チーム沖イカ

釣行データ

日時:2019年4月23日 6時出船・13時沖上がり
エリア:神奈川県長井沖
天候:曇り
潮回り:中潮(満潮6時9分、干潮12時54分)
船宿:栃木丸

「間隔広めの直結仕掛け」と「低速ズル巻き」
繊細にねらう春のムギイカ

ドン曇りのイカ日和

探見丸に現われたムギイカ反応

ソフトな誘いでツノを躍らせ、ズル巻きで繊細なサワリを察知する小菅さん

 沖イカの四季は大きく分けて2回のピークがある。梅雨から初秋のスルメイカ、晩秋から冬のヤリイカである。今回の釣行は4月下旬。まさにイカ釣りの端境期となる。厳しいチャレンジながら快く取材を受けてくれたのが、周年イカ乗合の看板を掲げる神奈川県長井の老舗・栃木丸である。
 
「今冬はヤリイカが絶不調のまま春を迎え、連日厳しい釣果が続いていまして、ゴールデンウイーク明けから盛期を迎えるムギイカシーズンに期待をしています。例年なら江の島方面からムギの釣果が聞こえてきますよ」
 
 とは栃木拓船長である。「ムギイカ」とは体長20cm以下のスルメイカの新仔を指し、麦がたわわに実る初夏に多く回遊することからこう呼ばれる。盛期はまさに「これから」なのだが、長井港から航行10分ほどの近海には、すでにムギイカらしい反応も出ているようす。ムギイカは身が軟らかく、刺身、沖漬けで素晴らしい味わい。短いシーズンではあるものの、乗りがよければ船は盛況となるはずだ。
 
 今回の相棒はチーム沖イカハンターのテクニシャン、小菅義弘さんだ。「私のイカ釣りは6月までオフシーズンですが、がんばってみましょう!」と意気揚々と参戦。小菅さんの呼びかけで当連載にたびたび登場する釣友の赤荻奨さんも同船した。
 
 午前6時、出船前の空はどんよりと曇って暗い。
 
「乗りそうな陽気だね」
 
 と小菅さんが言う。ムギイカおよびスルメイカは雨の日に好釣果が聞かれる。というのもスルメイカはマヅメおよび夜に活性が高まる。水中が暗いほうが食い気も長続きしやすい。水温は16.8℃と冷たいが、気温は20℃近くあり防寒ウエアを着こまずとも快適に釣れる。船釣りに最高の季節である。 

沖イカハンターの愛用タックル

水深もタナも浅いムギイカ釣りではビーストマスター2000がベストマッチ

小菅さんの愛用ロッドは「バイオインパクトXヤリイカ180」。リールは「ビーストマスター3000XS

ツノはシマノ「ツレヅレ針」。この日は12本直結で使用

自作中オモリは15号。ミチイトをタテに張る役割を担う

泳層の広いムギイカを探る

久しぶりのイカ釣りという赤荻さんも4点掛けで絶好調!

時おり中型のスルメイカも混じる

 私の仕掛けは12本直結。11cmのシマノ「ツレヅレ針」をメインに使用。小菅さんも同じく12本の直結仕掛けだ。ヤリイカ釣りも主に11cmヅノを使用するが、ムギイカに比べツノとツノの間隔が短い。ヤリイカは泳層が狭く、底を中心に釣る。このためツノ間隔の目安は1.3~1.4m。対してムギイカの泳層は広く、時に底から表層まで反応が出るので1.5~1.6mと間隔を広めに取ってタナを探りやすくする。その昔ムギイカシーズンといえば手釣りで楽しんだ。タナが海面から50m以内と浅いことも多く、手釣りでも充分に探れたのだ。しかも小型なのでサオよりも手のほうが微かな重みを感じやすく、手でツノをさばくうちムニュッとした小気味よい乗りをよりとらえやすい。
 
 穂先が軟らかくないと乗りを弾いてしまう。私のサオは「イカ7」の150をセレクト。オモリは120号だ。出船からほどなくして船は旋回し、早くも群れを見つけにかかった。
 
「水深90m」とアナウンス。探見丸には底から30m付近に濃い反応が出ている。ムギイカはベイトに交じって泳いでいる。水深100m以下の海域ではサバ反応は少ない。船長は主にイワシ反応を見つけるのだが、この日は濃密なベイトがいないようす。ずばりムギイカの反応を追いかけるという。
 
 そして最初の流しでヒットさせたのは赤荻さん。電動リールの快音が響き、浮上したのは立派なサイズのスルメイカ。しかも2投連続で乗せてしまう。「グリーンの海中ライトが利いているのかも」と満面の笑みを浮かべており、実際ライトの近くにセットした上部のツノに乗っていた。朝マヅメ、曇天となれば海中は暗い。こんな時は水中ライトが効果的な場面が多々ある。私も中オモリを外し、白い海中ライトをセットしてみた。
 
 ムギイカはシャクって止める、いわゆるスルメのような誘いでは乗せきれない。というのもシャクリの動作はリフトした時にサオは曲がるが、止めると反発で穂先(オモリ)が下がる。この瞬間、小型で非力なイカは乗ってもカンナから外れやすい。これが引きの強い大型であれば、ツノを抱いて引っ張り続けてくれるからシャクリの誘いで取れるのだ。というわけで、ムギイカ釣りの誘いはずばり「低速ズル巻き」が有効なのだ。
 
 果たして3流し目からは快調に乗り始める。私も小菅さんも3点、4点と連掛けが続出する高活性な状況となった。そして8時45分には小菅さんも私も6点掛けを達成する。 

スパートを決める小菅さんが5点掛け

ムギだけでなく大型も混じる好釣果。愛竿「イカ7」150がマッチした

イカ釣りは小型になるほど繊細

11cmヅノと同サイズも混じる。サワリを察知するのに実に難儀する小型である

水鉄砲を噴射しながら躍り上がるムギイカ。腕一本にかろうじて掛かった渋い乗り方

「底からオモリを10mくらい持ち上げたところで反応が多いかな。投入後リール水深63mくらいの所でピタリと止めて反応を見ます」
 
 と語る小菅さんの誘いは実に妖艶。チョンチョンとメリハリよくツノを動かしイカにアピールしつつ低速ズル巻き。その中で穂先が揺れるようなサワリをとらえると、バシッと合わせて巻き続け多点をねらうのだ。
 
 ムギイカ釣りはイカの泳層を見つけるのが難しいところであり面白さでもある。そして最初のサワリがとても小さく、これをとらえた後に多点で乗り、明確な重さを感じやすくなる。おそらくツノに掛かった1パイに触発され、他のイカもツノを追いかけてくるのだと思う。そうして10時までに優に30パイを超えたが釣果は徐々に停滞した。小菅さんも「サワリはあるんだけどね、もてあそばれている感じがする」と合わせきれない流しが続き、乗せても単発。しかし単発でも乗せられるのが小菅さんの凄さである。イカは小さくなるほどサワリを察知するのはもちろん、乗りを判断することさえも難しいのである。
 
 長井沖は栃木丸以外にも多くの船が旋回している。そのほとんどがマルイカねらいでムギイカを専門にねらう船は少ない。余談だが長井沖には亀城根という巨大な根が広がり、この根に多彩なイカや魚が付く。今回は亀城根東端を重点的に探っていたが、マルイカの反応も濃いようで、私のツノにもマルイカの腕が何度か引っ掛かってきた。
 
 沖上がり時刻となる13時を前に、船長がよい群れを当てた。すると私には2点、3点と連掛けが続いて43ハイ、小菅さんは4点、5点とラストスパートを決めて最終釣果は68パイ。
 
「間違いなく今年に入って一番の釣果だよ(笑)」
 
 と船長も納得のいく釣行となった。

			ムギイカはゴールデンウイークから梅雨にかけて盛期を迎える。
			泳層が広く、時に底から表層まで反応が出るムギイカをねらうため、
			我々は1.5~1.6mとツノ間隔を広めに取った直結仕掛けで探る。
			ブランコ仕掛けなら話は別だが、直結なら誘いは「低速ズル引き」が有効。
			シャクって止める誘いでは、せっかくサワリがあっても止めたときに外れてしまいやすいためだ。
			小型ゆえの繊細な乗り。身が軟らかく絶品の食味がたまらない。

			ムギイカはゴールデンウイークから梅雨にかけて盛期を迎える。
			泳層が広く、時に底から表層まで反応が出るムギイカをねらうため、
			我々は1.5~1.6mとツノ間隔を広めに取った直結仕掛けで探る。
			ブランコ仕掛けなら話は別だが、直結なら誘いは「低速ズル引き」が有効。
			シャクって止める誘いでは、せっかくサワリがあっても止めたときに外れてしまいやすいためだ。
			小型ゆえの繊細な乗り。身が軟らかく絶品の食味がたまらない。