2020.04.10

尺上以外は眼中になし!超遠投メバル釣り
[ 山本 修 ]

Vol.1 神奈川県・御幸ノ浜釣行記

サーフからメバル狙い!?

「そろそろデカイのが釣れ始める頃です。先日、ちょっと雰囲気がよかったのでやってみたら、いきなり34cmが釣れましたよ」
電話の向こうから弾んだ声が聞こえたのは、2月に入って間もない頃だった。電話の主は神奈川県茅ヶ崎市在住の山本修さん。「シマノジャパンカップ投(キス)」では通算3勝の実力者である。
しかし、この“34cm”とはシロギスのことではない。なんとこれはメバルなのである。しかも釣り場はサーフ。投げ釣り師が砂浜からメバルを狙う。これだけを聞けば、何のことだかさっぱりわからない人もいるだろう。

釣りのカテゴリー的には、紛れもなくウキ釣りである。しかし、山本さんが使用するタックルは、投げ竿にロングノーズの遠投スピニング。そう、シロギス釣りのタックルをそのまま使うのである。
ウキはいわゆる「サーフライト」と呼ばれる大型電気ウキ。単三の乾電池が2つ入る重たいものである。

1月下旬、試しに竿を出してみたところでいきなりヒットした34cmの巨メバル。遠方のポイントにはこんな大物が居着いている。

「これを砂浜から大遠投するんです。僕のホームグラウンドである相模湾西部の砂浜には、沖にテトラ堤がいくつも入っている区間があるんです。ここに大きいメバルが居着いているんですよ」
一般的なウキフカセタックルではまず攻められない距離である。遠方のポイントは魚が温存されているうえにスレていない。それこそ良い日には尺上が連発するという。軟竿を用いた繊細なメバル釣りに染まった頭では、その状況を即座に理解することができない。まったく異次元の釣りのように思えてしまうのだ。
とりもあえず、山本さんの釣りに同行してみることにした。

投げタックルで沖のポイントを狙い撃ち

山本さんと訪れたのは、小田原市の御幸ノ浜。相模湾を縁取る西湘海岸の西端、早川港にほど近い位置にある。港から先はゴロタ浜が中心となる。御幸ノ浜は一応砂浜ではあるが、拳大の石がかなり混じる「半ゴロタ浜」ともいえる海岸だ。
沖には200〜300mほどのテトラ堤が、浜と平行に連なっている。テトラが入れられた当初は海面から出ていたが、現在はほぼすべてが水没している。ここに大型のメバルが居着いているのだ。

西湘海岸の西端に位置する御幸ノ浜。拳大の石が混じる半ゴロタ浜ともいえるサーフである。

テトラ堤までの距離は70〜80mほど。投げ釣りでいえば3色前後である。
「投げ竿か遠投タイプの磯竿でないと届かない距離ですよね。ウキも3号前後の自重のあるものが必要になります。基本的にオモリは使いませんが、これでもメバルが喰うと豪快に消し込みますからね」
メバル釣りは夜釣りが基本。アジは薄暗くなり始めたマヅメでも喰ってくるが、メバルは完全に暗くなってからが時合とのことで、釣り場には夕方からのんびり入ることが多いそうだ。

タックルはシロギス釣りのものをそのまま流用可能。投竿と遠投リール、極細PEラインで80m前後まで仕掛けを遠投する。

山本さんの道具立ては、竿が「サーフランダー405EX」、リールが「サーフリーダーCI4+ SD35標準仕様」のセット。メインラインPE0.8号の先に、力糸としてPE3号を10mほど結ぶ。
力糸の先には、湘南テンビンスタイルの自作テンビンが付き、通常の投げ釣りならばオモリをセットするスナップに大型の電気ウキが付く。ハリスはフロロカーボン0.8号を矢引き(約1m)取る。ハリはメバルバリの10号前後がメインだ。
遊動部分は取らない。地元で「カッツケ」と呼ぶ固定仕掛けで、テンビンのアーム長+ハリスがウキ下となる。エサは太めのアオイソメ。これをハリに1匹掛けする。
「沈みテトラの頭にエサを流すイメージですね。ウキ下を変えたいときはハリスの長さを変えます。この仕掛けでもメバル以外にカサゴも喰ってきますよ」

箱根連山の向こうに夕陽が隠れた。この釣行は撮影も兼ねているため、まだ明るいうちからの釣り開始である。

ウキは昔ながらの乾電池式電気ウキを使う。メバルが喰うと、この大型ウキが一気に消し込まれるという。

エサは極太のアオイソメを1匹付けで使う。クネクネとした動きがメバルのスイッチを入れる。

潮が動かず大苦戦

何度か仕掛けを打ち返している間に日が暮れ、メバル釣りのベストタイムに突入した。狙いは3色付近の沈みテトラ付近。フルキャストした電気ウキの灯りが、白い光の帯となって漆黒の闇へ吸い込まれていく。

夕暮れの海に向かって第一投。沖にうっすら黒く見える部分が海面下に沈んだテトラ堤付近まで遠投する。

最初のアタリは暗くなってすぐに訪れた。ウキが一気に消し込まれ、ラインがピンと張り詰める。竿に乗った重みを確かめた山本さんが笑った。
「大きそうだよ」
波の動きを見ながら慎重に寄せてくる。しかし、ポイントから半分ほど巻き上げたところで竿先が跳ね上がってしまった。ハリ外れである。無念の表情を浮かべる山本さんだが、向こう合わせの釣りだけにハリ外れは致し方ない。

ラインが波に叩かれないよう竿を立て気味にし、仕掛けを流していく。多くの場合、沖の潮は左右のいずれかに動くので、潮流に乗せた仕掛けに合わせて足場を随時移動する。

気を取り直して釣りを再開する。しかしこの後は、パッタリとアタリが止まってしまった。
「どうも潮の動きが悪いんですよ。これではちょっと厳しいなぁ」

メバルは基本的に、テトラや海藻帯などの棲処からあまり動かない。頭を上に向けて定位し、頭上にエサが流れてくるとスッと浮上して捕食する。ゆったりであっても潮が動いていればポイントを広く探れるが、潮が動かずエサが一点に止まってしまっては具合が悪い。潮が動かなくても風を利用して仕掛けを流してもよいとのことだが、この日は仕掛けを押し流すほどの風もなかった。

潮の動きが悪く、メバルの活性が低い。ハリスを長めに取ってウキ下を深くするもアタリはなし。

2月上旬はシーズン初期。まだメバルの活性にバラツキがあるようだ。干潮の潮変わりを挟み、上げ5分前後まで粘ってみたものの、小潮回りとあってその後も潮は動かず、結局この日はノーフィッシュのまま竿を仕舞うこととなった。
もちろん、このまま引き下がるわけにはいかない。リベンジマッチは翌週。満月の大潮回りとあって期待できそうだ。

再々チャレンジで尺上を御用!

 翌週は波が穏やかで、まさにメバル日和であった。相模湾では、東へ流れる潮を「カシマ潮」、西へ流れる潮を「ワ潮」と呼ぶ。この日の潮はワ潮。浜と平行に伊豆半島用面へゆったりと流れていた。条件としては悪くない。

再チャレンジの日は大潮の月夜。ナギにも恵まれ、いやおうなしに期待が高まる。山本さんのモチベーションもマックスだ。

21時を過ぎた頃に待望のメバルのアタリ。波の動きに合わせて慎重に寄せてくる。

山本さんは竿を立てて構え、ラインが波に叩かれないよう注意しながら、潮流に合わせて波打ち際を歩いていく。30〜40mほど移動して仕掛けがポイントから外れると、仕掛けを回収して元の立ち位置から再度投入する。日没からしばらくはフグがイタズラしにくる程度だったが、午後9時を回ったあたりで海の様子が変わってきた。

20cm少々の本命。これでも十分に良型だが、サーフの投げメバル釣りでは物足りないサイズとのこと。

先ほどまでのフグとは明らかに違うアタリで、待望のメバルが喰ってきたのである。型は20cm少々と控え目ではあるが、久々に本命の顔を拝むことができた。
「まだまだ大きいのが出るんですけどね。なんとか魚が出てホッとしました」

その後はカサゴも喰ってきた。ひとたび活性が高まれば、根魚も浅ダナのエサへ果敢にアタックしてくる。

ややあって再びアタリ。波打ち際に顔を出したのはカサゴであった。ウキ下は1ヒロ程度で、付けエサは沈みテトラのやや上を流れている。これにカサゴが飛びついてくるのである。ひとたび活性が高まれば、メバルもカサゴもエサを見つけたら急浮上してアタックし、3号負荷のデカウキをズッポリ消し込んでいく。この豪快さも投げメバル釣りの魅力といえるだろう。
この後も23時近くまで竿を出したが、メバルからの魚信はなかった。
「サーフらしい大型をぜひとも釣り上げたかった。丸々とした尺上を狙って、これからもガンガン浜に通いますよ(笑)」

後日、山本さんから弾んだ文面のメールが届いた。添付されていた写真に写っていたのは、浜に横たわる見事な尺上メバル。西湘のサーフにもようやく春が訪れたようである。

さらなる大物を求めて釣行した山本さんから届いた画像には、尺上の大メバルが写っていた。このサイズが高確率で釣れるのだ。サーフの投げメバル恐るべし!

vol.2に続く