チーム沖イカ

釣行データ

日時:2019年8月6日 5時出船・10時30分沖上がり(早上がり)
エリア:千葉県南房白浜・江見沖
天候:晴れ
潮回り:中潮(満潮7時26分、干潮13時46分)
船宿:信栄丸

突然やってきたフィーバータイム!

半年以上続く潮との戦い

静かな朝焼けの中、まずは白浜沖へ出船

速潮に苦戦するも海は凪いでいる。しばらくは我慢の時間が続いた

 南房乙浜の信栄丸は、「沖イカHUNTER」が懇意にする船宿のひとつである。当連載でも、以前に12月のヤリイカねらいでお世話になったが、今回は夏のハイシーズンを迎えたスルメイカをねらうべく、頼れる安田仁船長のもとを訪れた。
 
 同行者はチームのメンバーである池田暁彦さんと小菅義弘さん。この連載ではおなじみのエキスパートだが、あらためて紹介すると、私が知り合いになったのは小菅さんのほうが遅い。小菅さんは沖釣りを始めたのが30代になってから。意外にも遅めなのだが、やがて乗ったイカ船の船長の格好良さに惚れて、相模湾では長井、小網代、さらに南房では白浜と各地のイカ釣りメッカに通いこんで腕を磨いた。直結仕掛けの手返しの早さと仕掛けが落ちるまでのサワリを捉える緻密な釣りは安定感抜群で、当連載第1回目のゲストでもある。
 
 一方の池田さんは、チーム内で今最もイカ釣りに熱いメンバーといって過言ではない。何しろ釣行回数が半端なく、この半年だけでも40~50回は行っているのだから驚く。とにかく1つの釣りにかける情熱がすごく、イカ釣りにはまったきっかけは、この釣りを始めた時にブランコ仕掛けで竿頭になったところ、「やっぱり直結じゃなくちゃね」と言われて火がついたことだった。本人いわく、そこからしばらくは「スソ街道」だったそうだが、めげずに続ける中で、小菅さんや私と釣りに行くようになり、今や竿頭常連という腕前なのだ。
 
 8月上旬、そんな気心の知れたメンバーとの釣りではあったのだが、ともかく状況は厳しかった。もうずいぶんと続いている黒潮の蛇行の影響がすさまじいのだ。この日も朝一番、安田船長にお会いするや、「もう半年以上は潮がぶっ飛んでいて、本当に厳しいよね。昨日も白浜沖は速すぎて、江見まで移動したんだけど、今度は潮が止まっていても2枚潮、3枚潮で海がガチャガチャ。ウネリも高くてなかなか釣りにならなかったよ。でも、イカはいるよ。潮さえ止まれば〝爆発〟しそうなんだけどな~」と不安と期待が交錯する情報だった。
 

夏空と穏やかなナギ。見るのは地獄か天国か

船中最初の多点を決めたのはテクニシャンの小菅さん

トモに構えた池田さんも、ポイントが変わってほどなくまずは3点でスタート

 この日は何日も続いていた真夏の晴天。午前4時半過ぎの出船時は朝焼けが美しかった。明るくなっても海上にはしばらく朝霧が漂っていたが、すでに空は青く日中は相当暑くなりそうである。もちろん、夏のスルメ釣りに欠かせない船上干しにはうってつけなのだが、心中には「はたして釣りになるのか?」という不安がどうしてもつきまとう。とはいえ好材料もあった。この日はウネリが非常に穏やか。外房(南房)レベルではベタナギといってよいほど波が落ち着いていたのである。今回の釣り場は水深150~200m。ウネリが穏やかなのは深場の直結釣りにとっては好条件。巻き上げ時のテンション変化によるバラシの危険性がずいぶん小さくなるからだ。
 
 私はスルメイカ釣りが好きである。もちろん、ヤリイカ、スルメイカ、どちらにも面白さはあるのだが、ことタナに関しては、ヤリイカ釣りはだいたい底ねらい。対してスルメイカは遊泳力の高いイカであり、底ねらいの時ももちろん多いのだが、浮いている時は底から50~60mがタナになる状況も珍しくない。しかも、近年はそのタナが年々シビアになってきていると感じる。だからこそ、スルメイカ釣りではまず船長の水深と指示ダナのアナウンスを聞き逃さないことが大切なのだが、ねらいどおりにタナを当ててドシドシと乗ったあとは、その遊泳力と重量でたまらない手応えが待っている。
 

かっ飛ぶ白浜沖。江見沖で勝負!

この日使用したサオは、シリーズ中最も硬調な「イカセブンH150」。直結仕掛けでの大型スルメねらいを想定したまさに最強アイテム

 第1投目は乙浜から近い白浜沖。魚探の反応を見ていた船長が船を大きく回してポイントに付けた。午前5時10分、「もうすぐやりますよ。水深は180m」とこの日最初のアナウンスが入る。水深的にはオモリは150号でもよいのだが、潮が速い可能性も高いので180号をセット。反応は底に集中しているとのこと。しかし、投入からほどなくして「ダメだ。1回上げて」と恐れていた状況になった。やはり相当潮が速いのだ。
 
 サオは「イカセブンH150」。仕掛けは18cm12本ヅノの直結仕掛け。H150は先調子の同シリーズの中でも最も硬いモデルで、まさに真夏(盛期)のスルメイカ釣りにふさわしい。船長のいうような「爆発」があるなら、その時こそ性能を存分に発揮する。
 
 潮は大潮後の中潮4日目。満潮は午前7時26分。干潮は午後1時46分。イカ釣りはまんべんなく一日釣れるということはまずない。その日の盛り上がりは突然訪れ、そのピークが1回で終わることもあれば、数回続く幸運に恵まれることもある。そのチャンスを粘り強く待てるかが成否を分ける。
 
 その後も、船長からは「潮が相当速いからね、途中で止めないで一気に底をねらうほうがいいよ」と声が掛かる。潮がなかなか落ち着かないこともあり、釣り方は底を取ったら15mくらいまで電動スローでひたすら巻き上げてくるシンプルな釣り方にひとまず徹した。池田さんも小菅さんもシャクリからのフォールでアタリを見たりしているが、なかなか厳しいようだ。
 

この日は18cmヅノを12本。カラーセレクトはシンプルを心掛け、濃い青、薄い青、薄い赤(ピンク)程度に絞っている

中オモリの代わりに水中ライトを付ける。効果を実感する時は多い

 午前6時を回ったところで、船はついに大きく移動。房総半島に沿って広がるカケアガリ伝いに東の江見沖へ走る。やがてエンジンをスローにした船長だったが、「潮はおとなしいはずだけど反応がないね~」とやはり渋い。しかし、ここから少しずつ状況が上向き始めた。この日の第3投目は「底で反応。水深160m」とアナウンスがあったあと。最初こそ「ハイ上げて、反応が小さくてダメだね。今度は潮が全く動いていなよ」ということだったのだが、水深150~170mのカケアガリ、第4投目でついに乗った。着底したらすぐに乗っているというパターンで、私が一番下のツノに1パイ。小菅さんも同じように乗ったあと、あと20mのところでバラシとなってしまったものの、そのあとすかさずヒットさせて3点掛けを達成した。「最初は着乗りで足1本でしたね。そのあとは落とし直して下から誘ってきたらすぐにバンと乗った」そうだ。ともかく白浜沖よりも潮が落ち着き、イカの反応も少しずつだが出ている。こうした時は焦らずじっくり釣りたい。
 
 第5投目は「水深180、反応は170で下から10mくらいをねらってみて」の指示。ここまで反応はやはり底ばかりなので、釣り方は朝から同じだ。イカのねらい方は、あえて極論すれば「ゆっくり巻いて来る釣り方か」「イカがいそうなタナでしゃくって引っ掛ける釣り方か」のどちらか2つになる。どちらが正解なのかはその日の状況しだいだ。
 
 やがて船長の指示が、さらにイカの活性が高まっていることを感じさせるものになってきた。「水深150m。90~120mで様子見てね。あとは底からも」。すると池田さんが3点掛け。底に着いてから3回シャクっても触られた気配がなく、ビーストマスター3000XSの「8」で巻いたところ、ドンドンと乗ってきたそうだ。
 

ポイントを大きく変えてほどなく、船長の「イカはいるよ!」の言葉を裏付ける1パイ。このあと怒涛のラッシュが待っていた

 深場でスルメをねらう時のポイントを少しまとめておこう。スルメイカは遊泳力が高く、かつ獰猛なイカだと思うので、ツノは動かしているほうがよい。そして200mに迫る深海をねらっている時は、1パイ乗ったらすぐにリールを巻いてイトを張る。2ハイ目以降は電動で巻いていて、乗る時には乗るといった感じで待てばよく、私は欲張ってネチネチやらないことのほうが多い。あとは訪れたチャンスタイムで、いかにトラブルなく釣れるかが大切なので、始めて間もない人であればツノは6~7本がよいと思う。近年は昔のように大釣りできることはほとんどなくなったので、仕掛け幅を欲張る必要はなく、そこからまずは7~8本を手前マツリせず安定して扱えるように練習するとよいだろう。この日の私は12本で臨んだが、最大でも15本くらいまでと思う。
 

ついに来たフィーバータイム。全員が仰け反る夏スルメの醍醐味

朝一の心配がウソのようにフィーバータイムが訪れた。こんな時、サオにも増してイカ釣りの成否を決めるのが電動リールの性能。イカ釣りでは他の釣りと違って、着底から取り込みまでリールに休む暇が与えられない。愛用の『ビーストマスター3000XS』は、まさにそんな状況で真価を発揮する

後半はシャクッったサオがガツンと止まる場面も

 さて、江見沖での釣りは、その後しばらくは、船長が反応を見つけて投入を行なっても、すぐに消える小康状態が続いた。しかし、フィーバータイムは突然やって来た。午前7時50分、まず「130~150でいい反応になっているよ」と船長がアナウンスしたところで池田さんにヒット。そして圧巻は午前8時15分過ぎのこの日の12投目から。「水深160m、ここは130から底までいそうだね」と久しぶりに興奮気味のアナウンスがあったところで、池田さんが5点掛け、小菅さんが6点掛け、自分も6点掛けというパーフェクトな流しが来る。それからしばらく多点を含む時合が続き、中層での反応のよさからシャクリで探るとガツンとサオ先が止められるような爽快な乗りも来た。
 
「もう(電動リールが)巻けないよ~(笑)」とうれしい悲鳴を上げるのは小菅さん。自分も仰け反っていないとサオが保持できない、夏スルメならではのたまらない重量感に久しぶりにしびれる。結局、最多で7点までは乗ったが、こんなのが10パイも乗ったらとてもではないがミチイトが持たないと心配になったくらいだ。池田さんも「船長から110~150mで反応と聞いたので、まず120mで止めてシャクリを入れ、そのまま2mずつ落とし込んでいったらサワリがありました。そろそろいいだろうというタイミングで合わせたらドンと乗りましたよ!」と気持ちよさそうである。
 
「だからイカはいるっていったでしょう(笑)。去年は逆にイカがいなかったんだけれど、今年は潮がひどすぎて苦戦しているだけ。反応自体はあるんですよ」と船長も一安心のようす。最後は、久しぶりに気持ちのよい釣りで午前10時半には早上がりとした。真夏のスルメは、これだからたまらない。

この日のスルメイカはこれくらいの反応が出ると乗ってきた

3人同時に仰け反り思わずⅤサイン。これぞ真夏のスルメイカという重量感を心ゆくまで味わう

小菅さんのスルメの船上干し手順

満艦飾の船上干しは沖イカハンターの勲章。釣りもしながら手早くさばいてくれたのは小菅さん

1.ナイフとまな板を用意。エンペラを下に寝かせたら、まず胴の筒を下から上まで一気に切り開く

2.続いて目と目の間にナイフを入れて足側もしっかり2つに割る

3.内臓全体を掴んだら、下側に引っ張るようにしてきれいに剥がし取る。キモがほしければこの段階で潰さないように取り分ける

4.【ポイント!】内臓は海に捨てず必ずバケツに入れる。釣り場で内臓を捨てるとサメや青ものが寄ってくるので注意。船が大きく移動する時など、タイミングをみて破棄しよう。周囲にまだ釣っている船がいればもちろん別の場所で捨てる

5.目玉と嘴(トンビ)もこのように開いて手でちぎり取る

6.ここまで処理したら海水できれいにゆすぐ

7.これでさばきが完了

あとは船に張ったロープに竹串で刺して干す。余計な水分が飛んで表面がしっとりすればOK。「死んで白くなったスルメや真水に触れてしまったスルメをさばいて干しても、けっしてこの赤茶色には干し上がらないんです。もちろん、味もこの状態が一番いい。この色の船上干しを食べられるのは、まさに釣り人の特権ですね」と小菅さん


			黒潮の蛇行の影響で潮が安定しない状況が続く南房乙浜エリア。
			潮さえ止まれば「爆発もある」という情報の中での出船となった。
			朝イチは白浜沖に入ったが、やはり潮が速く江見沖へ移動。
			しばらくは、投入しても反応がすぐに消えてしまう我慢の時間が続いたが、
			満潮から下げ始めるタイミングで突如フィーバーが始まった。
			イカ釣りはまんべんなく一日釣れるということはまずないが、
			その日の盛り上がりは突然訪れる
			そのチャンスを粘り強く待てるかが成否を分けるのだ。

			黒潮の蛇行の影響で潮が安定しない状況が続く南房乙浜エリア。
			潮さえ止まれば「爆発もある」という情報の中での出船となった。
			朝イチは白浜沖に入ったが、やはり潮が速く江見沖へ移動。
			しばらくは、投入しても反応がすぐに消えてしまう我慢の時間が続いたが、
			満潮から下げ始めるタイミングで突如フィーバーが始まった。
			イカ釣りはまんべんなく一日釣れるということはまずないが、
			その日の盛り上がりは突然訪れる
			そのチャンスを粘り強く待てるかが成否を分けるのだ。