チーム沖イカ

釣行データ

日時:2017年3月28日 6時出船・12時沖上がり
エリア:千葉県乙浜沖
天候:晴れ
潮回り:大潮(干潮11時00分、満潮4時30分)
水深:200m前後
船宿:しまや丸

GUEST

荒木明彦(あらき・あきひこ)

昭島市からしまや丸に通いこむ常連。かつて駿河湾・石花海などで磨いた腕を振るいしばしばサオ頭になっている。
今回は中学生の二男・龍王(たつお)くんと乗船。

松田竜也の爆乗り注目ポイント

シケ模様&2枚潮の苦境で
ダブルカンナのブランコ仕掛けが奏功

手返し重視の短い仕掛け 

サバの猛攻をかわしてスルメイカを乗せた荒木さん

ヤリイカは相模湾、沖ノ瀬、洲ノ崎、南房、鹿島、那珂湊というぐあいに春深まるほど北上し、水深も200mから80m前後と浅くなる。産卵期の最終盤でパラソル級の大型が数乗るのが春である。
 
そんな春の爆乗りフィールドのひとつ南房総が今回の舞台。お世話になった乙浜港「しまや丸」は創業30年、イカ乗合を始めて30年。2代目船長の島野一男さんの温厚な人柄を慕って各地からイカフリークが訪れる。しまや丸のサオ頭常連、昭島市在住の荒木明彦さんもそのひとり。肩幅が広くガッチリした体型の荒木さんは二男の龍王くん(13歳)を連れて乗船した。龍王くんは春休み。こうして休みが合うと親子で釣行することも多いそうだが、龍王くんは船で寝るのが大好き。釣りをせず寝にやってくるというから面白い。
 
「南房のイカ船はのんびりしているのが好きですね。今は乙浜ばかりですが神奈川県の長井が最初です。ひと頃は駿河湾の石花海にハマって焼津港の小林丸に熱心に通いました。しまや丸の船長はイカがダメな時にオニカサゴをやらせてくれたり、気立てがとてもいいんですよ」
 
そう話す荒木さんは1.65mのヤリイカザオに電動リールはシマノ「ビーストマスター3000」。6本ヅノのブランコ仕掛けを接続した。ツノ数が少ないことを質問すると「南房のヤリイカはどん底で乗ることがほとんどです。仕掛けが短いほうが手返しも速いんです」と答える。投入器にはサバに備えて直結仕掛けも入っている。潮の速い南房ではオモリ150号を使用する。
 

荒木さんのこだわり

ブランコ仕掛けの配色パターン。ヤリイカねらいでは青・ケイムラの淡色系のツノをメインに使用。下から4つ目にはスッテを混ぜる。ツノ数は最初は6本、後半は10本に換えて広く探った

バラシ防止のダブルカンナも荒木さんのこだわりだ

「サバがうるさい時は直結を使いたい状況が多々あります。でも今日はウネリが高いですからね。直結仕掛けをさばくのは難しいでしょうね」
 
直結仕掛けはツノとツノを幹イトで直結する。枝スの出たブランコのように遊びがないためテンションを少しでも緩めるとイカが外れてしまう。特にヤリイカの触腕は短くスルメのようなパワーもない。バラシの多いイカである。そこでダブルカンナを使っているのも荒木さんの特徴といえる。ダブルカンナといえば第3回で取り上げた石花海のヤリイカ釣りで主に用いられ、荒海の大型ヤリイカに対応したツノといえる。
 
「私は長いこと石花海でイカ釣りを学びました。南房も石花海と同じく波が大きい。ダブルカンナのほうがバラシが少ないと感じています」
 
前日は等圧線の狭まった大荒れの天気で乙浜港に押し寄せる波も高い。なんとか出船できるような海況だ。沖に出ると波が壁のように立ち上がり「ここはベーリング海か?」って言うぐらいのシケ模様。こんな日は仕掛けが安定せず乗りも分かりにくく取り込みも難しい。前回もそうだったが、どうもこの連載で出船する日は海が悪い。

松田竜也の爆乗り注目ポイント

私(松田)の愛用アイテム

ロッドはシマノ「ベイゲームX YARIIKA175」。8:2調子で操作性とパワーのベストバランスを追及したオールラウンドタイプ。直結~ブランコ仕掛けまで幅広く対応する

クンという穂先の変化をとらえると、乗った!

ロッドスタンドは「ブイホルダー」。万力とは別にあるV字状のスタンドが船べりに密着して安定する。スルメイカの多点掛けなど、高負荷のかかる状況下もロッドがグラつかない。収納時はV字の足をたためてコンパクトに収納でき、ホルダー部分を起こすと首を振る

リールはシマノ「ビーストマスター3000XS」。探見丸搭載船で使用すると水深が表示される。これがすこぶる便利である

スルメイカは乗るも……

南房のイカ釣りではサバが税金というくらいに立ちはだかる

着底直後からじわじわと聞き上げ、乗りに集中

航行10分。しまや丸が目指すのは乙浜沖170~200mライン。4月に入れば100~120mと水深は浅くなる。唸りを上げ、風に向かって船が旋回。合図と同時にオモリを投げると落下途中にガツガツとひったくるサバのアタリがすさまじい。朝のうちほどサバの活性は高いのだ。1投目からイカの乗りを察知したのは小菅義弘さんと池田暁彦さん。当連載第1回で長井光三丸さんの取材のおり同船した名手。ふたりともスリリングな直結仕掛けが大好きで、しまや丸も頻繁に利用する船宿だ。海面を割り、口から水鉄砲を勢いよく吹き出して上がってきたのはスルメイカ。
 
しばらくすると荒木さんのサオもしなってスルメイカが取り込まれた。しかしこの後はサバの猛攻が続き、スルメイカがポツポツ乗るも船中各所でオマツリが多発した。私も荒木さんも直結仕掛けに換えるがウネリで取り込みに難儀する。
 
日が高くなるほどウネリがおさまる天気予報だが海況は一向に好転しない。しかも底潮が速く上潮と底潮とで流れの異なる2枚潮だ。水深は200m。だがミチイトは260m以上出ても全く着底を感じられない。イトを出してもまるで底なし沼のようだ。おそらくミチイトが水中でS字を描くような格好で複雑にフケている。南房エリアでイカ釣りをするとよく思うが相模湾や沖ノ瀬に比べ「潮も波も海のパワーが違う」ということ。黒潮が近付いた時の潮のかっ飛び方は驚くほど。これが面白くもあり難しくもある。

クライマックスで盛り上がる

船中最初のヤリイカが私にきた。にわかに船内が活気付く

船が大きく上下するなか繊細なヤリイカの乗りを察知した

沖上がりは12時半。これ以上ないというくらいのタフコンディションのまま11時を回る。ヤリイカは朝から1日乗り続けることもあるが、沖上がり間際に連発することも多い。いつしかサバのアタリが少なくなった。荒木さんも私もブランコ仕掛けに戻す。荒木さんのツノの配色はケイムラ、ブルーなどの淡色系がメイン。「赤系や黄色系の濃い色はスルメが抱きやすいんですよ」と言う。
 
相変わらずの2枚潮で水深200mラインは仕掛けが落ちない。白浜沖170mダチに船を走らせると周囲にもイカ船がいる。着底から1シャクリ、再び落として2度目のシャクリで穂先がグッと押さえ込まれる。すかさず合わせて低速巻き。追い乗せを誘う。ズン、ズンと重みが加わり、レバーを前に倒して巻き上げ速度を速める。スルメのようなパワフルな重み。ヤリイカであれば何点か付いている。慎重に取り込むと、ヤリイカである。しかも1パイ、2ハイ……、4ハイの多点掛けに一安心。この流しで大ドモのお客さんにもヤリイカが付く。そして荒木さんにも待望のアタリ。船内に取り込むと胴長40cmはあろう良型だ。クライマックス、一気に盛り上がる。
 
「集中してよ! 最初が勝負」
 
と流し返すたびに船長が檄を飛ばす。荒木さんも私も最後の流しで乗せることができた。
 

ようやくヤリイカの時合が到来。ブランコ仕掛けのスッテをがっちりと抱いていた

良型の2点掛けに荒木さんの二男、龍王くんも大喜び

この日は連載第1回に登場したエキスパート、小菅さんと池田さんコンビも同船。直結仕掛けでスルメイカをコンスタントに釣りあげる

 
 
南房総の春はパラソル級のヤリイカがねらえる好期。
			「しまや丸」の常連・荒木明彦さんは、
			「南房のヤリイカはどん底で乗ることが多い」といい、
			手返しを重視して仕掛けの全長が短い6本ヅノの仕掛けを愛用する。
			また、パラソル級に対応してバラシの少ないダブルカンナのツノを
			ブランコで使うのも荒木さんのこだわり。
			取材当日は2枚潮かつウネリが高いあいにくのコンディションだったが、
			貴重なチャンスをものにすることができた。
南房総の春はパラソル級のヤリイカがねらえる好期。
			「しまや丸」の常連・荒木明彦さんは、
			「南房のヤリイカはどん底で乗ることが多い」といい、
			手返しを重視して仕掛けの全長が短い6本ヅノの仕掛けを愛用する。
			また、パラソル級に対応してバラシの少ないダブルカンナのツノを
			ブランコで使うのも荒木さんのこだわり。
			取材当日は2枚潮かつウネリが高いあいにくのコンディションだったが、
			貴重なチャンスをものにすることができた。