チーム沖イカ

釣行データ

日時:2016年12月13日 4時30分出船・13時沖上がり
エリア:静岡県石花海
天候:曇り
潮回り:大潮(干潮10時40分、満潮5時12分)
水深:160m前後
船宿:吉田丸

GUEST

吉田澄夫(よしだ・すみお )

静岡県沼津市の船宿「吉田丸」の船長。石花海のイカを熟知し、釣り客ひとりひとりへの配慮もきめ細かい。船長が出船前に行なうレクチャーは必ず聞いておこう。

松田竜也の爆乗り注目ポイント

「ヤリイカはシャクって乗せる釣りではない」

駿河トラフの豊穣エリア

身が厚く、パラソルサイズなのにシャキッとした胴が石花海のヤリイカの特徴

イカ船団は豊穣の海の証

「吉田丸」は沼津市西浦古宇にある船宿である。近年、伊豆のアクセスのよさは素晴らしく。新東名から伊豆縦貫道に通じる道のおかげでとても行きやすくなった。駿河湾に面した沼津といえば昼のヤリイカはもちろん、夜マルイカ、マダイ、タチウオ、根魚と人気ターゲットが揃う。
 
駿河湾は伊豆半島の石廊崎と御前崎を結ぶ北側の湾を指す。中心は駿河トラフといわれる海溝が南北に走り、最深部は2500mにも達するという。その駿河湾の西域に石花海、相ノ瀬と呼ばれる浅堆の台地がある。北側が石花海(せのうみ)、南側が相ノ瀬で古くから好漁場として知られ大船団ができる。私が10年前に訪れた時は150パイの釣果が出た。60リットルのクーラーボックスにも入らないほどの釣果である。石花海のヤリイカの特徴は、大型にもかかわらず身厚なこと。他の場所のヤリイカといえばパラソル級は、身が薄くて持つとペナッとなるのだが石花海のパラソル級はピンとして肉厚だ。本格的なシーズンは12月以降。この時期になると大型がドスドス乗ってくるのだからイカ釣りファンにはたまらない。
 
古宇港から石花海、相ノ瀬までは約2時間の航程である。船宿集合は午前4時、午前4時30分の出船だ。吉田澄夫船長は面倒見がよいことで知られる。裏を返せば口うるさいと思われがちだが、大人数の釣り人が150m以上の深場に一斉に仕掛けを落とすのだから、ルールを守らなければとんでもないことになる。皆が釣果を上げて喜んでもらうにはどう釣ればよいか、長年の経験で積み上げてきた一家言があるのは当然のこと。このため当船宿では、ポイントに向かう前に釣りのレクチャーをしてくれる。投入機の使い方に自信がない人や初心者、駿河湾のヤリイカ釣りが初めての人はレクチャーを受けることをオススメしたい。ちなみに乗船して最初のルールはクーラーボックスの位置。氷を入れたら船の前方に置くこと。釣り座を広くするため足もとにクーラーボックスがあると邪魔になって釣りに専念できないという。
 
さて、ポイントに着くまでの2時間は暖かい船内で横になって寝ることにしよう。

ダブルカンナでがっちり乗せる

駿河湾のヤリイカ仕掛けは、ブランコ方式のダブルカンナが主流。ツノのサイズは11cm。色の配列は薄いブルー、ピンク、濃いブルー、ケイムラ、浮きスッテ、薄いブルー、ピンク、濃いブルーといったぐあい

指定のオモリは120号

6時30分、ポイントである石花海と相ノ瀬の間に到着。船長によればこの日はシーズンに何日もないベタナギという。釣りスタートは午前7時。30分という余裕の時間で釣りの準備を整える。指定のオモリは120号。仕掛けはブランコの8本ツノで、ツノは11cmのダブルカンナ。駿河湾のヤリイカはダブルカンナのツノでブランコ仕掛けが主流。
 
「ブランコを使う理由はオマツリ防止のため必ず投入器を使って投入してほしいからです」
 
と吉田船長。ダブルカンナの理由はヤリイカが大型であること。またシケることの多い石花海は船が大きく揺れるためバレやすいためである。
 
私の仕掛けは5番目に紅白の浮きスッテを1本混ぜる。浮きスッテはツノとは異なるアクションで動き、乗りの渋い時に効果的。しかし、面白いもので全部のツノを浮きスッテにしても意味がない。1アクセントで違う動きをするから効果が得られる。幹イトは6号、ツノの間隔は1.5mで最後のツノからオモリまでは1.8m。枝スは4号を使用。
 
午前7時、どの船も一斉に釣りを開始。合図と同時にオモリを10mほど前方に投げると投入機からツノが次々に飛び出していく。着水と同時に電動リールがゆっくり逆回転を始め、それから高速で仕掛けが落下。水深は160m。
 
この日の朝一番「イカは底にいるエビの群れを追っている」と船長。タナは底から3、4m。1投目からアタリを察知。巻き上げれば一番下のツノに1パイ。そして最初の1時間は下のツノばかりヤリイカが付き、2流し目からは上のツノにも乗るようになる。パラソル級の大型、石花海らしい身厚なヤリイカが乱舞し始めた。
 

松田竜也の爆乗り注目ポイント

 
 ロッドはシマノ「ベイゲームX YARIIKA175」。8:2調子で操作性とパワーのベストバランスを追及したオールラウンドタイプ。直結~ブランコ仕掛けまで幅広く対応する。リールは「ビーストマスター3000XS」。パワー重視のXPとスピード重視のXSがあるが、手返しの釣りといわれるヤリイカ釣りではスピード重視の3000XSが適している。

「ベイゲームX YARIIKA175」の穂先はイカの反応を鋭敏に伝えてくれる

「ビーストマスター3000XS」の巻き上げはパワフル。「ベイゲームX YARIIKA175」と組み合わせれば、肩がこりそうな重みは感じない

この日はバッテリー「電力丸」14.8V10Aのパワーバッテリーも持参した。水深100m以上の深場から何度も仕掛けを上げ下げするヤリイカ釣りで非常に威力を発揮する。インジケーターの点灯で電力の減りがひと目で分かるのも便利

船長のイカ釣りの核心

一投目。吉田丸の投入ルールは10mほど前方へ

ブランコ仕掛けは回収時に枝スと幹イトが絡まりやすい。必ずこの縒りを取ってから投入器に入れていくこと

「イカは底のほうにしかいないから、オモリが着底したらシャクんないでよ!」
 
とアナウンス。オモリが着底すると仕掛けが一瞬フケる。そして立ち上がる時にアタリは出やすい。シャクってしまうと抱きそうになったイカを振り落としてしまうのだ。
 
「ヤリイカはシャクって乗せる釣りではない」と船長。フケを作るのに一役買うのが中オモリ。私は中オモリではなくヨリトリリングを付けているが、この重さでも充分に仕掛けはたるんでくれる。なお、吉田丸は仕掛けを海底に這わすのはオマツリ防止のため禁止している。
 
1回の流しは約1時間。このため7~10時まではあっという間に過ぎる。これだけ乗るイカ釣りは最近とんとご無沙汰で、ほかではなかなか味わえない。
 
着底からゆっくりとサオを持ち上げ、オモリを底から切った瞬間、シマノ「ベイゲームX YARIIKA175」の穂先がフッと揺れる。追い乗りを期待してゆっくりと巻き上げ、そのまま乗りの状況に合わせて巻きのスピードを上げていく。リールが止まったら、横にタックルを置き、仕掛けを手繰る。まず中オモリやリングを船内に入れ、上のツノを手繰ったら、ヨレを取ってから投入機に入れる。これを次々に行ない、ヤリイカが乗ったツノは船の外で利き手で持ち、もう一方の手でイカを掴んで外し船内に放つ。この時バケツに入れなくてもよい。重要なことはツノを手前マツリさせることなく、確実に投入機に入れること。幹イトが船の縁に当たると揺れた時にテンションが抜け、取り込んでいないヤリイカが外れてしまうことがある。船外で幹イトを吊るしていればダブルカンナに掛かったヤリイカはなかなか外れない。順にツノを回収しながら投入機に入れ、ヤリイカを回収すれば、すぐにオモリを投げ入れられる。
 
「たとえば水深が200mのポイントだったら、仕掛けの落下、イカの乗せ、巻き上げ回収、なんだかんだ10分ちょっと掛かる。そうなると、1回、1時間の流しで6回、7時から13時までの6時間の6回流しで36回しか投入できない計算になる。そんな回数の投入で、仕掛けのトラブルで時間を取られると釣りをしている時間なんかなくなるだろう」
 
と船長。どんな釣りでも手返しのよしあしが釣果に響く。ことヤリイカ釣りに関しては釣果アップのキモは手返しに集約されると断言する。
 
石花海は潮の関係か11時から13時の間に爆発的に乗ることが多い。この日もまさにそうで、11時を回ると爆乗りタイム。船団ができ漁師船も寄りかたまって熱狂に包まれた。私の釣果はパラソル級の大型ヤリイカを含め57ハイの釣果。この日船のトップは他の人とのオマツリがなかった人が81パイ。オマツリをしている分の差が出る。それでも平均50パイという石花海の圧倒的なヤリイカの数は、いつも驚かされる。まだヤリイカシーズンに入ったばかり、この機会にヤリイカ釣りの根本に触れてみてはいかがだろうか。  

ずっしりと重い釣果。51パイ。この日は船中平均50パイ、トップは81パイと好調。さらによい日は100パイ以上も望める

 
 
石花海は身厚なヤリイカの大釣りができる好エリア。
				だが潮の流れは速く冬場のウネリ、波立ちは半端ではない。
				主流であるダブルカンナのブランコ仕掛けは揺れる船でバラシ防止を考えてのこと。
				この日のポイントは水深160m。底から3~4mがタナだった。
				アタリはオモリが着底し、仕掛けがフケる瞬間に出やすい。
				シャクらず乗せるという船長のアドバイスはとても理に適っている。
				そしてなによりオマツリ軽減の配慮が釣果の要。
				トラブルに時間を取られないことが釣果に直結するのだ。
石花海は身厚なヤリイカの大釣りができる好エリア。
				だが潮の流れは速く冬場のウネリ、波立ちは半端ではない。
				主流であるダブルカンナのブランコ仕掛けは揺れる船でバラシ防止を考えてのこと。
				この日のポイントは水深160m。底から3~4mがタナだった。
				アタリはオモリが着底し、仕掛けがフケる瞬間に出やすい。
				シャクらず乗せるという船長のアドバイスはとても理に適っている。
				そしてなによりオマツリ軽減の配慮が釣果の要。
				トラブルに時間を取られないことが釣果に直結するのだ。