私も3点掛けでイカをキャッチ
それにしてもスルメイカが底に張り付いているかのようだ。底付近にしか反応せず、乗るツノといえば下から1つ目ばかりである。私は底から10mの間を繰り返しシャクり続けた。こうしてツノを動かし続け、寄ってきたイカを引っ掛けるイメージである。
8時30分を回ったころ、永井さんを見るとこの日一番の重さがサオに乗り、身体を仰け反らせて引きに耐えている。
「大きい、もしくは相当な数が付いたかもしれませんよ」
と船べりまで仕掛けが上がる。パッパッとテンポよく取り込んでいくと「でかい!」と思わず叫んでしまうほどの腕よりも太いスルメイカが2ハイも乗っていた。
これ以上のサイズはその後も当たらず。乗っても単発。それでも秋空の下で渋い釣りに熱くなった。
この日、絶好調の永井さん。サバのアタリが頻発する中でイカのサワリを見極める
私にも良型がズシン。勝浦沖では中学生くらいのサイズだろう